「自立阻害」は本末転倒
朝鮮日報掲載の「崔鐘太発言」
「(在外同胞財団が海外同胞団体に支援している金額が)日本に偏重している。アメリカ、中国の同胞社会がさらに大きくなるのに、なぜ日本に偏重しているのか。それが自立を阻害していると思いませんか」韓商連会長を2期務めた崔鐘太氏が朝鮮日報(2月25日付)とのインタビューで語ったものだ。
特殊性を無視
居住者の規模を言っているのだろうか。歴史的背景を抜きに単純に比較できることではない。周知のように在日社会は本国社会の様態の影響を色濃く受けてきた。植民地受難時代には、統治国である日本社会にあって辛酸を舐め、解放後も祖国分断の影響をもろに受け、激しい抗争の歴史を紡いできたのである。
民団は、在日同胞の生活権や人権の擁護をはじめ、行政機関に準じる業務を遂行してきた。ばかりか、日本社会や在日社会が北韓・総連による対韓工作基地となってきた経緯から、祖国安保と平和統一推進の任務が自ずと課せられてきた。この点、民団は他の海外同胞団体と決定的に異なっている。
また、在日同胞社会は民団によって、他のどの海外同胞社会よりもネットワーク化されている。政府支援金は求心体である民団を通じて、広く在日社会に行き渡ってきた。他の同胞社会は統括機関がないため、それぞれのグループとの個別のやりとりになっている。支援金総額は民団が突出しているわけでもない。いずれにせよ、そのことが自立を阻害するとの発言は、ためにするものでしかない。
記事中には「彼は、在日韓国商工会議所が日本政府から公認を受け、免税の恩恵を受ければ韓国政府の支援がなくても同胞社会は自立できる」ともあった。これもそうだ。
読者諸氏が周知のように崔氏は、民団の傘下団体である韓国商工会議所を分裂させ、一般社団法人を設立した張本人である。その一般社団法人に免税措置はない。したがって、その恩恵を受ける公益法人になりたい、ということなのだろうか。しかしそれは、資格取得、運営において厳しい規制がある。
よしんば公益法人を取得できたとして、自在に財政が確保できるという根拠はどこにあるのだろうか。民団には未だ民族的、政治的課題の広範な実践が不可欠であり、民団本体が規制の厳しい公益法人になることはもちろん、商工人組織でも民団と関係のある場合は選択できる道ではなかろう。
公益法人云々は将来、民団の課題が軽減され、親睦的、経済的組織に転換した場合には可能であろうが、現時点においては空想と言うべきだろう。
口先だけでは
「日本全国に韓国人学校は4つだけです。朝鮮総連学校は97カ所です。このような結果は、韓国政府の補助金に依存してきたから」
在日同胞、民団の歴史を多少でも知っていればこのような発言はあり得ない。民族学校は1945年の解放後、全国に相次いで設立された。そのほとんどが朝連に掌握されたのは周知のことだ。
48年の朝鮮学校閉鎖令でいったん衰退したが、55年に朝連の遺産を引き継いだ総連が結成され、民族学校の再建を急いだ。57年には北韓が朝鮮学校への支援を開始し、今日まで累計は460億円にのぼると言われる。
近代の学校教育は、国家的背景なしに設立・維持が至難である。できるのであれば、崔氏自らがまず実践してほしいものだ。政府支援金に依存したから、と言うのは本末転倒もはなはだしい。ちなみに、総連系学校97カ所という数字も根拠が曖昧である。
崔氏の発言は幼稚に過ぎる。無視することも選択肢であるが、韓商連と一般社団法人が統合を目指そうとする今、いたずらに民団を貶めようとする崔氏の意図は理解しかねると指摘しておくために、あえて筆をとった。
(2014.3.12 民団新聞)