地方活性化・次代育成を不断に
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展望
祖国との紐帯より固め「創団70年」を準備
今年は韓国と日本のそれぞれにとって、また両国関係にとって、きわめて重要な1年だ。韓国との紐帯を堅固にしつつ、日本の地域社会の発展にも貢献しようとする本団にとっても正念場の1年となる。
まず6月22日の国交正常化50周年があり、間をおかずに8月15日の祖国光復=日本敗戦70周年を迎える。この日は南北分断から70年でもある。米国、中国、ロシアでも先の大戦にかかわる歴史的な記念日が相次ぐ。
南北はもちろん韓半島問題に密接な利害を有する強大国が過去をいかに整理し、韓日、日中に加え米と中ロの確執で不安定な東アジアにどう未来志向的な秩序を指向するのか、試金石が続くことになろう。
欧米の制裁と原油安によるロシアの経済危機、中国経済の減速、ロシアや「イスラム国」との関係が緊迫するEU(欧州連合)がはらむ分離の危機、核兵器開発と人権弾圧によっていっそうの苦境を自ら招く北韓、さらには政権交代に向かう米国の指導力弱体化など、東アジアは経済・安保の両面で悪材料に囲まれている。
このような情勢下にあればこそ、東アジアの平和と繁栄を担保するためにも、自由・民主主義と市場経済の基本的価値観を共有し、対米同盟を同じくする韓日両国の連携強化が欠かせない。
しかし、大きな歴史的節目をひかえ両国社会の一部からは「《歴史戦争》に勝利を」との叫びがこだましている。慰安婦・戦時強制労働・独島など歴史認識に絡む諸懸案を無策のまま放置すれば、国交正常化による65年体制は根底からゆらぎかねない。
2012年後半から悪化したままの韓日関係に懸念を募らせる国際社会は、関係修復への圧力を強めるだろう。なかでも韓日それぞれと軍事同盟を結ぶ米国は、東アジアの安保を阻害しかねないとの認識を繰り返し表明し、関係改善を強く働きかけてきた。
韓日両国は諸懸案を一つひとつ切り離し、なおかつ諸懸案と経済・安保を連動させることなく、当面の最大課題でありながら、過去に歩み寄りの可能性があった慰安婦問題を解決することで、修復へ好循環を生み出すべきだ。韓日間の新たなトゲとなったヘイトスピーチ(憎悪表現)に、日本の政府と社会が法的規制を含む毅然とした態度で臨むこともその一助となる。
経済界は、困難な環境にありながらも、競い合いつつも協力し合う韓日関係の本来の姿を見事に体現している。韓日各界はこれを見習うだけでなく、関係修復への担保としてフル活用すべきだ。
朴大統領と安倍首相は年頭の記者会見で、経済振興をともに最優先課題に掲げた。であれば政治は、貿易立国として相互補完し合い、第三国への共同進出を拡大しようとする経済界の既定路線を政策支援し、両国経済の状況打開につなげるべきだ。まかり間違っても、政治がこの既定路線の障害になることがあってはならない。
韓日両国は50年の間に、経済を中心に多くの共有財産を築いてきた。両国にはこの1年、修交50周年の実績を再照明し、その成果を固め合う姿勢が求められる。本団もそこに、当事者として積極的にかかわるべきだ。韓国経済の離陸期から「漢江の奇跡」に至る過程で、本団を中心とする在日同胞の貢献が多大であったことを想起したい。
光復70周年は南北分断70年でもあることから、今年の8・15光復節式典は祖国統一への決意を新たにする場ともなろう。韓国では大統領直属の統一準備委員会が年内に「統一憲章」を制定する方針であり、すでに南北交流・協力の多様なプロジェクトが提起されている。本団は民主平和統一諮問会議日本地域会議を中心に、組織をあげて参与する。
2015年度の本団は、3年にわたって紛糾した韓商連の統合・正常化、「法人化検討委員会」による、より望ましい組織形態の創出を早期に推進し、次代を担う幹部・活動者の育成、新定住者団体との連携をテコに組織強化をはかりつつ、重厚かつ多様な課題に臨む一方、来年の創団70周年事業の準備を本格化する。
国交50周年、光復70周年は韓日関係史の同一線上にあり、この歴史的節目が有意義に迎えられてこそ、創団70周年事業の成功もあるとの確信に立ち、この1年の課業に全力を注ごう。
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重点方針
ヘイト一掃必ず…国交50周年 多様な交流を推進
■韓日友好・共生促進
【国交50周年韓日交流訪韓団派遣】
50年前の6月22日、14年におよぶマラソン交渉を経て韓日基本条約が調印された。この6月22日をめどに、全国で1000人規模の訪韓団を派遣する。日韓親善協会、姉妹提携などの関係にある自治体、地方議会の日韓議連、各市民団体などと協力し日本各界の友好人士と本団関係者で構成する。6月22日を前後する特定日に「友好促進の集い」を開催し、国交50周年を祝うとともに韓日両国の政府・国民に関係改善を強くアピールする。
【ヘイトスピーチ根絶】
この間、在日同胞の生活を脅かしてきたヘイトスピーチを1日も早く根絶しなければならない。同胞が地域住民として健全に生きていくためにも、人権擁護委員会が中心となって法規制を含む断固たる対処を当局に求め、地方議会への要望やシンポジウムなどによって反ヘイトの世論をいっそう高揚させたい。
【朝鮮通信使を世界遺産に】
韓日友好の歴史的な象徴として、朝鮮通信使を今に称える行事が日本各地で行われている。その主体となってきた15の自治体と民団中央本部など40の民間団体で構成する「縁地連(朝鮮通信使縁地連絡協議会)」と韓国の民間団体が共同で、通信使の関連史料を来年3月にもユネスコ記憶遺産に登録する準備を進めている。
縁地連の事務局を務める対馬市は韓日交流の最大コンテンツとする「朝鮮通信使再現行列」を家康公没後400年に合わせて駿府で開催する予定であり、関連行事はいっそう盛り上がろう。5回目となる「21世紀朝鮮通信使友情ウオーク」も例年以上の意気込みだ。
本団はこうした行事を直接支援するだけでなく、関連本部・支部の縁地連加盟や巡回講演会の開催、韓国における関連自治体や市民団体、さらには韓日・日韓議連との連携強化を通じて登録推進を後押しする。
【地方参政権獲得】
地域共生の基本軸となるのが地方参政権だ。在日同胞の地域貢献をより豊かにし、名実を備えた共生社会を実現するために、主要政党など関係要路にねばり強く働きかけていく。
【各種交流事業】
本団が運営する韓国語講座、各種教室などの常設機構、「10月のマダン」など恒例行事のほか、文化・芸能・スポーツ分野の新規特別行事を通じて国交50周年を祝い、関係改善を促す機運を高める。
また、7回目となる「韓日祝祭ハンマダンin東京」をより活況に導き、韓日の市民団体による同趣旨の行事に幅広く参与する。
【地域共生の追求】
交流訪韓団、朝鮮通信使の遺産登録、各種交流事業は、本団と韓日の自治体、市民団体との間の絆を強める付加価値を生む。これを確保しつつ、実生活と直接かかわる地域共生を確かなものにする取り組みも欠かせない。
■同胞生活支援
【生活相談センター】
6地方に設置された相談センター個々のレベルアップとセンター間の協力緊密化によって総体としての機能を充実させる一方、公館所在地で未設置の地方本部に開設を促し、全国化により拍車をかけたい。
同胞に関連する法律・行政に関する説明会を地方本部、傘下団体などの研修会もしくは巡回方式で行う。
【在留カードの更新】
今年7月8日までに、外国人登録証を在留カードに変更申請しなければならない永住・定住者に広く注意を喚起する。日本関係当局に広報を促すのはもちろん、本団のネットワークを駆使する。
【就職・結婚・福祉】
就職活動支援は韓商連、韓信協、駐日韓国企業、大手・中堅の同胞企業、韓国と協力関係にある日本企業との連携を密にし、在日子弟や留学生を対象にした就職説明会の複数開催を追求する。また、本国政府の海外就業支援に協力し、日本での就業を希望する本国同胞にも門戸を開く。婚活支援については地方本部、婦人会、青年会などによる個別事業を支援するとともに、昨年と同じく地方協議会単位の出会いの場イベントを督励する。
福祉事業では敬老行事の充実化、高齢者同士あるいは若者との交流機会の拡大をはかり、独居高齢者や同胞関連養護施設の実態把握に努め、適切な支援を拡充する。
【脱北者支援センター】
「脱北者支援民団センター・関西」が昨年発足し、脱北者の2大集住地域で支援体制が整った。本年は、北韓人権問題に関するシンポジウムと脱北者証言集会を地方本部の行事に合わせて多数開催し、北送事業の本質と脱北者支援について改めて世論喚起をしたい。また、脱北者が横の連携を強め、自主団体がつくれるよう側面支援する。
【旅行者支援センター】
7年目に入った同センターは、急増する韓国人訪日客に多様な便宜を提供してきた。本国・外交部の領事コールセンター、駐日公館はもちろん、専門家で構成する「みんだん生活相談センター」との協力システムを築き、いっそうのサービス向上をめざす。
【慰霊・顕彰事業】
長崎原爆韓国人犠牲者慰霊碑の早期建立を積極支援する。各地の慰霊事業を共助するとともに、無縁遺骨の調査・発掘と奉安事業を推進する。また、「国立・望郷の丘」で開催される第40回望郷祭への積極参加を奨励する。
■民族主体性確立
【次世代育成】
日本の中学・高校・大学に在籍する同胞子弟を対象に、5年連続で母国研修を行う。昨年の270人を上回る350人規模にする方針だ。昨年初めて開催した「大学生ジャンボリー」を「大学生ワークショップ」に衣替えし、規模を拡大して実施する。
オリニ事業は土曜学校、サマーキャンプ、冬季の集いとともにフットサル教室の充実をはかる。また、これまでケアの薄かった中・高生に対しては、ウリ文化探しなどフィールドワークやボウリングなど各種交流会を実施する。これらはオリニ・ジャンボリーや母国研修参加者の同窓会としても充実させたい。
【歴史資料館10周年】
「在日100年の歴史を後世へ」を合い言葉に設立された在日韓人歴史資料館は、展示品を質量ともに充実させ、在日同胞がルーツを確認し、韓日両国の市民が在日史をビジュアルに学ぶ貴重な存在となっている。10周年行事として各種企画展のほか、地方での特別展、記念資料集の発行を準備中だ。在日子弟が民族的主体性を育む場として活用を広げる。
【在日同胞史の教科書記載】
日本による植民統治によって派生し、解放後、祖国・韓国と一体となって発展に貢献してきた在日同胞社会は全民族史にあっても特異な歴史を有する。在日の次世代が誇りと主体性を培い、祖国との紐帯を末永く維持するために、本国の教科書に在日史を記載するよう求めていく。
【ウリマル使用勧奨】
本団が運営する韓国語学習の場は45地方・164教室・685講座を数えるにもかかわらず、同胞の受講者は少ない。ウリマル使用勧奨キャンペーンを継続し、各種弁論大会への参加を促すほか、支部もしくは地方本部が成果を競い合うスピーチ大会を開催する。
【旅券所持促進】
多様な理由により、旅券を所持していないか、所持したが更新していない同胞が少なくない。旅券所持は母国・故郷とのつながりを意識し、自身の民族的主体性の確立と在日同胞としての共同体意識の形成に役立つ。便宜提供に努力し、所持促進をはかる。
■組織改革・強化
【在日社会の大統合】
本団の各級組織と新定住者団体の幹部が集う「在日同胞未来フォーラム」を7月までに開催する。
本団と新定住者団体の構成員は歴史的経緯が異なるものの、新定住者にあっても2世が増加しつつあることから、自己実現・生活向上をはかるうえで多くの共通課題を抱える。この間、本団と新定住者団体との交流は活発に行われ、統合に向けての問題意識を共有してきた。フォーラムではそれをさらにすり合わせたい。
これを受け、「全国後継幹部ワークショップ」を本団の各級組織と新定住者を含む関連団体から30〜50代の活動者、実務者を集め、大規模に実施する計画だ。本団の後継幹部を育成するとともに、全国横断的な連帯強化を確認し、新定住者との絆も深める。統合問題と本団の組織改革・強化にも資する方向で準備する。
【支部活性化】
中央本部幹部はこの3年間で全支部の約6割にあたる163支部を巡回し対話集会をもった。少なくない地方本部・支部が厳しい運営を迫られている現状にかんがみ、本部・支部の再生を促進するためのワーショップを該当各地で実施する。
より多くの同胞が集い、同胞としての絆をいっそう温められるよう、適切なテーマを選定して近隣の本部・支部が合同事業を推進するよう促す。すでに多くの成功事例があり、これを拡散させたい。一方で、組織改革の観点から過疎本部・支部の円滑な統合を講究する。
団員と支部・本部との組織的なつながりを再確認し、日本国籍同胞、新定住者、総連離脱同胞を本団の組織基盤とするために、戸別訪問の範囲を広げ、弘報と交流活動を積極化する。
【幹部力量の向上】
本団の使命はますます重く、多様化しており、これまで以上に、各級幹部の資質向上がまたれている。
組織学院は中央教室のほか、今年も地方教室を充実させる。地方本部の各級幹部を対象とした研修は前期・後期に分け、より目的意識的に実施する。
これらと合わせ、全国の各級組織幹部がEメールを通してより迅速な情報交換が可能になるよう導く。
(2015.2.25 民団新聞)