掲載日 : [2021-04-14] 照会数 : 6512
【寄稿】「正常化委員会」の勇気ある撤退を求めます
寄稿 金一男(第54期民団中央委員)
◆選挙は法的にすでに決着している
今回、第55回民団中央定期大会における中央本部三機間長選挙のいきさつについては、すでに中央選管からのこれまでの発表で明らかになっています。
また、その評価についても、統一日報4月9日付【朴容正・川崎民団支部団長の寄稿】『「開票=民意反映」論のウソと扇動』に正確かつ詳細に記録されています。
この間の「事実」のすべては、民団中央団長選挙に立候補した二人の候補者のうちの一人が「履歴詐称」と「偽証」を行ったために「失格」し、単独候補となった三機関長候補が自動的に「当選」した、ということに尽きるものです。選挙は終わったのです。
この過程で「混乱」があったとしても、新中央団長である呂健二氏にはそれについてはまったく責任がなく、したがって「信任」を問われなければならないいかなる理由もない、ということになります。
一部の人は、「任泰洙氏の前科を暴いた怪文書が出なければ、混乱はなかったし、怪文書は呂健二氏側が出したものだ」、と非難しました。けれども、初期に任泰洙候補が指摘された事実を率直に認めていれば、選挙規約上の重大な違反はなかったのです。
有権者は、若き日の前科を持つとはいえ任泰洙候補の現在の人格と理念を信じて、あるいは任候補への支持投票を行ったかもしれません。
ただ、一般的に言えば、執行猶予付きとはいえ恐喝未遂罪で2年6カ月の有罪判決を受けた経歴を持つ人が民団を代表する中央団長になることには、対外的な組織的体面からも戸惑いを感じるでしょう。それで、任候補側は有権者の投票が終わるまでその事実を否定し続けました。履歴詐称および偽証になります
◆呂健二新団長に対する信任手続きは不要
投票終了後、郵送された投票用紙の「開票」前にこの事実が確認されたことで、有権者の投票の権利が虚偽情報によって「汚染」されていたことが明らかになりました。
このことにより、任候補の重大な選挙違反の事実と「失格」も確定したわけです。
「投票用紙」を開票することも無意味なものになったのです。
この過程に対して、呂健二候補に何らの責任もないことは明らかです。従って、選挙過程に関連して呂健二新団長が中央大会などで新たに「信任」を受ける理由はありません。
任泰洙候補には、もしも民団に対する愛情が本物であるなら、今回はいさぎよく結果を受けとめて捲土重来を期してくれることを、民団中央委員の一人として心から願うものです。
ところで、すべてが終了した4月7日になって、「民団中央正常化委員会」なるものが立ち上げられ、呂健二新団長に対する「信任」のための「臨時中央大会」開催を求めました。呼びかけ人として7地方本部の役員と賛同人として23地方本部の団長の名前が掲げられています。
筆者の知る限り、一部の役員は充分な承諾もなく名前が載せられているようです。また、地方本部としての意思決定に関して内部からの異議申し立てが行われているようです。地方本部団長は、地方本部役員全体の民主的な意志決定を代弁する限りにおいて団長なのですから、当然のことです。
◆的を外れている正常化委員会の主張
問題なのは、「正常化委員会」の主張がまったく的をはずれていることです。
「正常化委員会」は、「4月6日の(大会の)続開は、大会構成員である中央委員、代議員の入場を禁止し」と非難しています。けれども、コロナ禍の現状で中央三機関役員と顧問団だけによる変則的な大会を行うことは、すでに大会前の合意事項でした。
この開催形式については事前にどのような異論もなかったのです。にもかかわらず、今になってそれを非難しているのは見当違いです。また、任泰洙候支持の役員は4月6日の大会には一人も参加せず、大会役員としての権利と義務をみずから放棄しています。
「正常化委員会」は、郵送された「投票用紙」が開封されずに廃棄されたことを非難しています。しかしながら、任候補の履歴詐称が明らかになった以上、これを「候補資格の失格」と判断した選管の判断はまったく正当な決定です。「開票」はありえません。
また、対立候補がいなくなった以上、単独候補となった三機関の候補者が自動的に当選となるのも、当然のことです。したがって、候補者の履歴詐称により汚染された投票用紙は「廃棄」されなければなりません。
「正常化委員会」はまた、選挙結果に対する過半数以上の「信任」を求めています。けれども、呂健二候補には選挙の「混乱」に対する責任はまったくなく、したがって「臨時中央大会における信任」などを必要としないことは明らかです。
「正常化委員会」は「規約に依拠」することを求めていますが、規約に違反しているのは「正常化委員会」です。
「正常化委員会」は「民団の危機的状況」を語っていますが、危機的状況をあえて作り出しているのは「正常化委員会」です。
◆民団の民主的風土を守り抜こう
「正常化委員会」は「民主的な多数決」を主張していますが、民主主義は「手続き」を守ることから始まります。手続き的な正統性を失った多数決への志向性は、単なる「政治的暴力」への志向性に過ぎないものであり、民主主義破壊の第一歩です。
「正常化委員会」が感情的に進めようとしている強引な手法がまかり通るようになれば、長年培われてきた民団内の民主的風土は失われます。
民団は理念団体ではありません。民団組織の本質は親睦団体です。国籍のいかんに関わらず、共通の父祖を持つ者たちの癒しの場として歴史を重ねてきたのです。
民団はこれまで、自分たちが考えている以上に比較的に美しい団体として機能してきました。けれども、今後は、本然の情を失った民団組織が派閥的野心の食い物になってしまうかもしれません。
「正常化委員会」は、思慮のない行動によって在日同胞が拠り所としてきた「大韓民国民団」を破壊した責任を、歴史に対して負わねばならないことになります。
民団の組織的合理性を守ることは、在日同胞の生活と母国韓国の発展を守ることであり、自由と民主主義の理念を共通の土台とする韓日の友好と協力の大道を守ることです。
民団守護の大義のために、正常化委員会を推進している方々の理性的省察と、すみやかな退却を求めます。ここまでの事態は、いかなる集団にも「あり得る」ことです。しかしながら、これ以上の事態は悲しむべき惰性であり、「あってはならない」ことです。
(2021.04.14 民団新聞)