高句麗からの渡来人を初代郡司とする高麗郡が武蔵国に設置されて、間もなく1300年を迎える。当時の中心地だったと目される埼玉県日高市では3年後に迫った「高麗郡1300年祭」に向け、渡来文化を起爆剤にした町おこしが進んでいる。18日には新たな名物として「高麗美舞(びまい)体操」が高麗神社境内でお披露目された。
壁画の世界 優雅に
新たな呼び物「美舞体操」
この「高麗美舞体操」は、「舞踊塚」と呼ばれている高句麗初期(5世紀)の代表的な壁画に描かれていた世界を再現したもの。昨年11月に実施した騎射競技会「馬射戲〜MASAI」に続く再現シリーズ第2弾として高麗郡建郡1300年記念事業委員会が企画した。昨年、若い女性たちだけで結成された高句麗装束姿の「おもてなし隊」と並び、観光客に注目されそうだ。
記念事業委員会から依頼を受けた女子栄養大学(埼玉県坂戸市)実践運動方法学研究室の金子嘉徳教授が、1年半かけて創案した。金子教授は、「初めて壁画の写真を見たとき、舞うという曲線美をイメージした。袖が腕よりだいぶ長い衣装は、動きをより大きく、美しく見せたと思う。高麗郡エリアを含む県西部や様々な関連地域に広く普及できれば」と話している。
7つのゆっくりした動きで韓半島からの文化・技術の伝播の様子を表現した。全身の筋肉をバランスよく動かすことで気分転換や疲労回復に役立つリフレッシュ体操でもある。開発に携わった同大学関係者らが高句麗装束に身を包み、神社のイベントで実演した。
日高市からは谷ヶ崎照雄市長も参加し、見物客と一緒になって体を動かした。谷ヶ崎市長は「一言で言って優雅な体操といった印象を受けた。市としても1300年祭に向け、これからいろんなことをやっていきたい」と話す。
この日のイベントは16日の建郡記念日を前後して毎年、開催されているもの。今年で8回目。市内の事業者も豆腐やお茶、醤油といった地場産の食料品を売り込んだ。
B級グルメのコーナーでは、数年前に地元で開発したキムチ味を隠し味に高麗人参を使った各種の「高麗鍋」が人気を集めていた。バリエーションも豊富で、「餃子入りパイタン高麗鍋」は昨年、草加市で開催された第10回埼玉B級ご当地グルメで優勝したほど。在日大韓婦人会埼玉県本部によるキムチやチヂミ、トッポッキのブースも人気を集めていた。
初代郡司・若光王の小説も
高麗郡の初代郡司、高麗王若光(こまのこきしじゃっこう、高麗神社祭神)の生涯が、歴史小説『陽光の剣 高麗王若光物語』としてよみがえった。時は7世紀後半。高句麗の若き王族・玄武若光の活躍と、日本に逃れてから高麗郡を開拓するまでのいきさつを描く。
企画したのは高麗郡建郡1300年記念事業委員会。同委員会によれば、若光の名前は『日本書紀』や『続日本紀』『高麗氏系図』などに登場し、実在は確認されているが、歴史的にはあまり知られていない。1300年記念事業の柱となるイメージづくりが必要となり、第60代目当主の高麗文康宮司に小説化を依頼した。
小説は大冒険あり、ラブロマンスありと、子どもから大人まで楽しめる内容。ただし、当時の歴史背景だけは正確に記述したという。高麗神社の成り立ちについては年間100件を超える専門的な問い合わせがあり、「正確に答えるためにもこれまで多くの文献を読んできた」(高麗宮司)ことが役に立った。
高麗宮司は、「さまざまな年代の方々が地域に関心を持つきっかけになればと願っています。とくに、子どもたちには、長い歴史の上に自分たちが生きていることを知ってほしいですね」と語った。
定価1500円(プラス税)。問い合わせは幹書房(℡048・833・6999)
(2013.5.22 民団新聞)