掲載日 : [2020-01-02] 照会数 : 11217
三つの橋をかけよう…呂健二民団中央団長新年辞
組織の原点に立ち帰り韓日友好へ力尽くす
2020年庚子年を迎え、在日同胞の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年が皆様にとって良い年でありますよう心より祈念申し上げます。
今年は子の年であります。子(ね)は、根(ね)に通じます。私たち在日の「根」は、在日の歴史であり、韓日の歴史であります。「あったこと」をなかったことに、「なかったこと」をあったことにしてはなりません。
日本で生まれ育った在日には韓国と日本の二つの「根」があります。単純な良し悪しで一方の根を否定することはできません。どちらも私たちの「木」を養う大事な根です。本年は、私たちみずからが在日の「根」を改めて学び直し、韓日友好に尽くす年にしましょう。
韓日友好の橋
新年にあたり、私は同胞の皆様に、三つの「橋」を架けることを提唱したいと思います。
一つ目の橋は、韓日友好の確かな「橋」を架けることです。
昨年は、韓日関係の悪化にふりまわされた年でありました。嫌韓、反日を素通りさせてはなりません。昨年1年間を通じて、私は肝に銘じたことがあります。
それは、「橋」を壊す人であってはいけない。「橋を架ける人」でなければならない、ということです。
私たちは、長年にわたり韓日友好の「橋」を架けてきました。ところが昨今、韓日間をつないできた「橋」を壊そうとする人々が目につくようになりました。そのたびに胸が痛む思いをしてきました。この間、同胞の皆様も同じように、いたたまれない気持ちを幾度も味わってこられたと思います。
しかし、一方で粘り強く「橋」をささえ、「橋」を架け続けている多くの人々に接してきました。頼もしく感謝に堪えません。長い時間軸でみると、韓日は友好の歴史のほうがはるかに長いのです。私たちには、250年間にわたる平和と友好の象徴である朝鮮通信使の歴史があります。
私たちは、韓日間の「橋」を壊そうとする人びとにふりまわされず、また一方の岸にだけに固執せず、相手の歴史観も理解し尊重しつつ、しっかりとした友好の「橋」を架け続けていきましょう。渡れない川はなく、明けない夜はありません。
私たちには1998年に架けられた金大中大統領・小渕恵三首相の「韓日パートナーシップ共同宣言」という橋があります。その精神と行動計画を今に活かして、各分野で多様な韓日友好交流事業、イベントを継続していきましょう。本団は創団以来74年間、地域社会で両国の友好増進の架け橋として積み重ねてきた実績があります。今年も継続して「10月のマダン」、各種韓日祝祭や青少年・文化交流を実施していきましょう。
同胞と次世代の橋
二つ目の橋は、同胞間・次世代間に確かな「橋」を架けることです。
この数年来、私たちは組織の原点に帰って、地域の同胞の家庭訪問を繰り返しています。同胞の「顔」がみえる訪問を通じて、情報を相互にやり取りし、困ったことや災害が生じた時にすぐに連絡を取り合うネットワークを結ぶためです。声をかけ、つながりを太くし、同胞が孤立しないようこれからも同胞間の「橋」を架け続けていきましょう。
昨年、「みんだん生活相談センター」は埼玉、福島で開設され、中央を含めて18カ所となりました。法律、税務、家族問題など、同胞の生活の役にたつよう全国化に向けて、民団は「橋」を架けつづけていきます。
川崎市では、昨年12月に全国で初めて刑事罰則を含んだヘイトスピーチ禁止のための条例が制定されました。ヘイトスピーチ根絶に継続して力を注いでいくとともに、3回目となる国連への要望活動も予定しています。
地方参政権の実現については、昨年11月、東京で開催された韓日・日韓議員連盟合同総会の共同声明で「実現に努力する」ことが表明されています。市民としての正当な権利として早期に認められなければなりません。
今年は記念すべき東京五輪・パラリンピック開催の年です。世界の若者たちが集まる中で、次世代への架け橋となる各種青少年交流を日韓親善協会とともに促進していきます。また、20年目となる「オリニジャンボリー」を全国規模でソウルで開催し、次世代に在日の歴史とこれからの展望を示す確かな橋を架けていきたいと思います。
韓半島平和への橋
三つ目の橋は、韓半島の平和定着へ確かな「橋」を架けることです。
韓国政府、国際社会の努力にもかかわらず、北韓は弾道ミサイルの発射実験を継続して強行し、軍事挑発をやめようとはしません。非核化を約束した米朝合意と国連安保理決議を無視し、国際社会を欺いています。韓半島の恒久的な平和体制の構築を謳った板門店宣言にも反するものです。私たちは継続して日本の地から、北韓の完全な非核化と韓半島の平和定着のために「橋」を架けていきましょう。
昨年は、日本人家族6679人を含む9万3339人の同胞が「地上の楽園」という宣伝に騙され、北韓に「北送」されてから60年でした。私たちは、60年経った今も、「北送」同胞とその子孫の生死の確認もなされず、自由往来どころか、一時往来もできない状況を大きな「人権問題」と捉えています。北韓と朝総連の責任は免れることはできません。今年も継続して各種集会を通じて「北送」同胞の自由と人権保障を求めていきたいと思います。
本年も共に団結して、この「三つの橋」をゆるぎなく架けていきましょう。つよい「橋」を架けるには強固な土台が必要です。私は1985年、ドイツ敗戦40年にあたり、ヴァイツゼッカー大統領が述べた言葉を大きな土台のひとつにしたいと思います。
「後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。過去に目を閉ざす者は結局のところ、現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」
本年が、すべての同胞の皆様にとりまして、また民団を支えておられる地域社会の人々にとりまして、幸多い年となりますよう祈念申し上げ、私の新年のご挨拶といたします。
在日本大韓民国民団中央本部団長 呂 健 二