学校法人白頭学院建国幼・小・中・高等学校(高敬弼理事長、李光衡校長。大阪市住吉区遠里小野)が創立70周年を迎えた。新校舎の完成と耐震工事を含めた全館のリニューアルを昨年終え、児童・生徒たちが安心して学習やクラブ活動に取り組める環境も整った。在日韓国人としての誇りを培うとともに、国際化時代に対応する幅広い能力を備え、各方面で活躍できる有為の人材を育てる教育方針は、その貫徹力を増している。
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外国人教員による英語の授業 |
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来たれ!全国から
新校舎完成施設も充実 建国は今、園児・児童・生徒の数を500人にする「プロジェクト500」を推進中だ。2年前まで400人に満たなかったが、新校舎完成後は大幅に増加し、現在では456人(幼稚園49人、小学校147人、中学校99人、高校161人)を数える。K‐POPなど韓流の好影響もあって、日本人の入学希望者も増えた。
なかでも注目されるのは幼稚園児が1・8倍に伸びたことだ。園児たちがケガの心配をしないで元気よく遊べるよう園庭を広くし、緑も多くなった。室内には床暖房が施され、冬でも裸足で走り回れるようにしている。保護者からも好評を得ているのは言うまでもない。
社会(中学)と在日形成史(高校)を教え、学校の広報も担当している金秀子教諭は、「純粋に韓国のことを知りたいという生徒が増えた。教室では韓・日・英の3カ国語が飛び交う。生徒たちは吸収も早く、自然と言葉を身につけている」と話す。タブレットや電子黒板の導入によって授業が分かりやすくなり、生徒たちの学ぶ姿勢が積極的になったとも強調した。
建国は本拠地の関西だけでなく、民族学校のない全国各地の生徒たちを積極的に受け入れたいとしている。高理事長や学校関係者はこのほど、「プロジェクト500」の一環として民団宮城本部を訪れ、建国の教育方針や民族教育の重要性をアピールした。
高理事長は「仙台は東北の同胞多住地区だ。まとまりもいいと聞いている。団長や婦人会会長らも好意的で、思いは伝わったのではないか」とし、説明会では「関西に旅行する時は是非、建国を見学してほしい」とも呼びかけた。説明会は他地域でも開きたいとしている。
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サッカー部もやはり人気だ |
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実力をつけている女子バレー部 |
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部活もレベル高く
伝統芸術・吹奏楽を先頭に 建国はクラブ活動にも力を入れている。伝統芸術部は、全国高等学校総合文化祭に大阪府代表として12年連続出場しており、大阪市中学校総合体育大会ダンスの部で最優秀賞を5年連続受賞している。
また、韓国においては世界サムルノリ大会(07年)で大賞の「大統領賞」を、「2015漆谷世界サムルノリ大会」で最優秀賞の「国会議長賞」を受賞するなどその実力は折り紙付きだ。
今年3月には、伝統芸術部の生徒の成長を描いた映画「いばらきの夏」が大阪アジア映画祭に招待され、大阪市のABCホールで上映された。
女子バレー部は昨年、中学校の大阪府優秀大会で3位、大阪市秋季総合体育大会で3位の成績をおさめ、大阪市中学生新人南地区大会で優勝。また、大阪高校新人大会1次予選(部別大会)で1部優勝した。中高ともに近畿大会に出場する強豪に成長している。
吹奏楽部も大韓民国管楽競演全国大会(15年)で最優秀賞を受賞。大阪府吹奏楽コンクールでは10年連続で優秀賞に輝いた。今年で15回目となる定期演奏会を住吉区民センターで開催し、地域の中学校吹奏楽部との共演を行うなど地域に根差す実力校として一目置かれる存在だ。
そのほか、バスケットボール部やサッカー部、テコンドー部など、心技体を鍛え合う環境のなかで、文武両道の人材育成を日々実践している。
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買い物ゲームを楽しむ幼稚園児たち |
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伝統芸術部は最も活発な活動を続けている |
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過去10年進学先、東大・京大など名門校多数
ソウル大や延世大へも…欧米への留学にも道開く 建国高校の大学進学率は高く、今年からは日本の大学をめざす生徒には、塾講師を招いての特別授業も行われ、いっそうのレベルアップをはかっている。
主な進学先として、日本の国公立では東京大学、京都大学をはじめ神戸、大阪市立、和歌山、三重、大阪教育など。私立では早稲田、慶応、上智、同志社、関西学院、立命館、近畿、龍谷、甲南、天理など。韓国ではソウル、延世、高麗、成均館、梨花女子、漢陽などとなっている。
ほかに、米ニューヨーク州立大やロンドン大といった海外にも進学実績がある。教師たちの一人ひとりに対するきめ細やかな授業が進学率を押し上げている。
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笑顔を見せる左から姜鮮華さん、洪垈揆さん、申知容さん、韓里瑚さん |
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在校生の言葉在日の友だちがたくさんできた
洪垈揆さん(中3・男子・韓国。中1から3年間在籍) 建国に来て何よりうれしいのは、在日の友だちがたくさんできたこと。クラブはサッカー部に入っていて毎日が楽しい。将来は外交官になりたいと思っている。
自分の国のこと学べてよかった
韓里瑚さん(中3・女子・在日。小1から9年間在籍) 建国に来てよかった。自分の国のことを学ぶことができ、日本人や外国人生徒とも仲良くなれた。韓国語も自然と耳に入ってきて、今では本国班で勉強している。
付き合いが深く気配り行き届く
申知容さん(高3・男子・在日。小1から12年間在籍) 建国は生徒数が他校に比べて少ない分、友人としての付き合いが深く、先生も質問にしっかり答えてくれるなど気配りも行き届いている。新校舎になったことで環境も整い、新しい刺激にもなった。
能力別クラスで韓国語みっちり
姜鮮華さん(高3・女子・在日。小1から12年間在籍) 各教室の設備も新しくなり、気分的にも勉強がしやすくなった。また、韓国語のクラスも能力に応じてより細かく分かれていて、とても上達した。将来は留学も考えている。
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ごあいさつ多くの人の協力に深く感謝
金聖大前理事長 創立70周年を迎えることができ、たくさんの人たちの協力にとても感謝している。
思い起こせば、阪神淡路大震災や東日本大震災が起こり、校舎の老朽化や耐震性が深刻な問題になった。子どもたちに安心な学習の場を提供できるよう、5年をかけて昨年、念願の新校舎を完成させた。
今年から園児・児童・生徒数も増えた。また、園児たちの楽しそうな園生活は、保護者たちからも好評で、口コミで広がってくれることを期待している。
環境が整った次は、グローバル社会に役立つ人間を育てていくことだ。そのためのトリリンガル教育の充実化にいっそう力を入れていかなければならない。
ルーツ知ること欠かせない
高敬弼理事長 この70年という歴史は、愛国心と民族教育への思いが受け継がれてきたたまものだ。これからの国際社会のなかで、自分のルーツを知ることは欠かせない。そのルーツを知る場として、建国の民族教育はいっそう重要になると思う。昨年、新校舎も完成し、園児・児童・生徒数は450人を超え、6百数十人の受け入れが可能になった。
建国には地域の人々と提携した寄宿舎もあり、関西だけでなく全国から子どもたちを受け入れる体制が整っている。 是非、建国に来てほしい。理事会も全力を挙げてサポートしていく。
進学向上に力入れ実績積む
李光衡校長 建国は韓国系の民族学校として、70年というもっとも古い歴史を誇る学校であり、その重要性を痛感している。
進学にも年々力を入れており、日本の大学への進学希望者には今年から、塾の講師を招いて、放課後などに特別授業の時間を設けた。
語学では日本語、韓国語、英語に中国語も加え、国際社会で活躍できる人材の育成に取り組んでいる。
また、民族教育を受けたくても民族学校がない地域の生徒たちのために、建国が受け皿になりたいと考えてきた。民間寄宿舎との提携も準備が整い、国籍を問わず、全国のたくさんの生徒たちに、建国で学んでほしいという思いでいっぱいだ。
民族教育推進に全力尽くす
鄭鉉権 民団大阪団長(建国13期生) 白頭学院創立70周年を心からお祝いするとともに、学院創立の精神を脈々と継承し、同胞子女たちの育成にご尽力いただいた、すべての学校関係者の皆様に対し、心から敬意を表し感謝申し上げます。
在日韓国人社会において民族教育はその根幹をなすものであり、次世代育成を重点課業とする民団は、今後も民族教育推進に全力を尽くし支援してまいります。
70周年を新たな起点として、高敬弼理事長、李光衡校長先生を中心に時代と保護者のニーズにこたえながら、より魅力ある民族学校に育ててくださることを期待します。
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7月に1日体験入学 建国での学校生活を実地体験してもらおうと未就学児童を対象とした体験入学を7月2日に行う。学校説明会も同時に開催する。ゲームやiPadでの韓国語学習や遊びながらの英語学習のほか、身近な材料を使っての物づくりが体験できる。体験後は給食試食会もある。スケジュールは次の通り。
▽受付=9〜20時▽韓国語(iPadで遊ぼう)=9時30分〜10時10分▽英語(英語で遊ぼう)=10時10分〜40分▽図工(作って遊ぼう)=10時50分〜11時20分▽給食試食会=11時20分〜12時)
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【沿革】 建国の前身は1946年3月、現在地に設立された建国工業学校、建国高等女学校。設立代表者は民団中央団長も務めた圭訓氏、初代校長は李慶泰氏。47年4月に建国中学に改称。48年に建国高等学校、49年に建国小学校を設立し、財団法人の認可を受けた。51年、一条校資格を取得、学校法人にも。97年に建国幼稚園を開設。2015年5月、新校舎が竣工。
(2016.6.8 民団新聞)