在日の自負心見せ
選挙人登録増大期そう
親愛なる在日同胞の皆さん。
私たちは第67回光復節をいつになく爽快に迎えました。ほかでもありません。大韓民国が204の国と地域が参加したロンドン五輪で、当初の予想を上回る金13・銀8・銅7を獲得し、米・中・英・ロに続く総合5位の誇らしい成績を収めたのです。
私自身、万感胸に迫るものがあります。
万感のロンドン
わが国が初めて夏季オリンピックに参加したのは、1948年のロンドン大会でした。大韓民国政府が樹立される直前のことです。わが選手団は、太極旗を胸にはしても国としてではなく、米軍政庁下の地域・コリアでの参加でした。貧弱な選手団ながら重量挙げとボクシングで銅メダルを取りました。
それから64年。同じロンドンでの大会に、わが国は1人当たり国民所得2万㌦以上、人口5000万人以上の条件を満たす経済大国「20‐50クラブ」の7番目の国として臨み、総合5位の座についたのです。ここまできた大韓民国を誰が想像できたでしょうか。まさに隔世の感です。
そのようなわが国の雄飛に、私たち在日同胞が大きな役割を果たしてきたことを思い起こしましょう。
ロンドン大会の次に参加したのは52年のヘルシンキ大会でした。もちろん、独立した大韓民国としての出場です。ですがこのときは、6・25韓国戦争の凄惨な戦いのまっただ中でした。この大会でも銅メダル2つを獲得しました。
両大会への韓国選手団の派遣は、在日同胞の熱誠がなければ実現しませんでした。日本を経由して開催地に向かう選手団に、旅費や現地での費用全額からユニフォーム、運動用具一式まで支援し、たとえ小さな羽音でも世界に羽ばたいて欲しい、そんな私たちの願いを託して送り出したのです。
屈辱の植民地支配から解き放たれたと思えば分断され、葛藤の末に建国を果たせば同族戦争によって国土を灰燼に帰される。わが国は人類社会の不条理をいくつも同時に背負った、国と言うにはあまりにも貧しく未熟な存在でした。
だからこそ、大韓民国のオリンピックにかける情熱は格別でした。それは、何があっても屈することなく、国づくりに邁進しようとする信念の表明だったのです。両大会への不可能を可能にしての参加なくして、第2次世界大戦後に独立した新興国で初の、アジアで2番目の五輪を開催することはできなかったでしょう。この88ソウル五輪は、「漢江の奇跡」を遂げたわが国の理念を世界に知らしめ、経済発展にいっそう弾みをつけるものでした。
本団を中心とする在日同胞は、輸出産業の基盤造成、農漁村近代化のためのセマウル運動支援などを通じて「漢江の奇跡」を後押しし、ソウル五輪では100億円を優に上回る誠金を伝達して成功に貢献しました。オリンピックを介した絆は、大韓民国と私たちが一心同体であることを象徴するものです。
世界のモデルに
私たちはいま、大韓民国が世界の強国としての立場を固め、国際的な指導力を発揮する国家へと成長する姿を目の当たりにしています。
96年に先進国クラブのOECD(経済協力開発機構)に加盟し、09年には世界の援助の95%を扱うDAC(開発援助委員会)に正式加盟しました。「援助された国」が「援助する国」になったのも、「20‐50クラブ」入りしたのも、第2次世界大戦後に独立した国では初めてのことです。世界の途上国がわが国を発展モデルにしています。
私は大韓民国の一員であることに、なおかつ、その躍進に一貫して貢献した本団の団員であることに、心底から誇りを覚えます。祖国の独立と発展を導いた先烈と、本団を創立し今日の基盤をつくった先人に対し改めて頭をたれます。
親愛なる在日同胞の皆さん。
私たちと大韓民国の紐帯は、新たな次元に入りました。今年は国会議員選挙と大統領選挙が同年に実施される20年に一度の年であり、団員らが国政に1票を投じる在外国民選挙制度の実施元年です。国政と私たちの距離が一挙に縮まったのです。
ですが、物事は一朝一夕とは行きません。第19代国会議員選挙(4月11日投開票)で日本地域は、在外選挙人登録・国外不在者申告が1万8628人、投票はそのうちの9793人にとどまりました。海外各地と比べれば高い数値とはいえ、決して満足できる水準ではありません。
第18代大統領選挙(12月19日投開票)に向けては自ずと関心が上向き、投票者が増加するのは間違いないと言われてきました。時を追って選挙戦は加熱し、国際世論も日本を筆頭に熱い視線を注ぐでしょう。しかし、7月22日から始まった選挙人登録は10月20日をもって終わります。問題は、本国における投開票日から約2カ月前、つまり関心が最高潮に達する選挙戦の終盤前に、締め切られてしまうことです。
在日同胞の皆さん。なかでも、選挙人登録資格を有する団員の皆さん。
絶対に後悔することのないよう、早めに選挙人登録を済ませましょう。
国政との距離感
私はこの間、各地の民団支部を訪れ、選挙人登録をどう促進するかを中心に対話集会を重ねてきました。手続きの煩雑さに対する不満に加え、国内の政治が自分たちの生活とどう結びつくのかイメージがわかないという声もありました。
その一方で、初めての1票に「やっと国民になれた。胸が熱くなった」と語る同胞が少なくありませんでした。「経済のさらなる発展」「強大国の利害が絡む韓半島問題を主導する力強い外交力」「堅固な安保体制の確立」などを求める見解が多いことにも驚かされました。
在日同胞は、国内の有権者と違って直接的な利害から離れているだけに、自ずと大所高所から判断できる、との自負さえ持っています。国民の一部に過ぎない自分たちの特定の利益より、国と全民族のことを考えているのです。
深刻な北リスク
親愛なる在日同胞の皆さん。
国際社会の未来を展望する世界トップクラスの研究者の多くが、韓国に明るい未来を約束しています。しかし、そこには必ず「北韓リスク」の解消が条件付けられています。実に理不尽なことです。
北韓世襲独裁体制は、核兵器や弾道ミサイルの開発・保有を放棄し、民生と人権を保障する本格的な改革・開放に舵を切り、韓国をはじめとする国際社会の支援を受けなければ、いついかなる急変事態に見舞われても不思議ではありません。
「北韓リスク」をどう管理するのか。次期5年を担う大統領の内外に対するリーダーシップは、過去のいつよりも重要です。大統領に権限の集中する大韓民国の行方は、大統領の理念・資質によって大きな影響を受けます。次期大統領選挙が、国の興亡をかけた決戦と言われるのも無理からぬものがあります。
本団は2月の中央委員会で、16年ぶりに新しい宣言・綱領を採択しました。宣言では「韓半島の分断構造は、南北間の著しい格差拡大や北韓による不条理の蓄積によって地殻変動期に」あるとし、「大韓民国の憲法精神を守護し、在外国民選挙に積極的に参与するとともに、平和統一と先進祖国建設の一翼を担う」ことを謳いました。
在外国民選挙に参与するにあたり、本団は初めて、先進統一祖国の建設を担保する大韓民国の正統性と憲法秩序を否定する勢力、北韓独裁の破壊行為に追従する勢力を許さない、との姿勢を宣明したのです。大韓民国の危機を事前に摘み取り、発展継承を願う団員の総意の集約にほかなりません。
その総意を投票で示しましょう。そのためにはまず、選挙人登録を済ませることです。
ロンドン五輪で見せた大韓民国のはつらつとした姿に自負心を新たにしながら、第67回光復節のこの良き日に、祖国の未来づくりにこぞって参与することを誓いましょう。
(2012.8.15 民団新聞)