掲載日 : [2016-02-10] 照会数 : 11114
「なぜ、廃止なのか」都立小山台高校定時制…外国籍生徒に衝撃
[ 李忠成さん(右)を講師にふれあいスクール ]
「共に生きる」、韓国語授業も
多文化共生教育に取り組み、15の国にものぼる国籍の生徒が通うユニークな東京都立小山台高校定時制(大田原弘幸校長、品川区)が閉校(閉課程)になりそうだ。元教員や市民講師、卒業生、地域の支援者などの関係者などからは、「なぜ廃止なのか」と驚きと怒りの声があがっている。
小山台高校は東急武蔵小山駅から徒歩で数分の至近距離。都内の交通便利な場所にあることから、日本語支援の必要な脱北者の子弟らも安心して通っていた。
多文化・多国籍の生徒が通ってくることから教育課程もユニークだ。教科には「市民科」や「多文化理解」を置き、「世界と出会う」、「社会参加」、「共に生きる」などの新しい科目も開講してきた。
08年度からは異文化理解へ必修選択科目(3、4学年)として「初めての韓国語」と「初めての中国語」が加わった。東京都で韓国語・朝鮮語の授業がある夜間定時制高校は現在、小山台を含めて4校だけ。
学校行事でも地域に開かれた「ふれあいスクール」という名称で、プロサッカー選手の李忠成さんや声楽家の田月仙さんらを講演に招いたり、サムルノリ体験講座も開講するなど、国際交流にも取り組んできた。11、12年度に東京都教育委員会人権尊重教育推進校、14年度は文部科学省人権教育研究指定校にもなった。
東京都教育委員会が15年度中に策定を予定している都立高校改革案によれば、閉校を予定している定時制高校は小山台のほか雪谷(大田区)、江北(足立区)、立川(立川市)の4校。昨年11月に提案し、12月25日までパブリックコメントを募った。廃校に反対の意見も多く寄せられたが、早ければ今月中にも東京都教育委員会で正式に廃校が決定になりそうだ。
都立夜間定時制高校は10年前まで100校以上あったが、現在は39校まで減っている。東京都教育庁都立学校教育部高校改革推進の担当者は今回の廃校の理由について、「夜間定時制高校に在籍する勤労青少年は相対的に少なくなってきていて、そのニーズも全日制以上に多様化している」と話す。このような多様化した生徒の実態に即した教育を展開するために、午前部・午後部・夜間部の3部制昼夜間定時制独立校の設置を中心とする定時制教育の改革が必要だという。
しかし、小山台で数々の教育改革を推進してきた角田仁さん(都立高校教員)によれば、2次募集を含め、夜間定時制高校の希望者は決して少なくない。立川高校などは応募が募集を超え、不合格者が出た年もあるという。角田さんは、文部科学省や都の人権教育推進指定校をなぜ廃校にするのかと憤りを隠さない。
(2016.2.10 民団新聞)