掲載日 : [2019-03-21] 照会数 : 7595
蔵真墨さん 釜山に寄り添い撮った滞在3カ月モノクロ写真展(来月 東京)
[ ©Masumi Kura ] [ ©Masumi Kura ] [ 蔵真墨さん ]
「パンモゴッソヨ?」に癒されて
人物スナップを中心に撮影している蔵真墨さんの写真展「パンモゴッソヨ? Summertime in Busan」が4月9日から27日まで、東京・中央区のコミュニケーションギャラリーふげん社で開かれる。展示作品は、2017年に3カ月間、釜山に滞在した際に撮影したモノクローム写真約30点。タイトルでもある「パンモゴッソヨ」というあいさつは「思いやりの言葉」と語る。初めての長期滞在で蔵さんは、何を感じたのだろう。
釜山へ行ったのは、横浜のBankARTが世界の都市へアーティストをおくるレジデンスプログラムの一環。滞在しながら制作活動を行うというものだ。
暗室での作業以外は街を歩き、市場や花札をしている女性たち、屋台に積まれた果物、甘川文化村のオンギなど「はっと思った」一瞬の光景を撮影した。
写真を撮ったら必ず声をかける。一人の青年に「チョヌン イルボンサジンガ(私は日本の写真家)」だと告げると「撮ってもいいですよ」と日本語で返事が返ってきた。その言葉が嬉しかった。
富山県出身。埼玉に居住し、東京をベースに仕事を行っている。00年に写真家デビュー。これまで4冊の写真集を出版した。16年刊行の『Men are Beautiful』(Urgent Press)は、21世紀的な作品を作りたいと意識して撮影した。
20世紀を代表する写真家、ゲイリー・ウィノグランドの代表作の一つ『Women Are Beautiful』は女性を被写体にしたものだ。蔵さんは「逆に女性が男性を撮るのが21世紀的なアップデート」と話す。新しい視点から撮影した蔵さんの作品は注目を集めている。
韓国語はあいさつ程度しか話せないが、勉強は続けている。「単なる韓国好きの写真家ですよ」と笑う。以前、食文化の本を読んでいて「パンモゴッソヨ」というあいさつを面白いと思った。後に、それは「ご飯食べた」を意味し、物資が不足し食べ物を分け合っていた時代の名残であることを知る。
釜山滞在中、必ず「ご飯食べた」「何食べた」「どこで食べた」と声をかけてくれた。「海外からきて、勝手も分からないから気を使ってくれる。私は思いやりの言葉なんじゃないかなと思う」。
そして「『パンモゴッソヨ』文化は根強いし、ご飯を食べることを大事にしている。一緒に食べるのはいいですね」とも。
15年、個展を開くために初めて釜山を訪ねた。桜の季節で、金海国際空港から海雲台まで桜並木は続いた。「桜って美しいだけではなくて、そこに歴史があると思うと複雑で感慨深い」
「戦争以外にも釜山はいろいろな受難や困難があった。私は写真を撮って街に寄り添いながら、また韓国の人たちと交流したい」。寄り添うことによって、自分も癒されるということが3カ月を通して自身に起こった出来事だった。
「今の釜山は穏やかで平和だなと思う。何も特別なことは起こっていないけど、それは貴重なことだ」としみじみ語る。
写真展「パンモゴッソヨ? Summertime in Busan」
火・金12~19時、土12~17時、日・月休廊。
4月13日と27日には蔵さんとゲストによるギャラリートークも行われる。
参加費各1500円。
コミュニケーションギャラリーふげん社
(東京都中央区築地1‐8‐4 築地ガーデンビル2階、電話03・6264・3665)