「求心力」の強化 多角的に追求
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展望
「修好50年」前向きに…未来創造へ中期課題にらむ
韓国と日本、日本と中国の対立関係が絡み合い、定例化されてきた韓日、日中2国間及び3国合同首脳会談が開かれない異常事態が続いている。安倍晋三首相が靖国神社に強行参拝した昨年末以降、激しい応酬はむしろ国際舞台にまで広がった。
3国はそれでも、関係悪化が極限状態に至ることを望んではいない。ともに、領土と歴史認識などをめぐる自らの立場を強化しつつ、打開への糸口を探る段階にあるとも言えよう。
しかし、現況が長期にわたれば、係争相手国への悪感情の増幅によって国民意識を過度なナショナリズムに傾斜させ、関係改善への政治的な選択肢をいっそう狭めかねない。相互に協調・依存し合う経済面への波及も次第に深刻化しており、世界経済への悪影響も懸念され始めた。
北韓の動向からも目が離せない。内外の専門家の多くは、昨年末から表面化した政権中枢における粛清を急変事態の序曲ととらえ、数年以内に体制崩壊を含む何らかの異変が起きるとの見方を強めている。北韓の大規模な軍事挑発と、いかなる急変事態にも対応する盤石な体制の確立が急がれる。
「国民幸福時代」を目指して「国民大統合」を推進する朴槿恵政府は、この2月25日で出帆1年を迎える。政治・安保分野で域内諸国の相互信頼を築く「東北アジア平和構想」と統一時代への基盤を構築する「韓半島信頼プロセス」の推進が本格化するものと見られる。韓国はその過程で、日中対立の跳ね返りを防ぐ一方、対日関係の改善を探ることになろう。
韓国は昨年、貿易量1兆811億㌦、輸出5709億㌦、貿易黒字607億㌦といずれも過去最高を記録した。なかでも、経済を下支えする経常収支が707億㌦台となり、過去最高と言われた前年の480億㌦台を大幅に上回ったことは注目される。
東北アジア情勢の緊迫は言うに及ばず、先進諸国の景気沈滞や新興諸国の成長鈍化、さらには円安による打撃に加え、内需の伸び悩みなど内部にアキレス腱を抱えながらの実績である。韓国の経済が示した底力は外交・安保分野での発言力のさらなる強化に資するものとなろう。
本団は在日同胞唯一の求心体として、朴槿恵政府との紐帯をより堅固にしながら、内外から付与される使命の遂行に邁進していく。
昨年新設された未来創造プロジェクト推進本部は、今後さらに、中・長期的な課題に対する研究を深め、有意義な提言の準備を急いでいる。
本団は今年、この1年の運動・事業に専心するだけでなく、中・長期的な課題への対応も怠れない。来年は韓日国交樹立50周年と民族解放70周年の節目であり、再来年には本団の創立70周年を迎える。2018年平昌冬季五輪と2020年東京五輪をともに成功させる事業も視野に入れるべきだ。
修交50周年と解放70周年が重なる来年は、韓日間の懸案が再照明され、歴史認識をめぐる論議が熱を帯びよう。現状のまま推移すれば、軋轢(あつれき)はいっそう強まりかねない。
修交から半世紀の間、韓日両国が積み上げた成果は大きく、双方の発展に多大な貢献をした。残された懸案にとらわれ過ぎることなく、肯定的な側面こそ総合的かつ正当に評価されてしかるべきだろう。本団はこの立場から、草の根交流の拡大・深化と政府・国会議員間の相互理解促進に昨年以上の努力を傾け、修交50周年が双方から祝福される環境づくりの先頭に立つ。
創団70周年は、民団再生運動と次世代育成を柱とする民族主体性確立運動を相乗的に成功させ、本団の地力を底上げすると同時に、祖国と居住国それぞれの発展に貢献し、両国の善隣友好に貢献してきた本団の存在感が高まるなかで迎えられるべきだ。本年度の運動・事業に臨むにあたり、この1年がいつになく重要になることを胆に銘じたい。
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重点方針
民団再生運動の拡充
壮年活動者 育成急ぐ…次世代への情報発信強化
《在日同胞の統合》
本団は同胞社会唯一の指導母体として、多様化した同胞を糾合する使命を二つの角度から追求する。
一つに、新定住者団体などを対象に交流を深め、共通課題に連携して対処しながら、統合への環境を整える。もう一つは、戸別訪問を通じて埋もれている総連離脱同胞、日本籍取得同胞を発掘し、組織化することだ。
本団はすでに、各地の韓人会組織をはじめ、駐日企業連合会、留学生連合会と交流の実績を重ね、東日本大震災救援、コリアタウン活性化、韓日親善事業、土曜学校を通じた子弟教育などで連携してきた。生活権確保に関わる長期的な課題にも協働事業を拡大していく。
《地方本部・支部活性化》
団長ら中央本部幹部による支部巡回・対話集会は、主要課題について見解統一を図り、士気を高めることを目的に、過去2年の間に126支部で実施した。その効果を拡大すべく今年度も継続する。
即戦力となる次世代活動者を発掘・育成し、全国レベルで連帯を強化するために、40〜50代を対象としたワークショップを実施する。参加対象は本団支部を中心に、青年会OB、青商、韓人会の役職員にまで広げたい。
特色を活かして《同胞の集まる場》をつくろうと努力する支部に対し、支援金を昨年に引き続き交付する。各支部が新規団員の組織化目標を設定し、戸別訪問と《場》づくりを通じて達成するよう促す。
支部または地方本部の力量から、望ましい企画があっても単独で推進が困難な場合は、近隣の支部、本部と合同で対処するよう支援するほか、応援要員として中央本部担当者を派遣することも検討したい。また、支部事務部長の意欲を引き出すべく、統一教育院研修など各種研修に積極参加の道を開く。
《同胞生活支援》
同胞の日常生活における隘路克服と同胞のライフサイクルに即した各種支援は、本団の根幹事業であると同時に、組織のすそ野を広げる要諦であるとの認識を新たにしたい。「みんだん生活相談センター」は昨年、岡山と宮城本部に設立された。今年度は、需要に応じて優先順位を決め、年内には少なくとも3本部以上に新設し、全国化へ弾みをつけよう。専門相談員による説明会を各地方で開催するほか、必要に応じて巡回相談を実施する。
高齢者に対する福祉では、敬老・慰問活動にとどまらず、本団独自の相互扶助や介護活動を督励するとともに、同胞が関連する各種施設の実態を調査し、適切な支援を行う。
ブライダル事業は地方本部、婦人会、青年会が単独もしくは共同で実施してきており、専門機関に委託する傾向も見える。これら個別事業を支援するだけでなく、効果的な事業推進のため全国的な協力体系を整え、包括的な支援を検討する。
就職斡旋事業は韓商連、韓信協と連携し、駐日韓国企業、優良同胞企業、さらには韓国とつながりの深い日本企業の協力も得る。在日子弟はもちろん、本国政府によるK‐MOVE事業(海外就職支援)とも歩調を合わせ、日本で就職を希望する本国子弟も対象とする。
《同胞経済活性化》
中央商銀信組とあすなろ信組が対等合併し、「横浜中央信用組合」が発足する。6組合体制となる韓信協は、会員組合の結束と経営基盤の強化に大きく前進したいとしている。本団としても、韓商連をはじめ韓食ネット協議会など業界団体とともにこれを積極的に後押しし、同胞経済の活性化につなげていく。
《脱北者支援》
元在日同胞の脱北者に対してはこれまで、一時金支給や関東・関西での交流会実施など、定着支援に重点を置いてきた。今年はさらに一歩前進させ、訪韓団を派遣して本国社会にその存在を知らしめ、国内脱北者団体との交流を図る一方、北韓人権問題に対するシンポジウムや脱北者証言集会を各地で開催するほか、脱北者による自主的な団体の設立を支援する。
《「電子組織」化推進》
ICTを活用して業務効率を向上させ、各級組織間のコミュニケーションを密にするとともに、スマートフォン及びタブレット対応サイト「次世代ネット(仮称)」を立ち上げ、次世代への情報発信を強化する。
ホームページを刷新し、ネット動画の配信を拡充する。本団事業のビジュアルな広報をはじめ、ウリマル・歴史・料理講座などをネット配信することで、一般団員の民族性涵養や組織周辺同胞及び若年層の本団への関心を引き寄せるテコとしたい。
また、民団新聞の普及問題においても、PDF化した紙面をインターネットで配信するシステムを整え、ネット読者を増やすことで過大な負担となっている郵送料削減にも貢献する。
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民族的主体性確立運動
ジャンボリー 過去最多規模で
次世代育成を引き続き重点とするとともに、この運動をより効果的に推進するためにも、既成世代(保護者ら)を対象にしたウリマル使用、民族的歴史観の確立を勧奨する事業が並行されるべきだ。
この分野でも「電子組織」化事業が大きな意味を持つ。
《ウリマル使用勧奨》
本団が運営する韓国語講座は全国で270教室あり、約8000人が学んでいるにもかかわらず、同胞の受講者は相対的に少ない。韓国語教室の拡充を支援しながら、在日同胞班を東京・神奈川・愛知・大阪などで試験的に運営する。
ウリマルの高い習熟度が求められる常勤役職員に対しては、学習を特に奨励し、「韓国語能力試験」の受験を促す。また、「韓国語弁論大会」など発表の場をいっそう拡大する。
《オリニ事業》
隔年開催のオリニ・ジャンボリーを今年は過去最多の500人規模で、ソウル市内を会場に実施する。高い教育効果にかんがみ、より多くのオリニを参加させるべく、従来の支部負担をなくす。
土曜学校・夏季林間臨海学校・冬季の集いを全国半数の支部が単独で、あるいは近隣合同で実施できるよう導く。また、次世代育成事業に参加した子弟たちを年代別にフォローするシステムを講究する一方、MINDAN文化賞への積極応募を促す。
《次世代母国研修》
中学生100人、高校生150人、大学生150人の計400人規模で、3泊4日の日程で夏季に実施する。在日の歴史を中心に学びながら、同世代としての仲間意識を育み、学生会・青年会の組織基盤につなげる。これに付随して、学生会と留学生連合会、日韓学生会議の交流を支援する。
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韓日友好促進運動
《修交50周年対応》
今年が韓日国交樹立50周年の前年であることを強く意識し、市民・住民どうしによる草の根交流の拡充・深化と政府・国会議員間の相互理解促進にいっそう注力する。
昨年も成功裏に終えた「韓日祝祭ハンマダン」は、例年以上に注目されよう。50周年に向けて開催される学術・文化行事に参与・支援する。
《市民・自治体交流》
本団はこの間、10月のマダンや春と秋の野遊会など親睦行事、文化・料理・スポーツを学び楽しむ教室など日本人市民・住民と触れ合う場を拡大してきた。これらを韓日関係の早期修復の必要性を確認し、発信する場として位相を高めていく。仁川アジア大会への共同参観も督励する。
両国の地方自治体や学校単位の姉妹結縁は数多く、その提携交渉やその後の交流にも本団が少なからず寄与してきた。当該自治体・学校と本団の関係を深める一方、新たな姉妹結縁の締結に尽力する。各地日韓親善協会の実態を把握し、本団活動との連動を強めたい。
《平昌・東京五輪支援》
昨年末の韓日・日韓議連の総会で、18年平昌冬季五輪、20年東京五輪の成功へ共同で青少年ボランティア組織を結成するほか、各分野での交流拡大を決めた。在日青少年が参画する道を開き、本団が組織をあげて参与すべきだ。平昌大会については冬季五輪開催地である長野・札幌を中心に、本団と日本市民による独自の後援体制づくりが望まれている。今年度中に下準備を始めたい。
《朝鮮通信使世界遺産登録支援》
本団は、朝鮮通信使顕彰事業(「21世紀・朝鮮通信使ウオーク」、縁故地における各種イベント)を支援してきた。これに加え、韓日の市民・自治体が進める朝鮮通信使をユネスコの世界記憶・文化遺産に登録する運動に全面協力する。
《ヘイトスピーチ対策》
ヘイトスピーチ(憎悪表現)は基本的に、日本人自らが日本社会の問題として解決すべき性格であるとしても、本団の傍観が許されるものではない。日本当局や政党・諸団体に対して、排外主義言動に何らかの規制処置を要望するとともに、日本の諸団体や内外メディアを動員して世論を喚起し、レイシズム集団の孤立化に全力を注ぐ。
《地方参政権推進》
共生社会実現の歩みを止めてはならないとの決意のもと、約20年にわたって積み上げた運動実績を土台に、各政党をはじめ地方自治体、地方議員、国会議員らとの交流を深め、日本社会の理解を粘り強く求めていく。
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創団70周年事業
2年8カ月後に控えた創団70周年に向け、記念事業推進特別委員会を適切な時期に構成すべく準備する。
ただし、民団史の編纂は50周年以来20年ぶりのことであり、作業に時間がかかることを勘案し、「70年史編纂委員会(仮称)」を早期に発足させる。
(2014.2.26 民団新聞)