掲載日 : [2021-06-08] 照会数 : 8159
DHC文書は不適切…主要取引先「人権基準に違反」
化粧品販売大手ディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明代表取締役会長が自社サイト上で露骨な人種差別を繰り返していることに対し、DHCの主要な取引企業9社から「(各企業の)人権方針に沿わない」などといった回答が寄せられていたことがわかった。
NPO法人多民族共生人権教育センター(朴洋幸理事長)、部落解放同盟大阪府連合会(赤井隆史執行委員長)、部落解放同盟大阪府民共闘会議(中野勝利議長)が3団体連名で吉田会長に「ヘイトスピーチ対策法に照らして違法である疑いが強い」として公式謝罪と再発防止策の実行を促すよう求めていた。
対象としたのは銀行4行、コンビニ、ドラッグストアといった小売店など28社の合わせて32社。「守秘義務などの観点から個別企業との関係についての回答を控える」とするものが目立った一方、22社からは回答が寄せられた。
回答のあった9社はDHCによるヘイトスピーチが社会性を著しく欠き、各企業の人権方針などに沿わないとの見解を寄せた。また、6社からはすでに遺憾の意を伝えた、公式見解を求めるなどの措置をとったとの回答があった。
DHCに対する個別見解を示さなかった企業でも、そのほとんどが独自の人権基準を作成。取引先にもこの基準を理解し、遵守することを求めている。そうでない場合には「適切に対処」することを明示している企業も8社あった。3団体は期限の5月21日までに返信のなかった残り10社についても再度、回答を求めている。
吉田会長は2020年11月、同社公式オンラインショップで「ヤケクソくじ」と題した文書を公開。「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです」と真偽不明の事実を公開した。
「チョントリー」は韓半島出身者に対する著しい侮辱である「チョン」という蔑称と同業他社である「サントリー」を組み合わせた造語。一方で、DHCは「起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本企業です」としている。これは国籍や人種的ルーツを理由とした差別的採用選考を行っているとの疑いを想起させるものだ。
これに先立って16年2月にDHCホームページ上で公開した「会長メッセージ」では「本物、偽物、似非者を語るとき在日の問題を避けて通れません」「裁判官が在日、被告側も在日の時は、提訴したこちら側が100%敗訴」「似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう」と記した。
これらは法に基づく手続きを経て日本国籍を取得した元韓国・朝鮮籍者を著しく侮辱したものであり、結語からは特定の人種的ルーツ持つ人々を社会から排除する意図すらうかがえる。
◆自治体も連携の解除、見直しへ
また、DHCと災害時のサプリメント供給などで包括連携協定を結ぶ21市のうち、3市が「人種差別にあたる」として協定の凍結や解除、または見直しを含む検討に入っているという。
高知県南国市は市議会で「会社として差別を煽動する明確な悪意がある」として協定見直しを求める声が出たことなどを受け、4月に解消を申し入れた。熊本県合志市は4月、協定凍結をDHCに伝えた。また、同社の製品をふるさと納税の返礼品としてした埼玉県さいたま市は取り扱いを中止した。「ヘイトスピーチ対策法」は「不当な差別的言動」の定義として脅迫、著しい侮辱、社会からの排除の3類型を挙げている。
◆非認め発言撤回、イオンに伝達か
DHCは4日までに取引先の流通大手イオン(千葉市)に「人権に不適切な内容が掲載された非を認め、発言を撤回する」と伝達した。イオンが公式サイトで明らかにしたと共同通信が報じた。問題の文章はすでに削除されている。
(2021.06.09 民団新聞)