掲載日 : [2019-12-04] 照会数 : 11778
小鼓に魅せられて 在日3世の盧慶順さん
[ 3月17日、コトル精霊教会で歳松会の演奏。琴の右側、小鼓を打つのが盧さん ] [ 東京芸大で講義も 盧慶順さん ]
邦楽囃子の伝統担う
来月、東京で韓日コラボ公演
在日韓国人3世の邦楽囃子演奏家、盧慶順さんが、来年1月9日、東京のなかのZERO大ホールで開かれる日韓文化交流企画公演「福を呼ぶ」(特定非営利活動法人文化・芸術工房)に出演する。現在、演奏家としての活動以外に東京芸術大学音楽学部准教授、一般社団法人邦楽囃子研究所「歳松会」理事の顔も持つ。日本の伝統楽器の一つである小鼓との衝撃的な出会いから、芸を磨くために邁進してきた。
韓日コラボレーションを柱にした同公演では、両国の伝統芸能を担う趙珠仙さん(パンソリ)、金美福さん(韓国伝統舞踊)、望月彦十郎さん(邦楽囃子)、今藤政十郎さん(長唄三味線)、西川浩平さん(笛)ら、重鎮から若手までの演奏家、舞踊家たちが出演する。
当日は日本の古典舞踊、伝統音楽、韓日の民謡、農楽など、なかなかお目にかかれないプログラムが用意されている。
望月彦十郎さんの門弟である盧さんの芸名は望月彦慶。公演では「パンソリと囃子と笛と」で初めてパンソリと共演する。
盧さんは山口・下関市出身。幼少よりピアノを習い、邦楽囃子を学ぶようになった。目の前で聞いた小鼓の音色に胸をうたれたからだ。その後、東京芸術大学に入学。邦楽囃子の稽古を受け、三味線や唄、能楽囃子、祭り囃子などを学んだ。「日本の古典音楽に携わることは、人より乗り越えなければならないものがあったように思う」
学生時代から演奏の仕事を受けてきた。キャリアを積むにつれて、いろいろな人から依頼が舞い込んだ。現在、演奏家として国内外で公演するほかに東京芸術大学音楽学部准教授、昭和音楽大学講師として教壇に立つ。歳松会の銀座小鼓会での個人レッスンなど、邦楽囃子の魅力を伝える活動にも取り組んでいる。
理事を務める「歳松会」は、邦楽囃子の保存伝承や普及、そして邦楽囃子の可能性を広げるために演奏会などを開催している。盧さんは、2015年に設立した当時の立ち上げメンバーの一人。今年3月にはヨーロッパのモンテネグロで公演を行い好評を得た。
日本の伝統音楽に携わることは、難しい面もあるが、「こうして歩んでこられたのは私の背中を支えてくれている多くの方たちのおかげ」と感謝を忘れない。
邦楽囃子演奏家として、古典から現代音楽まで幅広く演奏活動を行う一方で、これから邦楽器による創作活動や、自身の楽器で新たな表現を模索していきたいという。囃子のための曲作りもその一つだ。
「私にとって邦楽囃子は無くてはならない存在だし、世界を広げてくれた。一人の音楽家としてはこれからと思っている。芸を磨いていきたい」
日韓文化交流企画公演「福を呼ぶ」 19時開演。料金7000円。なかのZEROチケットセンター(03・3382・9990)。販売時間は10~19時。公演サイト(http://bunkageijutsu.net/fukuoyobu/)
(2019.12.04 民団新聞)