掲載日 : [2004-07-28] 照会数 : 7962
<Special Wide>アテネ五輪 韓国の炎ふたたび(04.7.28)
[ 韓国は鉄壁の守備を誇る ] [ ,「今期はアベックメダルを」と必勝を期す女子ホッケー
] [ 李鳳柱
] [ 韓国は鉄壁の守備を誇る ]
総合10位圏復活をめざす
連覇期す男女団体…アーチェリー
「金」争う男女4人…テコンドー
男女ともV狙える…フェンシング
李鳳柱の奮闘期待…マラソン男子
オリンピック発祥の地・アテネで開催される今回の大会に韓国は、376人の選手団を派遣。金メダル13個、総合10位以上を目標に、熱戦を繰り広げる。
まずダントツの金メダル候補は、女子アーチェリーの団体戦。88年のソウル大会でこの種目が採用されて以来4連覇が続く。今回も、オリンピックで勝つより難しいと言われる国内予選を勝ち抜いた尹美進、朴成賢、李成震の3人(写真・左)に死角はない。
84年のロス大会以後、韓国勢の5連覇が続く個人戦も、前回優勝の尹美進と、最近は尹を上回る成績を挙げている朴成賢のハイレベルな優勝争いが予想される。
19歳の新鋭・李成震は、国際試合の経験こそ不足しているものの、オリンピックの個人戦では、ロス大会の徐香順、ソウル大会の金水寧、前回の尹美進と、いずれも10代の新鋭がベテランを抑え優勝しており、旋風を巻き起こす可能性は十分で、メダル独占もある。
団体2連覇を狙う男子も好調で、中でも、高校生の林東賢は、昨年の世界選手権で2位、今年のプレ大会で優勝しており、中心選手としての活躍が期待される。
高校生と言えば、男子エアライフルの千愍は、今年、アテネのプレ大会、ミラノのワールドカップを制し伸び盛り。前回高校生ながら、女子エアライフルで銀メダルを獲得してアイドルとなった姜 賢を上回る成績が期待される。女子エアライフルの徐善花、銀暎(写真)も優勝候補に名を連ねる。
本家の誇りにかけて負けられないのがテコンドーだ。国別枠の関係で4人しか出場できないが、男子の文大成(80㌔以上級)、宋明燮(68㌔級)、女子の黄敬善(65㌔級)、張智媛(57㌔級)の4人は、当然金メダル候補。中でも黄敬善は、テコンドーでは初めての高校生のオリンピック選手。林東賢、千愍とともに「高校生三銃士」と呼ばれ注目されている。
一方、28歳のベテラン文大成は、韓国テコンドー界の看板スターとして負けられない戦いとなる。どの階級も韓国の優位は動かないが、近年、欧州勢が力をつけており、油断はできない。
シドニー大会では金メダルゼロに終るなど、不振が続いていた男子柔道は、昨年の世界選手権で崔敏浩(60㌔級)、李 熹(73㌔級)、黄禧太(90㌔級)の3人が優勝し、復活の兆しがみえてきた。
今回も、この3人に金メダルの期待が集まる。中でも、「一本勝ちの男」の異名を持つ李 熹の鋭い技の切れは注目だ。崔敏浩と3連覇を狙う野村忠宏との一戦は、激しい戦いになるだろう。
過去モスクワ大会を除く6大会連続で9個の金メダルを獲得している男子レスリングは、前回銀メダルの金仁燮(グレコローマンスタイル 66㌔級)と銅メダルの文義済(フリースタイル 84キロ級)にお家芸としての威信をかける。
体重別の柔道やレスリングと違い、フェンシングはリーチの短い東洋人には不利だとされてきた。前回、金永浩が金メダルを取った時も、誰もが奇跡とみなしていた。しかし、韓国でこの4年間、最も著しい成長を遂げた種目だ。今回も男子のフルーレ団体と女子のエペ団体は優勝を狙える位置にある。
男子フルーレは31歳ベテラン金相勲と23歳の新鋭崔秉哲ら新旧の調和が取れたメンバーが揃った。女子エペは、173センチ68㌔と欧州勢に負けない体格を持つアジア大会金メダリスト金煕正を中心に、国際試合の経験豊富なベテランを配し、フランス、ドイツ、中国などと優勝を争う。
96年のアトランタ大会では呂洪哲が跳馬、前回シドニー大会では李長炯は平行棒でそれぞれ銀メダルを獲得している男子体操は、今回こそ金メダル獲得に意気込む。
期待を一身に担うのが、李長炯の愛弟子である趙成敏。趙は昨年の世界選手権は平行棒で5位、中日カップはつり輪と跳馬で優勝するなど急成長を遂げている。今回も種目別の跳馬と平行棒で、体操界悲願の金メダルの期待がかかる。
アーチェリー、テコンドーとともに、絶対的な金メダル候補が、バドミントン混合ダブルスの金東文、羅景民のペアだ。70連勝、14大会連続優勝と、抜きん出た存在だ。前回はやはり優勝候補ながら5位に甘んじただけに、気の緩みは全くない。
このところ、にわかに金メダルの期待が高まってきたのが、男子卓球の看板スター柳承敏だ。最近世界ランキングで3位に上昇し、今大会のシード権を獲得した。このランク、韓国人としては現コーチの金擇洙と並ぶ最高位。シングルスおよびベテランの李哲承と組むダブルスで、最強中国の壁をいかに破るか、対決が楽しみである。
こうしたマイナーな種目が奮闘している半面、男子のバレーボール、バスケットボール、野球といった関心の高い人気種目が本大会に出場できないのは寂しい限りだ。男子バレーボールなどでは、世代交代の遅れが目立っている。
本大会に出場する女子のバスケットボールやバレーボールも状況は同じ。バスケットボールは負傷者が相次ぎ、相当厳しい戦いが予想される。
バレーボールはグループ分けに恵まれたため、決勝トーナメント進出は十分に可能だ。問題は、姜恵美、具正らベテランの負担をいかに軽くすることができるかだ。女子もパワーバレーが全盛の今日、金サニ、韓ソンイら若手の活躍が、銅メダルを獲得した76年のモントリオール大会以来のメダル獲得には不可欠だ。
「民族の魂を受け継ぐスポーツ」として、韓国でマラソンは、特別な存在である。今回も国民的英雄である男子マラソンの李鳳柱に期待が集まるが、34歳のベテランである李にとって、猛暑に加え、アップダウンの激しい今回のコースは、相当厳しいものになる。ただその分、スピードよりも、駆け引きや勝負勘が物を言う可能性がある。今回を「最後のオリンピック」と悲壮な覚悟で臨む李のがんばりに期待したい。
今回も前回に続き、開会式における南北の合同入場が実現する。シドニー大会以後、夏季、冬季のアジア大会、昨年のユニバーシアードと合同入場が続いており、前回ほどの注目はないだろう。しかし、合同入場がそれだけ一般化することは、南北関係の進展を物語るものだ。
次の焦点は、4年後の北京大会に向けての南北統一チームの結成である。南北関係には、どうしても政治的要素が絡んでくる。それだけに、練習や試合を通して、スポーツマン個々の友情と信頼関係を築いてほしいと思う。
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柔道や体操の女子選手注目 北韓出場者
今回、北朝鮮は選手43人に、役員を合わせ77人の選手団を派遣することになっている。
その中で注目は、何と言っても昨年の世界選手権で優勝した女子柔道57㌔級のケー・スンヒ。96年のアトランタ大会で田村(現姓、谷)亮子を破って優勝した時は、あどけなさが目立ったが、最近は北朝鮮スポーツ界のリーダーとしての風格も備わってきた。
女子体操のカン・ユンミは、昨年の世界選手権の跳馬で銀メダルを獲得しており、今回も活躍が期待される。
02年の釜山アジア大会で優勝し、韓国人に強烈な印象を残した女子マラソンのハム・ボンシルは、スピードレースになると勝ち目はない。しかし、今大会の過酷なレース条件のもとでは、ハムの無類の精神力が物を言う可能性がある。
女子選手ばかりが目立つ北朝鮮にあって、男子エアライフルのキム・ジョンスは、2月のアジア選手権で、世界トップクラスの中国を破り優勝しており、本大会での活躍が注目される。
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メダルの線は十分…サッカー男子
23歳以下の選手たちによって競わせる五輪男子サッカー。オーバーエイジ枠で柳想鉄が加わり戦力は整ってきた。韓国はイラン、中国、マレーシアが属して〞死の組〟と言われたアジア最終予選A組を、6戦全勝・得点18・失点0で勝ち抜き、5大会連続7回目のオリンピック出場を決めた。ギリシャ、メキシコ、マリと同じA組に属するアテネ本大会では、欧州選手権優勝で意気上がるギリシャとの初戦が関門だが、メダル獲得の可能性も十分にあると言える。
実際、そのチーム構成は〞史上最強〟と呼ぶにふさわしい。これまでの韓国五輪代表は大学生が中心だったが、今回はほとんどがプロ。高卒、もしくは大学を中退してプロの世界に飛び込んだKリーガーばかりで、崔兌旭、金東進、宰榛、崔成国など、A代表でも活躍する選手が多い。
そんな才能集団に宋鍾国、柳想鉄、金南一らW杯4強戦士がオーバーエイジ(23歳以上。1チーム3名まで可能)として加わるのだ。まさに鬼に金棒だろう。
前回シドニーでは過去最高2勝1敗の成績を収めながら、得失点差でグループリーグ敗退。その雪辱を期し、サッカー種目初のメダル獲得なるか。大いに期待したい。
(スポーツライター 大島裕史)
(2004.7.28 民団新聞)