掲載日 : [2005-04-06] 照会数 : 2770
李明守税理士の同胞税務相談(05.4.6)
銀行の見る決算書とは…経営分析率を重視
Q 会社の決算を迎えました。1月に本紙に掲載された融資に関しての決算書の重要性の記事を読みましたが、銀行はどこを見るのでしょうか。
A (1)決算書の組み方
銀行等は(全国的に)簡易な判断として、まず、キャッシュフロー(利益+減価償却費)が借入金の当期返済額を超えているかを見ます。
そして、資産の含み損益、不良債権資産の有無、融通手形の有無、また、借入資金の転用がないか、長期借入金が短期運用されたり赤字の補てんに使われてないか、設備投資額が妥当か、マーケットや需要動向とその対応などを検討します。
なかでも経常収支じりが3期連続一〇〇%以上かを重要視します。仮決算がもし赤字であれば、特別償却、除却損や役員退職金などは特別損失へ計上し、経常利益を出すようにします。それでも赤字なら赤字のタイプや理由を説明します。
貸借対照表においても、要するに経営分析比率がより良く評価されるよう決算を組む必要があります。科目配置によって分析値が良くなる可能性があるからです。格付けアップは、銀行の担当者に直接たずねてみるのも得策です。現在では、格付けに関する情報はインターネットや書店で入手できます。
さらには、決算書は政府系「中小会社会計基準」に則って当該チェックリストを添付して組むのが良いでしょう。加えて、近年改正された税理士法書面添付制度の書類を付ければ信頼性が高まります。
(2)計画書の勘所
実際の経営には過去会計より、未来会計としての中期経営計画書の作成が役に立つでしょう。現在が黒字で計画見込みも黒字であることが最善です。そして、銀行等が特に返済能力を重視することから「債務償還年数」を企業側から算出して下さい。繰越欠損がある場合には、それがいつまでになくなるのかを記載して下さい。計画は現場データを積み上げて根拠あるものとし、できれば決算前に社長自身が説明に出向くのが良いでしょう。
融資としては、①経常運転資金②つなぎ資金③季節資金④決算資金⑤在庫調整資金⑥減産資金⑦赤字資金⑧設備資金などがあり、借り方としては、①手形貸付②証書貸付③商業手形(割引)④当座借越⑤代理貸付などがあります。
貸出額の決め方としては、非製造業は月商の3カ月分、製造業が6カ月分というような基準があります。担保がある場合には、土地建物の評価額の70%、国債95%、上場株70%、売掛債権85%が目安です。返済期間はキャッシュフローでみて運転5年、設備10年以内であることが望ましいでしょう。
なお、保証協会付融資は銀行等にとって引当金を繰入れしなくていいので、同協会の積極活用を銀行等と協業で進めたいものです。また、借入金の月々返済は1度でも延滞しないように最大限の注意をはらって下さい。借り換えが難しくなります。
*略歴 イ・ミョンス。1958年下関生まれ。青年会中央副会長などを経て税理士の資格取得。福岡韓国商工会議所理事、福岡納税経友会顧問。李明守税理士事務所℡092-415-3111。(毎月1回掲載)
(2005.04.06 民団新聞)