掲載日 : [2016-05-11] 照会数 : 13354
<民団>ヘイトS禁止求め院内集会…法に被害者の声反映を
参議院法務委員会で審議中の自民・公明両党提出のヘイトスピーチ(差別扇動)対策法案が、全会一致の委員長提案の形で今週中にも本会議に提出される見込みとなった。これに先だって民団中央本部は4月27日、参議院議員会館で開いた緊急院内集会で「声明文」を採択し、ヘイトスピーチとヘイトクライム(憎悪犯罪)の根絶に向けた運動を最後まで推進する決意を新たにした。集会には全国の地方本部代表と国会議員など360余人が参加した。
「根絶まで運動推進」
院内集会で法曹フォーラムの李宇海会長が、与党案の問題点を具体的に指摘した。まず、「何人も〜してはならない」という禁止規定が本文にないこと。野党案では罰則こそ設けなかったものの、禁止規定を盛り込んでいただけに、「ヘイトスピーチを禁止する条項を入れていかなければならない。頑張ろう」と呼びかけた。
主催者を代表して呉公太団長は、与党からヘイトスピーチ対策法案が提出されたことを評価する一方、内容については「私たちはヘイトスピーチを減らすのではなく、無くなることを望んでいる。違法として禁止してもらいたい」と強く要望した。
地方から参加した代表も次々と悲痛な声を上げた。成功さん(愛知)は小さいころ「朝鮮人」と石を投げられたことを語り、「子どもや孫たちにも同じ経験をさせていいのか」と疑問を投げかけた。
姜博さん(岡山)は4月に地元でヘイトスピーチデモに遭遇した驚きを語り、「ヘイトスピーチを許さない、民族差別を許さないという後ろ盾がないため、このようなデモを許してしまった」と述べた。河鉄也さん(京都)は「言論の自由という妄想はやめてほしい。自分の家族に向けられたらと思ったらわかるはずだ。日本人の良心はどこへいったのか」と憤りをぶつけた。
この後、与野党国会議員からのアピールが続いた。参議院法務委員会理事の公明党・矢倉克夫議員は、「皆さんの意見を受け止め、満足のいくものにしていく。いまは第一歩を踏み出したばかり。与党法案を成立させてほしい」と訴えた。
これに対して野党からは、それぞれの立場から問題指摘があった。社会民主党の吉田忠智党首はインターネット上の差別に言及。日本共産党の仁比聰平参議院議員は「深刻な被害を認識することが議論の出発点」と述べた。
民進党の小川敏夫参議院議員は「禁止条項」が必要と理解を示しながらも、「見通しが開けていない」苦しい現状も明らかにした。同じく民進党の有田芳生参議院議員は、与党対策法案の成立を見越しながら、「これからは地方自治体に条例を制定してもらう闘いに移っていくだろう」と見通しを語った。
最後に民団中央本部の李根人権擁護委員会委員長が閉会辞で「法案がゴールではない。最終目的は真の共生社会実現だ」と締めくくった。
(2016.5.11 民団新聞)