国境超えた防災に力
「まち」を守ろう心は一つ
2015年は、あの阪神・淡路大震災から20年目を数える年となる。
この震災で亡くなった方は6000人を超え、その多くの被害は兵庫県に集中した。震災は国籍や性別などを問わず、そこに住む人たちに等しく襲いかかる。
兵庫県に住む外国人も日本人も多くの人が犠牲になり被災した。だからこそ、地域が共に向き合うべき課題として「防災・減災」問題がある。
民団兵庫県本部(車得龍団長)は、震災を経験した県本部として、阪神・淡路大震災20年を迎えるこの年に、震災と向き合う必要性を広く共有するための事業を展開する予定だ。
新年会の場で成人者が発表
まず、兵庫県で毎年開催している「兵庫県韓国人合同新年会」を「震災20年事業」として開催することにしている。新年会は毎年、兵庫県知事や神戸市長をはじめ、国会、県議会、市会議員、そして行政や外国人団体、NGO関係者など150人程度の来賓を含め、400人もの参加者で賑わう恒例行事である。
今回はその新年会を震災20年事業として開催していくというものだ。当日は、震災20年とともに人生を歩んできた成人者を招待する。成人者には「震災と私」と題した作文を事前に募っており、その優勝者が当日スピーチをする予定だ。
また、東日本大震災被災地の成人者を特別招待し、兵庫県と東日本被災地の在日韓国人青年同士が交流し、被災県同士の絆を深めていくことを後押ししていく。ほかにも追悼式を執り行い、鎮魂歌をうたうことになっている。
根づいた呼称「外国人県民」
一方、阪神・淡路大震災は、国籍を超えた地域の助け合いが生まれたことでも有名だ。兵庫県では震災以後、外国人を「外国人県民」と呼ぶようになった。地域共生の理念を含んだ呼称である。
そうして育まれた兵庫県の土壌を原動力とし、このたび、兵庫県、神戸市、教育委員会などの行政と韓国民団兵庫県本部や神戸華僑総会、ブラジル人コミュニティーなどの外国人団体とが共同で実行委員会(合計17団体・実行委員長は兵庫県国際交流協会の齋藤富雄理事長)を構成し、25日に中華同文学校で「つどい 阪神・淡路大震災20年・多文化共生をめざして」を開催することが決定している。
全国で唯一の「防災対策委」
都道府県単位で行政と外国人団体が協力して共同事業を行うこと自体、画期的なことであり、全国的にも注目を集めそうだ。震災で助け合いを経験した兵庫県だからこそ実現した事業だとも言える。
車得龍団長は「私たちが目指す地域共生社会を体現していくのが、今回の『つどい』事業だ。また民団兵庫県本部は、震災の教訓を生かすため全国で唯一『防災対策委員会』を組織し、現在も防災・減災の観点から継続して活動している。その集大成の意味も込めて、この事業をぜひ成功させていきたい」と意気込む。
当日は兵庫県知事や神戸市長が出席する開会式の後「防災運動会」「世界の炊きだし」「国際成人式」「パネルディスカッション」「国際こども音楽祭」「パネル展示」と進行していく。現在、実行委員会メンバーで各部会を構成し、準備作業を行っている。
民団が担当し国際成人式も
民団兵庫県本部も3つの部会を担当し「国際成人式」では部会長を務めている。その国際成人式では、15カ国30人の成人者が民族衣装を着て舞台にあがり、震災20年と自身の20年を重ねた「20歳の誓い」を多言語で読み上げる。
国際成人式の部会長を務める私は「震災を経験していない成人が、震災と向き合い、自らの母国と向き合い、多文化共生社会実現のために心を一つにして誓いを読み上げる。地域共生社会実現を目指す兵庫県が発信する力強いメッセージが、全国に届くはずだ」と確信している。
国際成人式による「20歳の誓い」では「私たちは今日、国際成人式で出会えた仲間とともに、これからも阪神・淡路大震災の刻んだ歴史とともに歳をとり、刻んだ歳の分だけ、この『まち』に多文化共生社会を根付かせていこうと思います。いつか私たちの子ども達にも『語るべき歴史』と守るべき『まち』を引き継げるように…」と結んでいる。
震災の教訓が次代に引き継がれ、地域共生社会へ結実することを期待したい。
(2015.1.1 民団新聞)