韓日の政治・外交関係は、一昨年夏以降、急速に冷え込み、かつてなく厳しい状況が続いているが、両国間の人的往来は依然活発である。昨年の往来は、約520万人にのぼった。経済の相互依存も深まっている。東北アジア情勢が激変するなか、国交正常化50周年を来年に控え、関係の早期修復と未来志向の新たな関係構築へ、双方のリーダーらの政治的決断とリーダーシップの発揮が求められている。そうした決断を促すうえでも、双方のメディアには、両国民間の相互理解と相互信頼の醸成へ、冷静かつ客観的な報道と丁寧な解説・論評が望まれている。同時に有識者らによる積極的・建設的な提言が期待されている。
「対立」より「理解」促せ
政治的決断 後押しすべき
日本政府観光局によると、13年に日本を訪れた韓国人は、前年比20・2%増の245万6100人で、外国人のうち最も多かった。前年の韓国からの日本訪問者は約204万人だった。
昨年人的住来520万人に
一方、韓国観光公社によると、昨年1年間に韓国を訪れた日本人は274万6754人だった。前年比21・9%減少となったのは円安に韓日関係の悪化が加わったためと見られている。ちなみに、昨年の韓国訪問外国人総数は約1220万人。中国人(約392万人)がトップで、日本人は2番目に多かった。それまでは日本人がトップだった。
訪韓日本人数は韓流ブームが続いていた11年に約329万人と前年比8・8%増加した。李明博大統領の独島訪問と天皇へ謝罪を求めた発言を契機に、両国関係が急速に冷え込んだ12年にも前年比7・0%増加。12年には両国を往来する人々の年間総数が約556万人と過去最高を記録した。
だが、昨年は領土、旧日本軍慰安婦、歴史(認識)問題などで関係が冷えこんだまま、「韓国大統領就任年の韓日首脳会談開催」という慣例にもかかわらず、朴槿恵大統領と安倍晋三首相による首脳会談が開かれなかった。新年に入っても両国関係修復への糸口さえ見えていない。
日本では一部の週刊誌、雑誌を中心に扇情的・刺激的・侮蔑的な見出しと内容で反韓・嫌韓感情を醸成し、韓国との対立を煽るような確信的で敵意に満ちた、類似した特集が繰り返し行われてきた。
一方、韓国では大手メディアの日本関係報道・解説・論説に旧態依然の対日観や認識に基づく、誤報・歪曲が少なからず見られ、国民の対日感情を刺激、対日認識を誤導するにとどまらず、韓国バッシングを売り物の一つとする日本の雑誌・週刊誌に格好の材料を提供し続けている。
双方政治家らによる隣国への配慮を欠いた不用意・不適切な言動も加わり、両国国民の相互不信と感情的対立を助長するような日本の週刊誌・雑誌の特集は、今年に入ってもなくなりそうにない。
この間、経済や文化や人の交流は大幅に拡大している。韓日両国を往来する人が1日当たり約1万5000人に迫っている。とはいえ、相手国を訪問したことのない人のほうがまだ圧倒的に多い。それだけに相手国に対する情報源や影響源としてテレビ・新聞・週刊誌などマス・メディアの力には大きいものがある。
両国で新政権が発足してから1年になろうとしているのに、双方とも対日・対韓の国民感情や「反韓」「反日」意識を考慮し、首脳会談が開けないという異常事態が続いている。
悪化に歯止め歩み寄り推進
こうしたなかで、韓国の峨山政策研究院世論研究センターが世論調査機関のリサーチアンドリサーチに依頼し、安倍首相の靖国神社訪問直後に成人男女1054人を対象に実施(12月29〜31日)した世論調査の結果によると、「日本との関係改善のために大統領が積極的に動くべきだ」(57・8%)が「そうでない」(33・8%)より多かった。
また「首脳会談を開くべきだ」(49・5%)が「反対」(40・7%)を上まわった。「中国の浮上を考慮した韓日安保協力」については「必要」が63・9%にのぼり、「必要ない」は26・2%。「韓日軍事情報保護協定」も「必要」が50・7%を占め、「必要ない」は37・8%だった。
一部メディアでの韓国バッシングがなくならない日本においても、「韓国を最重要な隣国」として、国民同士の交流・協力を推進・拡大すべきだとの声が強くある。
両国のメディアには、不信が不信を呼ぶ悪循環を断つために、重要な隣国に対する相互認識を誤らせる先入観に基づいたり、ステレオタイプ化された報道を排し、両国国民間の相互理解を助け、関係改善促進に向けた有用な判断材料を提供する冷静で丁寧な報道・論評が強く求められている。
(2014.1.29 民団新聞)