掲載日 : [2023-06-21] 照会数 : 1016
本名刻み墓碑建立 日本人の善意紹介
[ 著者の金鐘洙さん(左)と森川登美江さん ]
『飴売り具學永』 金鐘洙さん「囲む会」
【福岡】『飴売り具學永』の著者、金鐘洙さんを「囲む会」が5月31日、福岡市内であった。1923年9月の関東大震災朝鮮人虐殺から100年を迎え、「記録作家 林えいだい記念ありらん文庫資料室」を主宰する森川登美江さんが招いた。
具さんは埼玉県寄居町の長屋を拠点に飴売りをしながら生活していたところ、同年9月6日、隣村の自警団によって虐殺された。寄居町の住民は虐殺を防げなかったことを悔やみ、具さんのために墓を建て、供養した。墓石には名前のほか年齢、出身地、戒名が刻まれている。6千余人とされる犠牲者のなかで本名の刻まれた墓碑はこれが唯一とされる。施主は宮澤菊次郎(盲目の按摩師)を中心とする有志一同。
金さんによれば、関東大震災時の朝鮮人虐殺を知ったのは06年のこと。自ら校長を務めるフリースクールの生徒たちを引率して韓・日・在日青少年キャンプに参加するため日本を訪れ、4歳の時に関東大震災を経験した八木ケ谷妙子さんの話を聞いたことから。
翌年には東京・新宿の高麗博物館で「虐殺パネル展」を見た。金さんは韓国の高校教科書で習った内容とは違っていたことに驚いたという。
具さんのことを知り、なぜ、虐殺されたのかを知りたくなった。墓を建ててくれた善意の日本人にも関心があったという。独自に調査を進め、21年3月に韓国で出版したのが本書だった。22年4月には有志が日本語に翻訳し「展望社」から出版した。現在、英語訳、ドイツ語訳が出ている。
金さんは具さんが死の間際に書いたとされる血書「罰 日本 無罪」について「日本に罰を与えろ、罪のない私」と抗議しているように思うと述べた。
(2023.6.21民団新聞)