東京・京都で初アルバム記念ライブ
「自分のフィルターを通して、自分なりの表現で歌っていきたい」。在日韓国人3世歌手のLIMさん(37)は、30日に発売される1st ミニアルバム「Roots」(発売・untlim records」のリリースを記念するライブを29日と30日、東京と京都の2会場で開く。
収録した5曲には、在日として生まれて日々感じたことや、さまざまな体験を通じた自身の思いが込められている。
幼いころ、今は亡きイモ(母親の妹)と聞いた「Take Me Home Country Roads」、母親への感謝の気持ちを込めた「Get Into My Life」、在日韓国人として、自らの魂を揺さぶられるという「アリラン」「セタリョン(鳥の唄)」のメドレーなど、心を込めて英語と韓国語で歌いあげた。
京都出身。中学校は京都韓国学校(現・京都国際学園)に通った。だが、韓国と日本のどちらにも、自分の居場所を見つけられずに苦しんだ。「思春期には、一体、自分は何者か、と本気で悩んだ」
16歳でカナダに留学。「日本を離れたことによって、すごく心が楽になった。もちろん、いじめや差別はあったけど僕は平気だった。日本での在日韓国人という特殊な見られ方ではなく、韓国人として扱われていた」
19歳から自分を表現できる場所を求めて、モデルと役者の仕事に就く。だが、心を満たすことはできなかった。
歌手活動を始めたのは30歳から。「僕の自己表現は歌」だときっぱりいう。自ら歌うのは、「素敵な曲が多い」と話す70、80年代のポップスを中心に、多彩なジャンルのカバーだ。「曲にはそれぞれにまつわる思い出や、エピソードがあるからこそ歌う。僕はそれらを背負って歌っているから、歌詞の意味以上のものが自分の中にある」。その思いを背負い込みすぎて、自分がつぶれそうになることもあるが、「それも引っくるめて、覚悟を決めてやっている」。
表現するということは「誰かを笑顔にしてあげたり、涙を流させてあげたり、感動してもらったり、何かをお届けすること」。だから、「無責任には歌わない、無責任に表現しない」との決意を胸に刻み込んだ。
自らが選択した道に後悔はない。昨年初めて、韓国で「イマジン」を英語で歌った。ライブを終えた後、観客が話しかけてくれた。「行って良かった」。心からそう思った。
今「在日の僕自身ができること」を模索中だ。今年、民団京都本部主催の光復節記念式典や、「10月マダン」で歌う機会を得た。今後、21歳から拠点を移した東京でも、民団の催しや在日高齢者が入所する老人施設で歌うなどの活動をしていきたいと意欲的だ。
初CDの発売で、新たなスタート地点に立った。「何年も前から歌ってきたけど、37歳でデビューです。世間的には遅いでしょうが、自分の取り組むべきものが見えた今が、CDを出す僕のタイミングだった」
たとえ、聴衆が一人であっても「命がけでと思うくらい、100%以上の力で向き合いたい」。LIMさんの歌には、心に温もりを与えてくれる不思議な力がある。
ライブの日程
東京=29日20時/(渋谷区)
CASA ASTEION
(℡03・3476・1600)。
京都=30日15時半/(中京区)
THE QUDETA京都(℡075・253・0909)。各公演とも7000円(食事、飲み物、CD含む)。当日、会場で精算。
1st ミニアルバム「Roots」は価格1500円。購入はHPのサイト上から。公式HP
http://lim884.com/
(2010.10.27 民団新聞)