サムギョプサル専門店
K・Jライフ 具哲社長
サムギョプサル(豚バラ肉)はアバラ骨の周囲の肉を指し、赤身と脂身が交互に3層になっている。肉質が柔らかく、コクと旨みがあることから、近年、日本でもファン層が広がっている。
その専門料理店「とんちゃん」は行列ができるほどの人気ぶりだ。「価格は他店の半額。安く、おいしい。専門店は日本で初めて」と、元祖を強調する。社員は約150人、昨年度売上額は10億円ほど。
W杯で盛り上がり
釜山生まれ。高校卒業後、兵役中に日本語を独学。「観光ガイドに関心があったから」。除隊後、本格的に日本語を学ぼうと、89年に来日。日本大学商学部に入学したものの生活に追われ、宅配、パチンコ店、土木、飲食店などさまざまなアルバイトをしながら6年かけて卒業した。
97年に韓国に戻り、当時珍しかった「百円ショップ」を始めた。「事業は順調だったが、大手の進出で太刀打ちできなくなった。この時の失敗が後の人生に役立った」
新宿で貿易会社を営んでいた友人から呼ばれ、00年に再来日。仕事を手伝いながら、友人らを自宅に招き、サンギョプサルパーティーを行った。妻の手料理がよくほめられたので、誰も手掛けていない「サンギョプサル専門店」を出すことに。
02年、新宿歌舞伎町に1号店をオープン。ちょうどサッカーの韓日共催ワールドカップが盛り上がった時期で、「ラッキーだった。うちの店で応援すれば勝つというジンクスが広がり、客が増えた」。翌年には、ユン・ソナによって「王様のブランチ」に紹介されたことにより、同番組のナンバー1になった。
鮮度にこだわり
サンギョプサルとキムチ、サンチェ、ネギサラダ、トウガラシ、突き出しなどを含め、1人前900円。「ほかでは真似ができない低価格。薄利多売に徹したのが功を奏した」。行列ができるのもうなずける。
苦労したのが、肉を焼くオンドル石。鉄板だと、油がはねるし、割れやすい。試行錯誤の末、韓国の石鍋を参考に特別注文した。「オンドル石だと、自分の好みに焼けるのがいい」。
03年に赤坂に2号店、次いで渋谷、上野、高田馬場、五反田、池袋など、現在11店を数える。ほかにキムチ工場と野菜保蔵所を有する。どの店も同じシステムだ。
キムチと野菜は大量に使うので、材料を公設市場からまとめて購入する。「肉と野菜は生モノなので、鮮度に一番神経を使う」。台風などで品不足になり高騰しても、「無料にしているものを別料金で取るわけにはいかない。地方に直接出向くなどして対応した」。
というのも、事業をスタートする際、知人たちに「キムチと野菜をサービスで提供する」と語った約束を一貫して守っているからだ。こうした姿勢が顧客の信頼につながっている。
11年に起こった東日本大震災。「こういう大変な時こそ、恩返しするチャンスと考えた」。やむを得ず韓国に帰った社員もいたが、全店1日も休まずに営業を続けた。「残った従業員が頑張ってくれた。今では自慢のひとつだ」。周囲の店にも波及した。
日大韓国人同窓会の会長、在日本韓国人連合会(韓人会)理事長などを務める。最近、ウオーキングを始め、5㌔ほどやせた。「大好きな肉を食べ続けるには、体調管理にも神経を使わないと」
◆(有)K・Jライフ=東京都新宿区百人町2‐4‐5‐4F(℡03・5332・5118)
(2013.12.11 民団新聞)