在日の希望の光に
韓国人同士のつながり強めよう
白頭学院建国学校教員の李相民さん(33)が、在日3世の立場から韓国大統領選に参与する意義をまとめ、本紙に寄稿した。李さんは在外同胞の国政参政権獲得に尽力した建国OB・故李健雨氏の子息。
亡きアボジ思う
2012年3月28日。自然とアボジ(故李健雨)の顔が思い浮かんだ。
この日、在外同胞たちは、本国で行われる選挙に生涯初の投票をした。国民の基本権である参政権が付与され、在日から韓国人となった瞬間だ。
在日のアイデンティティーと未来を憂慮し、本国参政権を求め、2007年6月28日に韓国憲法裁判所において違憲判決を勝ち取るまでの20年間、ほんのわずかな協力と、多くの無関心と反対のなか戦ったアボジ。どれほどこの日に立ち会いたかっただろうか。
先進国の中でもっとも遅く認められた、韓国初の歴史的な在外投票だが、その結果はというと、世界の例に漏れない結果となり、予想通りだが、大きく期待外れであった。
僕は密かに、在日の特殊性が別の結果をもたらしてくれるのではないかと期待をしていたし、なにより、抑圧され、拠り所がなく曖昧さの中に埋没していっている在日にとって、今回の参政権付与は、希望の光であるはずで、必ずや一定以上の反応があると思っていた。この選挙結果から見えてくるのは、在日の本国への帰属意識の低さである。在日の多くは、日本に住む外国人としての在日韓国人ではなく、読んで字のごとく、韓国人の部分が脱落した在日なのだ。
一体、在日の長い歴史の中で何が失われたのだろうか。僕は、韓国人同士のつながり、だと思う。アボジが在日から韓国人になるために韓国の高麗大学に進学し、学生運動に参加したように。そのアボジの影響で本名を使うようになった人がたくさんいるように。そして、そのアボジさえも、オモニが初めて日本に来たその日、表札に掲げられた通名を指摘され、すぐに市役所で通名を消して韓国名を掲げるようになったように。
誰もが孤島に一人では望む自分にはなれない。それどころか、望む自分の姿がどんなものか想像すらできないことだろう。自分の本来の姿=韓国人であることを気づかせてくれるようなつながりこそが、いま必要なのだ。
同胞の転換点だ
これから先、在日の日本人への同化に簡単に歯止めがかかるとは思えないし、必ずしも全ての在日が積極的に韓国人として生きたいわけではないことも理解している。しかし、差別や同化政策、棄民政策のなか、未だに40万人を超える人たちが〞韓国人〟を堅持している。僕はこの事実の中に、表には見えなくとも、多くの在日の心の奥底にある「韓国人でありたい」という根源的な欲求を見る。 Кстати, вот вам справочник по всем медицинским понятиям, там уже сами смотрите кому надо.
選挙を在日のつながりを回復するツールにし、次世代の子供たちにとって、韓国人として生きるという選択が、より苦悩の伴わない自然なものにできるのではないか。そして、このことが、ハラボジ・ハルモニ・アボジ・オモニが韓国人であり続けた思いに応えることになるのではないか。
僕の勤める白頭学院建国では、国会議員選挙結果を受けてすぐ、선생님(先生)同士で「在日のための学校である建国が貢献できることはなにか」という話し合いが盛んに行われ、中学では、アボジと活動を共にしてきた金信さんに講演を依頼し、高校では文芸祭で選挙に関する研究発表が行われた。投票時に指紋の認証があったことや、在日への配慮が感じられない投票制度など、色々な不満が선생님方の口から聞かれたが、生徒=在日の未来、のためにと積極的に行動される선생님方を見て、民族学校の教育の力に確信と期待を感じるのである。
韓国が先進国の仲間入りを果たすほどに大きな経済成長をとげ、在日は選挙権も獲得した。また、苦境の中、60年もの長きにわたってこの地で積み重ねてきたものもある。選挙権を獲得したことで、与えられ、救済される立場から、思想を、文化を、希望を、外に向けて発信する立場へと。在日はいま大きな転換点を迎えている。在日はもはや弱い存在ではない。
今回の大統領選挙では、200万票を超える在外有権者たちの票の動向にさらに注目が集まる。そんな中で、在日の可能性を示せるような投票結果がでることを強く願う。재일 한국인의 미래를 위해!우리의 항 표를!(在日韓国人の未来のために!われわれの1票を!)
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プロフィール
イ・サンミン 在日3世。1978年東大阪市生まれ。大阪大学卒。現在、白頭学院で数学と理科を教える。
(2012.9.26 民団新聞)