来月、東京で…多様な演目、幻想的に
韓国の伝統芸能と3Dホログラム映像を融合させた日本初の歌舞楽公演「国楽‐風が吹く」が10月15日、なかのZERO大ホール(東京)で開かれる。企画・演出は全羅北道全州市出身で、長年、パンソリ唱者として活躍した金大伊さん(45)。2012年に来日した後、韓日の文化交流を目指す音楽制作会社を設立した。同公演では、新しい風を吹き込んだ国楽の世界を見せる。
公演ではパンソリ、舞踊、伝統楽器の演奏、サムルノリなど多様なプログラムが用意されている。なかでも韓国ではめったに見られなくなった「アリラン連曲」、3人の踊り手しかいない「神剣大神舞」、ボナ(皿回し)の妙技など、日本初の演目も含めてこれらは国楽に精通している金さんならではの選定だ。 国楽に接したのは6歳のとき。母親やいとこたちが伝統楽器を奏でる環境で育った。自身も伝統楽器などを学んだが「一番合うのがパンソリだった」。
国家重要無形文化財第5号「朴綠球製興甫歌」人間文化財の朴松煕氏に師事。全州市の道立国楽院唱劇団と、ソウルの国立中央劇場国立唱劇団で常任団員として数多くの舞台を踏んだ。
12年、サウンドクリエイトを学ぶために来日。3年後、音楽制作会社「Mazinger MUSIC」(東京都新宿区)を設立した。これまで作曲・編曲、韓国の独立映画音楽などのほか、今年2月には韓国人トロット歌手、南珍さんのコンサートを企画・主催した。
「国楽‐風が吹く」を企画したのは「国楽は面白くない、堅苦しい」というイメージを変えたかったから。「国楽も時代の流れに合わせて変わらないといけないと思う。国楽という伝統を基本にして、現代的な要素を入れようと思った」
3Dホログラムは、演目に合った自由な表現ができる。韓国の制作会社に依頼し、昨年3月から準備を進めてきた。心配なのは「お客さんたちが3Dホログラムに気を取られてしまうこと」。
韓国で何度も打ち合わせを重ねた。思考錯誤の末、舞台の背景にある紗幕の部分的に映像を入れることで落ち着いた。舞台の空間を彩る月や足元の花などの映像が幻想的な世界を演出する。
当初、舞台には立たないつもりだったが、パンソリ短歌「サチョルガ」を歌うことに。理由は、韓国での仕事を聞かれたときに「国立中央劇場とかで仕事をしていたと言っても相手は半信半疑。公演に出て、その姿を見せたほうがいいと思った」と豪快に笑う。
国学の魅力は、場所に制約はなく、演者が表現する喜怒哀楽を観客も共有しながら楽しむところだという。「国楽界の第一線で活躍している方たちを日本に招聘して、本場のものを見せたいと思った」
国楽一筋に歩んできた金さんは「国楽は私の運命」と話す。「伝統を守りながらも誰もが楽しめる国楽にしたい。この公演では、今まで日本では見たことのないようなことをやりますよ」
歌舞楽公演「国楽‐風が吹く」 <第1回公演>16時開演、<第2回公演>19時30分開演。料金8000円。なかのZEROチケットセンター(03・3382・9990)10~19時。公演サイト(
http://www.kokugaku.jp)。
(2018.09.12 民団新聞)