韓信協(在日韓国人信用組合協会=呉龍夫会長)の会員6組合と近畿産業信組の総代会が6月中に開催された。韓信協がまとめた会員6組合の15年度業績は、全会員組合が15年ぶりに黒字決算と配当を実現した前年度に比べ、厳しいものとなった。業績が好調な組合と伸び悩む組合に両極化したとも言える。
預金・貸出金では横浜中央信組が前期比でともに20%以上、あすか信組も10%台の高い伸び率を見せたのに対し、愛知商銀と広島商銀は預金残高で、岡山商銀は貸出金残高で前年度実績を下回った。
当期利益においても横浜中央信組とあすか信組が10億円以上を計上したが、広島商銀と岡山商銀は赤字を余儀なくされた。配当率はあすか信組、横浜中央信組、九州幸銀、愛知商銀が前年水準をほぼ維持したものの、広島商銀は前年の2%から1%に、岡山商銀はここ数年間続けてきた2%から無配当になった。広島商銀と岡山商銀の業績低調は、不良債権処理のための引当金計上が主な要因だ。
内部留保の多い広島商銀は早期の不振脱却が見込まれているが、岡山商銀の場合は韓信協による優先出資と人材育成要員の支援が必要とされている。
自己資本比率は広島の6・50%を除いて他の5組合は7%以上を維持しており、横浜中央は15%以上の高水準にある。
韓信協は今年5月に創立60周年を迎えた。会員組合はいっそうの結束を固めて行く。
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あすか信用組合
手がたく2%配当 あすか信用組合(金哲也理事長。本店・東京都、第50期)は24日、新宿のホテルで。総代113人中88人(委任状44)。
特別金利定期預金の「あおば」と60歳以上限定の「シルバー定期」の好調が続いたほか、組合員限定の「プラチナ定期」も人気を伸ばし、預金は前期比33億2600万円増の2265億7200万円となった。貸出金は3年前から商品化した不動産担保ローンなどの積極的販売で220億7000万円増の1599億1100万円。預貸率は70・58%と8・84%上昇。
不良債権処理や貸出金増加による利息、手数料などの収益増によって、純利益は前年並みの11億7700万円を計上した。自己資本比率は7・11%。出資配当は前期と同じ2%。
金理事長は「今年は3カ年中期経営計画のしめくくりの年。預金と融資をさらに拡大し、質の高い金融サービスを提供していきたい」と述べた。
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横浜中央信用組合
預金・貸出20%伸び 横浜中央信用組合(呉龍夫理事長。本店・横浜市、第3期)は22日、横浜市内のホテルで。総代123人中99人(委任状66)。
合併から3期目に入り、広範囲な地域で収益基盤を拡大。キャンペーン定期預金商品「未来」などの好評によって、預金は前期比39億1970万円増の1755億6100万円となった。貸出金は中小規模業者への融資拡大などで23億6210万円増の1246億2200万円とした。預貸率は70・99%。自己資本比率は5・59ポイント減の15・26%となったが、純利益は5億5900万円増の12億7200万円とし、配当率は0・3%増の0・8%。
呉理事長は「マイナス金利導入で金利競争の激化もあり、貸出金増強による適正収益の確保が緊急の課題。信組の強みを活かしながら営業推進体制の整備と充実を図っていきたい」と今期の抱負を語った。
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信用組合広島商銀
「引当金」積み増す 信用組合広島商銀(井上一成理事長。本店・広島市、第55期)は27日、本店で。総代109人全員出席(委任状42)。
預金は主力商品の金利引き下げに加え、萩支店の閉鎖(山口支店に統合)により前期比3億円減の1468億1300万円となった。貸出金は住宅ローンや消費者ローンの見直し、電力自由化をふまえた太陽光事業に関する業務提携などにより982億8500万円と30億3800万円増加した。預貸率は2・21%伸ばし66・95%。
将来への備えとして個別貸倒引当金を11億1000万円積み増したことで純利益はマイナス3億100万円となった。自己資本比率は6・50%。配当率は1%に半減した。
井上理事長は「マイナス金利による収益減が懸念されるが、透明性の向上に尽力する」と述べた。
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九州幸銀信用組合
堅実に経営力強化 九州幸銀信用組合(金龍海会長、溝江雅夫理事長。本店・福岡市、第60期)は24日、本店で。総代112人中65人(委任状32)。
3年前から推進してきた「第3次中期経営計画」の最終年度にあたり、▽組織力強化▽取引先への浸透▽人材育成の3大課題に取り組むことで経営基盤拡充と顧客の目線にあわせた経営が定着した。
預金は前期比55億9500万円増の1205億9800万円とし、貸出金も108億7000万円増の793億4000万円を記録した。預貸率は65・79%と6・25%上昇。自己資本比率は0・06ポイント上がり7・08%に。純利益は1億9600万円を計上し、配当率1・2%を維持した。
溝江理事長は「新たに第4次中期経営計画をスタートさせ、環境の変化に耐えうる盤石な基盤を構築する。そのためにも地域に密着した経営に徹底したい」と決意。
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信用組合愛知商銀
設備投資サポート 信用組合愛知商銀(李國雄理事長。本店・名古屋市、第63期)は28日、愛知韓国人会館で。総代109人中101人(委任状36)。
個人預金の微減によって預金は前期比21億9400万円減の835億8800万円となった。地域情報・経営情報を活用した事業再生、創業・新事業への支援とコンサルティングを積極的に展開したことで、各企業の設備投資が活発化し貸出金は38億5900万円増の604億1600万円に。預貸率は6・35ポイント上がり72・28%となった。純利益は2億1800万円減の3億4000万円。
自己資本比率は0・50ポイント下がり7・90%となった。また、昨年12年ぶりに実施した配当は1%を維持した。
李理事長は「今年度も法令順守、取引先拡大、人材育成、安定収益確保、業務の効率化を経営の柱に実効性ある取り組みをしていく」と強調。
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信用組合岡山商銀
リスク管理に注力 信用組合岡山商銀(梁炳玉理事長。本店・岡山市、第54期)は24日、本店で。総代107人中93人(委任状17)。
預金は前期比3700万円増の257億8200万円。貸出金は資金需要の低下と金利競争の激化が影響し、5億4900万円減の112億4600万円。預貸率は2・19%下がり43・62%になった。
有価証券利息配当金、国債などの売却で業務純益4億5900万円を記録したが、個別貸倒引当金を11億5100万円積み増したため、純利益はマイナス8億3700万円となった。このため、自己資本比率も1・10ポイント下がって9・23%となり、配当率は0にした。
梁理事長は「厳しさが続く中、各種リスクを適切に管理することに力を注いだ。これを今後も徹底しながらも渉外活動と連動した役務収益などの拡大を図っていく」との考えを示した。
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近畿産業信用組合
預貸率が継続向上 近畿産業信用組合(大本崇博理事長。本店・大阪市、第63期)は21日、大阪市内のホテルで。総代195人中180人(委任状92)。
3年目に入った「新5カ年中期計画」の展開によって収益力と経営基盤を強化。
預金は「感謝」などの定期商品が牽引し、前期比156億円増の1兆3282億円。貸出金も395億円増の7641億円とし、預金・貸出金ともに信用組合日本一を維持。預貸率は2・33ポイント上がって57・53%に。
純利益は3億8300万円増の56億3400万円、自己資本比率は0・17%増の9・91%、配当率は前期と同じ2%。
大本理事長は「中期計画終了1年前の今期は、さらなる収益力を高め内部管理態勢の構築を目指し全役職員が一丸となって取り組みたい」と表明。
(2016.7.13 民団新聞)