韓日関係史を重視
【大阪】韓国の通史を在日同胞向けに分かりやすく解説した副読本が、京都国際学園と大阪の金剛学園2校の教師の共同作業で完成した。タイトルは『京都・大阪とともにある韓国史』(本文146㌻)。編集にあたっては金剛学園の在校生も協力した。両校の授業で使用される。
中2向け 学習者の目線で
執筆にあたっては韓国から歴史専攻者2人を迎えた。ここに両校の校長と歴史の担当教員が加わり、合わせて7人で各章ごとに執筆を分担した。中学2年生の学習者を意識して、京都と大阪に根ざした韓日関係史を中心に、東アジア的視点も多く盛り込んだ。
コラムには京都と大阪に残る韓日交流に関わる史跡、在日同胞集落の形成、解放後の識字学級「オモニハッキョ」などを取り上げており、親しみやすい。主な学習者層が韓半島にルーツを持つ日本生まれの4世世代であることを意識した。
開発チームのリーダー役を務めた金剛学園の朴星奇教諭は、「12年までは韓国語と日本語で構成された韓国の教科書をそのまま使ってきた。だが、在日韓国人の立場から見ると難解で、必要のない内容も多かった。在日学生の目線に立った親しみやすい教材が必要だった」と話す。
昨年8月に計画。執筆メンバーは1カ月に1回のペースで両校を往復。内容と叙述方法について協議を重ね、今年7月に完成した。全般的な歴史の叙述については韓国の専門研究者と金剛の教師が担当。前書きの在日韓国学校と韓国人社会に関する部分、6〜7章の解放後の在日韓国人史については京都国際の在日同胞教員が中心となった。
特に7章「21世紀仲直りと共存のために」では独島、日本軍「いあん婦」、靖国などの問題を取り上げ、「どのように解決すべきか」を生徒自らが考える内容になっている。
執筆を終えると、教材を実際に使用する生徒たちが内容をチェックした。すると、「以前の教科書より内容がぐっと親しみやすくなった」「韓日関係が充実していて、私たちがいま住む地域の歴史がよくわかる」と好意的な反応が返ってきたという。
朴教諭は、「この本は韓国で試験を受ける学生たちのための教本ではなく、日本の京都、大阪で暮らす韓国人と日本人のために書いた韓日関係の未来を照らす教材だ。これからも最良の教材をめざして改訂を重ねていく。これが終わりなのではなく、小さな一歩だと思っている」と話した。
次回、高校生向け「東アジア教材」を計画中。
(2014.10.22 民団新聞)