掲載日 : [2020-03-11] 照会数 : 14861
新型コロナ、在日同胞を直撃…民団3・1節式典や地方委・大会延期
[ いつもは行列のできるライブハウスも人影はまばら(新大久保で) ] [ 保護者は参加せず簡略化した京都国際学園の卒業式 ] [ 東京韓国学校の正門には訪問制限の張り紙が ] [ 休校となった教室には生徒が忘れていったランチケースが ]
新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の拡散を防ぐために、民団社会や在日同胞社会、駐日韓国機関でも行事の延期や中止などの措置を執っている。民団中央本部では団員と同胞の健康と生命を守る立場から、3月中開催予定の地方委員会・大会・総会や一般行事を延期するよう指示した業務連絡を全国地方本部と傘下団体に通達した。また、同胞経営の飲食店を中心に売り上げの激減が生じているほか、9日から韓日両国が実施している入国規制により、母国修学生や日本への韓国人留学生にも大きな影響が出ている。
◆学生会のKSJWは中止
民団中央本部では3月1日に開催予定だった「3・1節」式典と関連行事を全国地方本部に延期するよう2月26日に示達したほか、傘下団体の在日韓国学生会では1日から3泊4日間で開催予定だった民団主催、学生会主管のKSJW(冬季在日大学生ジャンボリー)を中止した。
同イベントは1年間の締めくくりとして、愛知、大阪の執行部とともに準備を進めてきただけに、執行部のメンバーをはじめ参加予定者だった学生らは落胆の色を浮かべていた。学生会中央本部の李裕海会長は「卒業を控えたメンバーも多く、最後にみんなで集まる場だっただけに悲しいの一言。でも致し方ないですよね」と声を詰まらせていた。
また、在日韓人歴史資料館でも毎月開催している「土曜セミナー」の3月開催を中止した。民団大阪本部では7日に予定していた議決機関研修をやむなく延期したほか、韓国語教室の修了式も延期した。
中央本部では、これまで満員電車の混雑を避けるため、時差通勤を実施してきたが、9日からは輪番制の臨時勤務体制で臨むことにしており、各地方本部と傘下団体にも実情に合わせた勤務態勢を取るよう通達した。
すでに、東京と北海道本部も時差通勤を実施、愛知では出勤者を減少させ、時差通勤とテレワーク体制をとっている。
一方で規約上、3月中に開催が義務づけられている地方本部委員会・総会・大会についても延期の示達を出した。あわせて4月開催が義務づけられている支部総会・大会についても感染の推移を注視し判断する。
3月に開催を準備していた傘下団体の大会も延期となった。新会長を選出する婦人会中央大会や青年会各地方本部の大会も4月以降に延期となった。あわせて学生会も中央、愛知、大阪の各大会も延期となる。このため、4月16日に予定していた全国地方団長・中央傘下団体長会議および17日の全国事務局長会議も延期となる。
あわせて各地方本部や支部で予定していたイベントも自粛し、原則延期または中止を示達した。
◆民族学校すべて休校…卒業式も中止や簡略化
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、民族学校もすべて休校している。
大阪市の金剛学園は、1月末から登校してきた児童・生徒の罹患リスクを回避するため手指のアルコール消毒を徹底し、手洗いとうがいも奨励している。下校時刻を変更するなどの対策をとってきたが、2月29日から臨時休校に入った。3月16日は登校日とした。同じく白頭学院も2日から臨時休校に入った。13日までは自宅学習としている。
東京韓国学校(新宿区)は2月28日に予定していた、毎年恒例の「3・1記念マラソン大会」を中止にしたほか、2日から19日まで初・中・高等部すべてを休校にした。20日からの春休みを含むと事実上4月7日まで休校となる。ただ、中・高等部の期末試験は16日に、予定通り実施する。
夫婦共働きをしながら初等部1年生の子を通わせている金倫勁さん(44・新宿区)は、韓国文化院内にあるaTセンター(韓国農水産食品流通公社)に勤務しているが、2日から欠勤をしながら子どもの面倒を見ている。子どもが1カ月以上の休みとなることに対して、「主人が会社を休むわけにもいかないので、合間を見ながら私が休む形になるが、近所の学童クラブに通うなども考えている」と嘆いていた。
京都市の京都国際学園は5日から4月6日まで臨時休校に入った。
一方で卒業式にも影響が出ている。東京韓国学校は小・中学校卒業式を完全中止とし、卒業証書は郵送で送ることにした。4月7日に予定していた入学式も教室行事として簡素に行う。
休校期間中アポなし訪問客やマスク未着用者は一切、入校を断っている。中止となった卒業式の対策として送付する予定の卒業証書はまだ製作されておらずケースは箱のままの状態。外部からの訪問客は春休み中に行われる外部清掃作業員のみだ。
金剛学園は14日に予定している小・中学校の卒業式を簡略化して行う。式典に出席できるのは卒業生とその保護者、および教職員のみ。白頭学院も14日、「卒業証書授与式」だけ行い、謝恩会は中止にした。在校生は休校となる。
京都国際学園は7日の京都国際中学校卒業証書授与式を短縮実施した。
また、大阪府内小・中学校付設の民族学級(国際学級)も休校状態のため修了式の中止、延期や簡素化を余儀なくされている。
◆ビザ無効の場合も…留学生、授業延期に不安
9日から施行した韓日双方の入国規制によって、韓国の大学などに修学(留学)している在日同胞子弟、韓国から日本に留学している学生たちにも多くの影響が出ている。
在日同胞が韓国に行く場合、韓国のパスポート所持者は入国が可能だが、検査を受ける。一方、韓国と日本の重国籍者で日本のパスポートだけを所持している場合はビザも取り消しとなり、入国できない。
一方で韓国から日本に留学する韓国人学生の場合も同じだ。すでに発給されたビザは無効となり韓国の旅券では入国できない。ただ、すでに日本に居住している留学生のビザはそのまま有効だ。
元在日韓国人留学生会の会長を務めた李碩敏氏(23・早稲田大学院)によると、一時帰郷していた仲間たちの多くが8日までに日本に戻ってきたという。あわせて、4月6日から始まる予定だった授業が4月20日以降に延期になっている。
韓国の延世大学に留学中で一時日本に帰国していた在日3世で二重国籍者の康瑞妃さん(20・東京都)は12日に韓国に戻る予定だったが、韓国が日本からの入国制限を発表した8日のニュースを聞き、急遽その日の最終便を手配して韓国入りした。ただ、同大学の授業開始が4月中旬以降まで延期になっており、当面は下宿先でネット授業で対応していくようだ。
◆日本語学校も対応に悩む
韓国や中国などのアジアをはじめ多くの外国人留学生が通う日本語学院も頭を悩ませている。
都内大手の日本語学校では2日から休校し、17日に予定していた卒業式にあわせて、入学式も中止にした。
◆韓国文化院は休館 各種講座やスポーツ大会 相次いで中止決定
東京・新宿の韓国文化院は2月29日から当分間、休館となった。
ギャラリーMI、ハンマダンホールにおける今月のイベントは全て中止。図書映像資料室については、図書の返却は郵便または宅配を利用するか、平日9~17時に限り1階の受け付けでの返却になっている。
また世宗学堂の講座(韓国語、文化講座、子供文化教室、中高生の韓国語講座)をはじめ、テコンド教室などは休講している。さらに韓流エンタメショールームも休館となった。
4月については状況を見ながらホームページに随時更新していくという。 大阪韓国文化院(北区)は、「2020韓日学生美術交流展」を延期、「韓国語全国大会」「第1回韓国映画上映会」の中止が決まった。
全施設(ギャラリー、図書室、ヌリホールなど)は貸館及び利用はできない。ただし、世宗学堂(韓国語講座)については、受講生の判断によって通常通り受講を行っている。
東京・新宿の韓国観光公社は、開館しているものの、K小スタイルハブを休館にした。資料などを探しにくる人は減っているという。
福岡・博多区の韓国観光文化センターコリアプラザ福岡は、今月の定期文化講座について全講座を休講にした。4月からの定期文化講座については、検討しながら告知をする予定だ。
在日本大韓体育会傘下の在日本大韓ボウリング協会では、3月中に予定していた同協会の公式試合、プロ・アマ選手による第3回KBCJ杯オープントーナメント大会を中止にしたほか、ゴールデンウイークに予定していた「オリニ・ボウリング教室」もいち早く中止を決めた。
◆韓流の街、人出は半減…新大久保、外国団体客の姿消え
韓流の街として、連日、10代、20代を中心にぎわっていた新大久保のコリアンタウンも例外ではない。
韓食やスイーツ、韓流グッズやコスメ、雑貨など、インスタ映えする商品を求め、2月中はそれなりに若者を中心に人が行き来していたが、3月に入ってから人出は半分以下に激減した。
人通りはあるものの、以前に比べ、主婦層は見当たらなく、客層は10、20代が大半。人気のコスメショップやスイーツショップではそれなりのにぎわいを見せているが、新大久保駅まで続いていた長蛇の列は消えた。修学旅行や外国からの団体客の姿も見当たらない。
韓国食品を扱っている店では来客数は減っているが、映画「パラサイト=寄生虫」に登場する「チャパグリ」の影響で、即席麺の売れ行きは好調だという。
新宿韓国商人連合会の専務でもあり、新大久保商店街振興組合理事を兼任する申大永氏(民団東京本部副団長)は、「かつてのヘイトスピーチや東日本大震災の時よりも人出が激減した。各店舗とも頭を悩ましている」と話している。
また、新大久保のライブハウスなどを拠点に活動している韓流ボーイズグループのライブも、観客が大幅に減っている。
◆苦境の対馬観光…韓国へ帰国する業者も
昨年からの韓日関係悪化に伴い、韓国人観光客が激減している対馬島は深刻だ。2018年に過去最高41万人だった韓国人観光客は、昨年、大幅に減少したが、それでも約26万人が訪れた。
韓国からは釜山~厳原港と釜山~比田勝港のフェリーを運航していたが、韓日関係が悪化した昨年7月以降、厳原港便がストップして激減した。
対馬市では韓国からの観光客が激減した状況を受けて唯一、運航していた比田勝港便を利用した釣り客を対象に、「3000円お得やちゃ~!対馬クーポン券」の販売を開始した。1冊5000円分が2000円で買えるお得品で、同胞が経営する民宿や飲食店でも利用できるため、多少の希望が見えた。
少しずつ戻る状況を見て、対馬在住同胞も光明を見出したが、韓国からの来日者に2週間の隔離を実施する直前の3月6日から完全にストップし、一気にダメ押し状況になった。
元々、韓国人観光客を相手にしていたために、同胞(団員)が経営する民宿、飲食店、カラオケ店、レンタカーなどが軒並み苦境に立たされている。経営する民宿や飲食店を手放し、韓国へ帰国した同胞も少なくない。
(2020.03.11 民団新聞)