掲載日 : [2017-08-15] 照会数 : 13599
<平昌五輪>ショートトラックなぜ強い…韓国メダル量産の期待
[ 韓国が編み出したカエルの手袋 ]
[ 前足伸ばしも金選手が考案 ]
追随許さぬ特訓
コーナリングの技磨く
平昌でもメダル量産が期待される韓国のスピードスケート・ショートトラックはなぜ強いのだろうか。「車の運転を見ても韓国人は割り込みが上手いから」と言った冗談も囁かれるほど、世界で圧倒的な強さを誇っている。
ショートトラックは、1周111・12メートルのトラックを、記録ではなく着順で順位を決め、予選から決勝へと続くラウンドを勝ち進んでいく競技である。400メートルトラックを使用するスピードスケートと比較した場合、短い距離をコーナリングで勝負するゲームであるため「ショート」トラックと命名された。
2人で競争するスピードスケートに比べ、複数の選手が同時に滑走するオープン方式で競技が進行するショートトラックは、絶えずコーナーを回るスピード感と迫力から「氷上の競輪」とも呼ばれている。
オリンピックでは、1988年のカルガリー大会で公開競技として初めて行われ、92年のアルベールビル大会から正式種目となった。韓国が過去の冬季五輪で獲得した26個の金メダルのうち、21個がショートトラックだ。銀メダルも12個獲得しており、「韓国=ショートトラック」のイメージが強いのはそのせいだろう。
近年、韓国の強さの秘密はショートトラックのコーナーワークとスピードスケートのスピードを組み合わせたハイレベルなトレーニングと、体系的なコーナリング訓練システム、そして、韓国ショートトラックが独自に編み出した必殺技にあると分析されている。それでは、その秘密を解説していきたい。
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コーナーベルト訓練
ショートトラックの成績に最も大きな影響を与えるのは「遠心力」だ。遠心力はコーナーを曲がるときに身体を外側に押し出す力で、速度が速いほど、また体重が重いほど多くの力を受けるようになる。
そのため、韓国選手にとって身体が小さく体重が軽いという不利な身体条件が、むしろ強みになる余地が生じたのである。そして、この遠心力を克服するためには、遠心力と反対方向に作用する求心力を高めなければならない。
そこで、韓国ショートトラック界はコーナーベルト訓練(ゴムベルトを腰に巻いてコーナリングでのスピードとバランス感覚を磨く技術)という独自のトレーニングを編み出した。
コーチが引っ張るベルトを腰にかけて、選手たちはコーナーを回るトレーニングに明け暮れた。バランス感覚を高めるのに有効で、状況によって片足を利用して内側のコーナーを回るか、両足を交互に動かしながら外側を行くかも、自由に決定できるようになった。
コーナリングがトラックの半分を占めるショートトラックの特性、弱点が強みに変わった選手たちの体格、そして何よりも遠心力を勝ち抜くために選手が行った血のにじむようなトレーニングが、韓国をショートトラック強国に押し上げた。
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ケグリチャンガブ(カエルの手袋)
ショートトラックは高速で急コーナーを回るため、選手はとても深く傾斜する。とくにコーナーの頂点に差し掛かったところで最も深く傾き、スピードが上がるにつれ、バランスを取るために左手のみ氷上に手をつくことになる。
ところが、手をつけば摩擦が大きくなり、スピードが減少するだけでなく指先にも擦り傷が付くのが悩みだった。
そこで、92年アルベールビル五輪の男子1000メートルで韓国史上初の金メダルを獲得した金が開発し、使用したのが通称「カエルの手袋」だ。指先にエポキシ樹脂が塗られて摩擦力が軽減され、コーナリングの局面で指を保護し、スピードの減速を最小限に抑えるのに大活躍した。
ショートトラックの世界ではトレーニング法でも競技用具でも「韓国が世界の流行を創り出す」と言われている。今では世界中の選手が使っているショートトラック用のグローブも、歴史を紐解けば韓国選手が開発したものであった。
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ナルミルトゥルギ(前足伸ばし)
0・01秒を争うショートトラックの醍醐味がゴールシーンだ。ルールではブレード(スケートの刃)がフィニッシュラインを最初に通過した選手が勝利となる。
今では一般化されたフィニッシュラインの直前で前足を伸ばし、ブレードを差し出すゴール技術「ナルミルトゥルギ」をはじめて披露したのも、アルベールビル五輪の金メダリスト、金だ。この技を使用した時は誰もが驚きを隠せなかった。
フィニッシュライン直前に、カナダのフレデリックに完全に抜かれたと思われた金が、身体を沈め瞬時に前足を伸ばすと劇的な逆転勝ちを収めたのである。
そして、98年の長野五輪、1000メートルで金メダルを獲得し、後にアントン・オーノとの死闘で話題を呼んだ金東聖のナルミルトゥルギは、韓国でシンドロームを巻き起こすほど印象を残した。
身体は完全に負けていたのに、急に伸びてきた前足でゴールし金メダルを獲得する。重心を後ろに置いたまま、足だけ突き出すテクニックは、当時は金東聖だけができる高度な技術であった。
最も体力が低下しているゴールシーンであっても、最後まであきらめず懸命に足を伸ばす韓国選手の精神力と技術は、世界から称賛を受けている。不可能を可能にする韓国伝統のナルミルトゥルギ、韓国を世界最強のショートトラック王国へと導いたのである。
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ホープたち10人を決定
平昌五輪でも、ショートトラックがメダル獲得の立役者になると見込まれている。男女合わせて全8種目のうち、半分以上を制覇するのが目標だ。
韓国代表チームはすでに平昌五輪に出場する代表選手10人(男子5人・女子5人)を確定し、金メダル獲得へ本格的な準備に乗り出している。
女子は平昌で確実な金メダル候補と言われるワールドカップ王者のチェ・ミンジョンと、ソチ五輪3000メートルリレー金メダルの沈錫希に、次世代のエース金雅郎、イ・ユビン、キム・イェジンが加勢する。
3年前のソチ五輪でメダルゼロの屈辱を味わった男子も、エースのソ・イラとイム・ヒョジュンをはじめ、ファン・デホン、キム・ドギョム、クァク・ユンギが名誉挽回に挑む。
(2017.8.15 民団新聞)