掲載日 : [2008-08-27] 照会数 : 5315
<布帳馬車>再評価される金鶴泳文学
「金鶴泳を知っていますか?」
東京・南麻布の在日韓人歴史資料館(韓国中央会館内)で開催中の在日2世作家・金鶴泳企画展(9月27日まで)を見て、懐かしさを覚えた。46年の生涯を解説した展示はとてもわかりやすく、同胞史とも重なり、当時の生活の一端をうかがうこともできる。
今年は生誕70周年ということもあって、生地・群馬県高崎市内の県立文学館でも記念展が開かれるなど、作品に対する再評価が高まっていることは喜ばしい。
「鑿(のみ)」や「冬の光」など芥川賞候補にのぼること4度。期待されながらもその夢を果たせなかったが、〈吃音・民族・父親〉をモチーフに、その葛藤を通して生きることの意味を模索し続けた作品の評価は高い。
70年代に発表されたものに代表作が多いが、当時、これらの作品に接したとき、同じ2世の立場として共感しながらも、あまりに重いテーマに息苦しさを覚えたものだ。
数年前の20回忌に合わせて、愛読者たちの願望により、『金鶴泳作品集Ⅰ・Ⅱ』が出版された。どちらも700頁を超し、随筆や日記といった新資料も収録された。「在日」という領域を超え、自己を凝視し続けた姿に共鳴する読者が増えているのかもしれない。
同資料館では9月6日に、酒の好きだった故人をしのび、酒を交わしながら「朗読と金鶴泳を語る」会が開かれる。多くの人に足を運んでほしい。
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(2008.8.27 民団新聞)