掲載日 : [2004-10-20] 照会数 : 2359
韓日市民連帯を 「教科書ネット21」俵事務局長に聞く(04.10.20)
[ 俵義文さん ]
許せぬ歴史的事実歪曲
「つくる会」教科書採択阻止
東京都教育委員会が来年新設される都立中高一貫校の歴史教科書に「新しい歴史教科書をつくる会(以下、つくる会)」が主導して作成した教科書を採択(8月26日)したことで、来年8月の全国一斉採択に影響が出るのではないかとの危惧が広がっている。採択を限りなくゼロに近づけることは、民団にとっても重要な課題だ。いま何が急がれるのか。「子どもと教科書全国ネット21」の事務局長、俵義文氏に聞いた。
都教委方式通用しない
「つくる会」の歴史教科書は、日本の侵略戦争や植民地支配を正当化し美化するなど、誤った歴史認識に基づいた記述でいっぱいだ。歴史教育で一番大事なのは事実なのに、その事実を勝手に解釈し歪曲している。
問題のある教科書をなぜ、都教委は採択できたのか。理由は明快で、採択制度を「つくる会」に都合のいいものに変えてしまったからだ。「つくる会」は、従来のような方式では自分たちの教科書を採択する地域がなくなると考え、国会議員などに働きかけてきた。
前回01年の一斉採択時から制度改悪が進み、採択の際に教員の意見を排除するようになった。東京都はその先鞭を切って、教育現場の教員や保護者、学校OBなどの声を全く無視した、6名の教育委員だけによる採択を強行した。
採択制度の改悪によって、来年の全国一斉採択でも多くの地域が都教委と同じやり方で採択するのではと危惧するむきもある。しかし、そう心配したものでもない。
中高一貫校の場合は設置者が都道府県なので、採択するのは都道府県の教育委。都道府県の教育委は住民からは遠い存在である。その点、一斉採択の主体は、住民から近い存在の市町村レベルの教育委だ。住民の声を全く無視しての採択に限界がある。今回の都教委のようなやり方をさせないことは十分に可能だ。
来年に向けて大事なのは、日韓の市民が地域でともに声を上げていくこと。地域にある教科書のための市民組織で一緒に活動してもらえればいいと思う。また地域の民団が、それぞれの地方議会や教育委などに、採択反対を訴える動きがあるが、それも意味がある。日本政府は閣議決定で、採択は将来的には学校ごとにすると決めている。その実行も迫って行くべきだろう。
在日の人たちは長い間、差別を受け辛い思いをしてこられた。日本人と分け隔てなく一緒に過ごせる社会を早く実現するためにも、逆の方向に進もうとしている「つくる会」の教科書を学校現場に持ち込ませるわけにはいかない。
(2004.10.20 民団新聞)