掲載日 : [2004-10-20] 照会数 : 14848
笑顔で疾走の45年 金久美子さん無念の死(04.10.20)
作家の李良枝、鷺沢萌に続き、在日3世の女優、金久美子が亡くなった。45歳という若さだった。
散り方はそれぞれ違うが、華のある在日女性の若い才能が、またも志半ばで逝ってしまった。この無念さは、「一粒の麦死なずんば…」で片づけるには、割り切れない。
金さんが亡くなったのは、1日の19時58分。都内の病院だった。昨年6月に胃ガンの手術を受けたが、胃以外にもガンが転移しており、ついに帰らぬ人になった。
金さんは手術後の昨年夏、映画「千の風になって」(金秀吉監督)やTBS系の昼のドラマ「コスメの魔法」などの撮影にも意欲的に取り組んでいた。また、今年3月には鄭義信作の舞台「アジアン・スイーツ」にも出演した。結婚歴のない金さんがウェディング姿になったこの作品が、舞台の遺作になった。映画では来年公開の「またの日の、知華」(原一男監督)が遺作となる。
活躍の場は演劇にとどまらなかった。旧日本軍の軍人、軍属として戦死した同胞の遺族らに、弔慰金や見舞金を支給する総務省の広告モデルにもなった。彼女の存在感が、お固い役所のイメージを突き破った結果だろう。
5日に営まれた葬儀・告別式には約250人が参列した。作家の梁石日さんは、「いつも前向きで笑顔を絶やさず、みんなに愛されていた。大いなる可能性と希望を遺してくれた」と声を震わせながら弔辞を読んだ。梁さんの「月はどっちに出ている」にも出演していただけに、万感の思いであったに違いない。
劇団「68/71黒色テント」を皮切りに、金守珍率いる劇団新宿梁山泊では「千年の孤独」などでいちやく看板女優になった。20代から亡くなる直前まで女優として疾走した人生だった。謹んで故人の冥福を祈りたい。合掌。
(編集長・哲恩)
(2004.10.20 民団新聞)