掲載日 : [2023-07-19] 照会数 : 1504
北韓への国家勧誘と留置、「不法行為は一体的」
[ 原告団による記者会見(司法記者クラブ) ]
虚偽の宣伝で「地上の楽園」と呼ばれていた北韓への渡航を勧誘・実現させ、移動の自由を否定して出国を許さなかった「北送」は国家的不法行為だとして北韓政府を相手取って総額5億円の損害賠償請求を求めている訴訟の控訴審第2回口頭弁論が7日、東京高裁であった。原告の脱北者5人のうち、高政美さんはすでに亡く、2人が体調不良で出廷できなかったため、川崎栄子さんと斎藤博子さんの2人だけが弁論に臨んだ。
虚偽の宣伝で「地上の楽園」と呼ばれていた北韓への渡航を勧誘・実現させ、移動の自由を否定して出国を許さなかった「北送」は国家的不法行為だとして北韓政府を相手取って総額5億円の損害賠償請求を求めている訴訟の控訴審第2回口頭弁論が7日、東京高裁であった。原告の脱北者5人のうち、高政美さんはすでに亡く、2人が体調不良で出廷できなかったため、川崎栄子さんと斎藤博子さんの2人だけが弁論に臨んだ。
はじめに原告代理人の福田健治弁護士が、北韓への「国家勧誘行為」と入国後の出国を禁じ、国内にとどめ置いた「留置行為」について北韓と朝鮮総連による一体的不法行為だと主張。被告の行為を「勧誘行為」と「留置行為」に分割したうえ、前者については20年間の除斥期間を満了していて訴えの権利はすでに消滅しているとして、後者については日本の裁判管轄権は及ばないと訴え自体を「不適法」とした一審判決を批判した。
これと関連、「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の山田文明理事も同会機関誌『かるめぎ135号』(2023年6月20日号より)で、「国家誘拐行為の要である『移送行為』を不法行為全体の分析と法的判断の範囲から除外していることは問題の本質を理解していない」「『移送行為』は新潟で帰国船に乗り込むことで確定的に実行されるに至り、同時に『留置行為』もこの時、確定的に開始された。『勧誘行為』と『留置行為』は『移送行為』が結ぶ一体的不法行為」との認識を示している。
原告の川崎さんは朝鮮高校に通う17歳で単身、北送船に乗り込んだ。当時を振り返り「(北送船に)乗らざるを得なかった(時代の)空気」を次のように指摘した。
「学校ではいまでは嘘八百でしかない『地上の楽園』を毎日のようにたたきこまれた。教師は皆熱心な宣伝マンと化していた。放課後には家庭訪問で熱心に説得された。血気旺盛な少女の好奇心に突き動かされた」
最後に「実行犯」の朝鮮総連を名指し、罪を償わせたいと力を込めた。
もう一人の原告、日本人妻の斎藤さんも総連関係者の執ような説得を挙げた。斎藤さんは「(日本人は)北朝鮮に帰っても3年したら日本に戻れる」との言葉を信じた。脱北してから「なぐってやりたい」と消息を探したがすでに亡くなっていたという。
当初は5月31日に東京高裁大法廷で判決が言い渡される予定だったが、裁判所の「人事的事情」で延期されていた。次回の口頭弁論は8月2日10時30分から101法廷で。判決は早くて秋になるものと見込まれている。
(2023.7.19民団新聞)