掲載日 : [2020-01-15] 照会数 : 11578
ツィッターで民族差別の男に罰金30万円…川崎簡裁が略式命令
【神奈川】匿名による執拗なツィッター投稿で3年半にわたり在日3世の女性(46、川崎市)を誹謗中傷していた男(51、神奈川県藤沢市)に対し、川崎区検は迷惑行為防止条例で刑事罰を科し、川崎簡裁が罰金30万円の略式命令を出した。共同通信が昨年12月27日付で報道した。女性の代理人を務めた師岡康子弁護士によれば、ヘイトスピーチをめぐり、迷惑防止条例で刑事罰を科すの初めてという。
報道などによれば、男は2016年から17年9月にかけてツィッターに「一番憎いのは在日」「チョーセンはしね」「民族性モロ出しの小賢しさはムカつくぜ」「植木に使うナタを買ってくる予定。レイシストが刃物を使うから通報するように」などと4回投稿した。ツィートは「余暇を楽しむかのように」(代理人弁護士)いつも、週末だった。しかも、すぐそばに住んでいて、いつも監視しているかのように装っていたという。
嫌がらせが始まったのは川崎・桜本でヘイトデモが相次ぎ、地元でもこれに反対する動きが出ていた時期。加害者が近所に住んでいるのではないか。どこかで、後をつけられているのではないか-。女性は外出時にはマスクをつけたり、メガネをかけるなどしてできる限り他人と目を合わせないようにした。
一時的な街宣と違い、ネット上のヘイトスピーチは毎日続く。法的に禁止条項がないので野放し。個人として発信者情報を所持しているIT業者に対して情報開示を迫るのはハードルが高い。弁護士に依頼するしか方法はなく、時間も経費もかかる。
ようやく発信者情報が開示されたのは17年8月。神奈川県警が容疑者の男を特定。書類送検したが、横浜地検川崎支部は19年2月、不起訴処分とした。
だが、代理人弁護士は「ツィートの内容がつきまといにあたる。無罪放免にしてはならない」と神奈川県迷惑行為防止条例違反の疑いで即日、刑事告訴。検察側による略式請求によれば、加害者のツィートについて4つが「嫌悪の感情等を充足する目的で投稿をした」とした。
被害にあった女性は記者会見で「インターネット上の匿名の書き込みでも刑事責任を問われるという社会正義がやっと示されました。ネット上にはいまも差別的な書き込みがあふれ、こうした被害を一刻も早く止めるためにさらなる法整備を望みます」と話した。
「ヘイトスピーチ対策法」の制定にも携わった「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」の有田芳生参議院議員は「ヘイトスピーチを含めたネット上の人権侵害は与野党を超えた課題。なんとか東京五輪・パラリンピックまでには議員立法をつくりたい」と話している。
(2020.01.15 民団新聞)