掲載日 : [2017-09-27] 照会数 : 12842
<忠北国体>権五雄・在日選手団長に聞く
[ 朗らかに語る権五雄団長 ]
10月20日から忠州とその一円で開幕する第98回全国体育大会・忠清北道大会で、在日同胞選手団長を務める権五雄さん(57・在日本大韓体育会関西本部会長)。7日の全国地方団長・中央傘下団体長会議で呉公太民団中央団長から委嘱され、闘志を燃やしている。在日同胞選手団は海外同胞部門総合で6連覇をめざす。権団長が意気込みを語った。
海外同胞部門6連覇めざす
母国との一体感 実感を
韓国国体には熱い思い出が残っている。36年前の1981年、第62回韓国国体ソウル大会だ。サッカー在日同胞大学選抜チームの代表選手として出場した。
海外同胞の部ではなく国内種目の大学の部。東大門運動場での開会式直後に済州大学と対戦した。88年の五輪開催地がソウルに決まった直後だけに、スタンドは大観衆で埋め尽くされた。
「大観衆の前での開幕戦でしたから体が震えましたよ。モチベーションも最高潮。チーム一丸となって戦いました」
試合は開始早々から激しい攻防が続き、ゴールの奪い合いとなった。結局、在日同胞が3‐2で競り勝った。在日同胞が国体サッカーの国内競技で勝ったのはこれが最初で最後だ。
その後も韓国国体には5年連続で参加、現役引退後も監督として後輩たちの育成に務めた。
「私自身がそうであったように韓国国体で3〜4世の若い選手たちが母国への愛情と在日韓国人としての誇りを感じとってもらえればうれしい」
韓国国体は毎年欠かさず参観し、後輩たちを激励する。
「開会式が好きなんですよ。各市道と各国同胞の選手たちが唯一ひとつになる場ですから。また、開催都市の特徴を生かしたオープニングプログラムも楽しみなんです」
人一倍民族意識が強く韓国に2年間留学した。その時、現地で知り合った在日の留学生仲間とサッカーチームをつくり、いわゆる「早起きリーグ」に参戦した。チーム名は「アプロ」で「いつまでもみんなで前進しよう」との思いを込めた。
留学を終え日本に戻ってから20数年後、うれしい知らせがきた。
「アプロをつくられた先輩ですよね。ぜひ一度お話がしたくて電話しました。僕ら、今もそのチームやってます」
後輩たちがしっかりチームを引き継いでくれていたのだ。そんな「吉報」を受けた権さんは、すぐに韓国に飛んだ。その後、優秀選手を推薦し国体代表も輩出した。
「胸が熱くなりましたね。だから毎年、国体を観に行くんですよ。みんな自分の弟や息子みたいでワクワクする」
今もシニアチームなどで活動しているほどの熱狂的なサッカー男の夢はまだある。
Jリーグチーム滋賀にも作る夢
「滋賀にJリーグチームをつくってほしい」とのサッカー仲間や地域住民からの熱望に応え、06年に「FCMi‐OびわこKUSATSU」を誕生させた。結成1年目、関西サッカーリーグ1部でいきなり2位になり、滋賀県勢として初めて全国地域サッカーリーグ決勝大会に進出した。現在のチーム名は「MIOびわこ滋賀」。天皇杯予選に5度出場するなどチーム力をアップし、JFL(日本フットボールリーグ)でJリーグ入りをめざしている。
現在、在日同胞は海外同胞の部総合で5連覇中。6連覇というプレッシャーに加え、今大会の開・閉会式となる忠州市が故郷だけに、意気込みも一層強い。
「メーン会場が忠州となるのは初めて。父の兄弟や親戚たちをはじめ、知り合いも多いのでとても楽しみにしている。もちろんサッカーには注目しているが、どの競技も大切。とにかく、母国の舞台でのびのびとプレーし、『在日』の底力を見せてくれれば満足です」
在日同胞次世代たちの活躍が在日社会の活性化にもつながっている。
「母国との一体感を実感できる素晴らしい機会だと思います。国体がきっかけとなり、韓国代表をめざしたアスリートも多いはず」
最近では、柔道の安昌林や、女子サッカーの康裕美、今年の柔道アジアユースで優勝した金知秀がその代表的なケース。
「こうした活躍がこれからも続き、在日の存在が大きく示され、その相乗効果で次の青少年たちが母国への愛情を高めることを期待しています」
(2017.9.27 民団新聞)