リオ五輪(8月5〜22日)に出場する韓国代表選手団(鄭夢奎団長)の結団式が19日、ソウルのオリンピック公園内オリンピックホールで開かれた。鄭団長以下、300人余りの選手・役員が一堂に集まる中、黄教安首相、金鍾徳文化体育観光部長官ら政府要人とスポーツ関連機関役員ら1000人がつめかけ、リオ五輪での健闘を誓った。
韓国選手団は、バスケットボール、テニス、ラグビー7人制、トライアスロンを除く24競技に出場。ロンドン大会と同じく、金メダル10個以上、総合10位以内の「10・10」を目標に掲げている。
メダルが有力視されるのはアーチェリー、柔道、テコンド、フェンシング、ゴルフ、射撃、レスリング、バドミントンの8種目。在日同胞としては88ソウル大会以来18年ぶりの出場となった柔道の安昌林に大きな期待がかかる。
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射撃
秦鍾午、未到3連覇へ ロンドンで金メダル3個、銀メダル2個と過去最高の成績を残した射撃の目標はずばり金2銀2銅1。
08年北京に続き12年ロンドンと連覇した射撃の名手、秦鍾午(36)。五輪初出場の04年アテネ大会・50メートルピストルで銀メダルを手にして以来、3大会連続でメダルを獲得している。リオでは4大会連続メダルをめざす。金メダルなら射撃では前人未到の3連覇となる。
米データ専門企業のグレースノートはこのほど、リオ五輪で韓国は金メダル10個を獲得すると予想、そのうち2個は秦の活躍によるとしている。
秦は「3連覇に対するプレッシャーはかなりあるが、自分自身と正面から闘う」と語った。
一方、ロンドン大会、弱冠二十歳で金メダルを獲得した女子の金牆美(ピストル2メートルる)も連覇をめざす。「金メダルに再挑戦するという心構えで臨みたい」とし、「直近100日間の練習は地獄のようにきついが、必ず結果を出す」と語った。
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前人未到の3連覇をめざす秦鍾午 |
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サッカー
サッカーも銅以上射程に ロンドン大会で韓国初のメダル(銅)を獲得したサッカー。それ以上の成績が期待されている。
黄フィチャン、権昶勲、柳承佑、金東俊ら主力に加勢したワイルドカード(23歳以上)の孫興民(24、トッテナム)、張賢秀(25、広州富力)、石鉉俊(24、ポルト)の働きぶりが注目される。DF宋株熏の骨折により、急きょ金眠泰(MF・ベガルタ仙台)を招集した。
チームはすでに現地入りし最終調整中で開幕日の5日にフィジーと初戦。8日ドイツ、11日メキシコと対戦する。
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サッカー代表のワイルドカード3選手。左から孫興民、石鉉俊、張賢秀 |
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新体操
韓国初のメダルか 「国民の妹」「マットの妖精」の異名を持つ新体操の孫延在。6歳から新体操を始めた孫は、初の五輪出場となった12年ロンドン大会で韓国人選手初の決勝進出を果たし、個人総合5位と健闘した。以来、国際大会で上位入賞を続け、2年前の仁川アジア大会では堂々の金メダルを獲得した。
今シーズンは個人総合の自己ベストを何度も更新、6月に行われたワールドカップスペイン大会でも個人総合で74・650点をマークし、自己ベストを再び更新した。
強敵は世界ランキング上位3人を占めているロシア勢。世界ランキング5位の孫は完璧な演技を発揮すれば、韓国新体操初のメダル獲得が見える。
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「マットの妖精」の異名をもつ孫延在 |
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柔道
最低2個の金メダル 前回2個の金メダルを獲得した男子柔道は今大会も期待がかかる。目標は最低2個の金。韓国選手3人が世界ランキング1位だからだ。
そのひとりが在日同胞3世の安昌林(73キロ級)。在日同胞としてのメダル獲得は過去、金義泰が銅(64年東京)、呉勝立が銀(72年ミュンヘン)を獲得しているが金メダルはない。安はこの2年間、各種国際大会で王者に輝き、世界ランキングも1位を誇っており、在日同胞初の「快挙」も夢ではない。
22日、「メダルに対するプレッシャーはない。ひたすら自分が世界一という呪文を唱えている」と強調、「必ず金メダルを首にかけて戻ってくる」と力強いコメントを残しブラジルに出発した。安の試合は8日(現地時間)だ。
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在日選手初の金メダルを狙う73キロ級の安昌林(写真・連合ニュース) |
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バレーボール
金軟景軸にメダル狙う 女子バレーボールは76年のモントリオール(銅メダル)以来40年ぶりのメダル獲得を狙っている。韓国の予選リーグは地元ブラジル、ロシア、日本、アルゼンチン、カメルーンのA組。
「女子バレー界のメッシ」と呼ばれる主将の金軟景を絶対の柱にするものの、応用力を活かしたチームコンビネーションが必須だ。ロンドン大会で金軟景は最優秀選手賞と得点王に輝いたものの、「1人だけのチーム」になり成績は4位にとどまり、メダル獲得に失敗した。
フラットサーブを武器にした金姫真、器用な攻撃ができる朴チョンアとのトリオで相手を乱すことができればメダルが見えてきそう。
金軟景は「これが最後のオリンピックだと思っており、このメンバーで良い結果を残したい」とし、初戦の日本に対し「精密分析しながら対策を考えている。白星スタートでムードに乗れば決勝まで進める」と自信をのぞかせている。
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韓国女子バレーボールのエース金軟景 |
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アーチェリー
12大会連続「金」だ もっとも金メダル確実とされているのが、アーチェリーだ。世界屈指のアーチェリー大国・韓国は72年ミュンヘン大会で正式種目になって以来、金メダルを連続獲得。通算では金19、銀9、銅6個にもなる。
選手層が厚い国内女子アーチェリーの中で、難関を突破したのが、「神の弓」の奇甫倍、「美女弓師」の張恵珍と崔美善。この3人は「洋弓女神」と呼ばれている。
ロンドンで個人と団体で金メダルに輝いたエースの奇甫倍は、「リオが人生最後の五輪だと思う。全てを出し尽くし、愛国歌を歌ってくる」と、連覇への強い意思を表わす。
集中力が勝負のアーチェリーだが、「洋弓女神」たちは生きた蛇を首に巻きつけたまま走ったり、墓地での肝試しなどでメンタル強化を重ねる一方、雑音や野次が飛ぶプロ野球の球場でわざと罵声を浴びながら弓を射る「騒音訓練」も行い本番に備えた。
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アーチェリー大国を背負う左から奇甫倍、張恵珍、崔美善 |
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ゴルフ
ゴルフも有力選手揃い 女子は朴仁妃、金世瑩、梁熙英、田仁智の4人が出場する。いずれも世界ランキング10位以内だ。
世界ランキング15位以内に2人以上の選手がいる国の出場枠は最大4枚。ちなみに韓国人選手はこの中で6人を占めており「銀河系軍団」の異名をもつ。
ランキング最上位、朴(3位)は、左親指のけがで約1カ月間、試合出場を控えていたが、順調に回復し、「五輪出場は長年の夢であり目標」とリオ行きを決心した。
女子ゴルフチームの朴セリ女子監督は、「朴仁妃が出場を決めてとても心強い。他のメンバーにも大きな力になる」とコメントした。
「銀河系軍団」と世界ランク1位で在ニュージーランド同胞、リディア・コとの対戦も見どころだ。
男子は世界ランキングにより安秉勲と金庚泰に出場権が与えられたが、金の辞退で、王ジョンフンが繰り上げ出場。
弱冠二十歳の王は今年5月、韓国選手で初めて欧州ツアー2連勝を果たした期待の星。
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世界ランキング3位の朴仁妃 |
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テコンド
5階級を全制覇も 男女合わせて過去最多となる5枚の五輪出場切符を獲得したテコンドはこの種目全制覇を狙う。
男女4階級ずつ全8階級で争われる五輪では、特定国のメダル独占を防ぐため、国当たり男女2階級ずつ、最大4階級に制限されてきた。そのため正式種目に採択された2000年シドニー大会以来、韓国は毎回4階級だけに出場してきた。しかし、リオ大会からはランキングポイント順で出場権を獲得した選手には出場制限を廃止した。
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水泳
試練乗り越え朴泰桓の挑戦 ドーピング問題で出場が一時危ぶまれた競泳の北京五輪金メダリスト、朴泰桓(27)は4度目となるリオが最後との思いをこめて泳ぐ。
自由型100,200,400,1500�にエントリーする朴は「12年ロンドンの時とは体調が違う」と述べつつも「1カ月ぐらいスピード練習とペース調節に集中した。メーンの200と400で最善を尽くす。自信を持ってやればいい色のメダルがついてくるだろう」と話している。
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フェンシング
金志妍も有力 このほか、バドミントン男子ダブルスの李龍大と柳延星、フェンシングの金志妍と申アラムなども有力だ。
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フェンシングのエース金志妍 |
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<結団式>黄首相が激励
旗手は具本佶選手に 19日の結団式は激励あいさつ、選手と役員紹介、団旗授与、選手インタビューのほか、K‐POPグループによる激励コンサートで華を添えた。
大韓体育会の金正幸会長は「泰陵選手村での訓練などベストコンディションが維持できるよう支援を惜しまない」と選手を激励した。
黄教安首相も「南米初の五輪はわが国を地球の反対側まで広く知らせる良い機会になるだろう」とし、「選手たちの闘魂と国民の声援で世界5位の快挙を成し遂げた感動が忘れられない」「磨きあげた力が発揮できれば、この4年間に流した汗が実を結ぶものと確信している」と応援した。
鄭夢奎団長は「先輩たちが築いてきた誇らしい韓国スポーツの偉業を継承できるよう全力を傾ける」と決意を語った。
選手団は本部役員32人、競技役員95人、選手204人の331人。開会式の旗手はロンドン五輪フェンシング男子サーブル団体金メダルの具本佶が、主将は秦鍾午、女子主将はハンドボールの呉令蘭が務める。
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結団式で必勝を誓う選手団 |
(2016.7.27 民団新聞)