掲載日 : [2005-01-01] 照会数 : 6211
「在日新世紀」牽引しよう 金宰淑・中央団長新年辞(05.1.1)
共生と和合を基軸に…地方参政権・総連との交流
「共同体」の再構築へ
民団の求心力強める
親愛なる在日同胞の皆さん!
意義深い2005年の新春を迎え、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
昨年は「韓流」というかつてない韓国ブームが巻き起こりました。それまで、韓国に関心の薄かった一般の日本人が韓国のテレビドラマに魅了され、訪韓者数も270万人以上に達したといわれます。
交流を醸成
また、各地の民団が設けた韓国語講座はどこも盛況で、韓日関係の代名詞であった「近くて遠い」という言葉は過去のものになったかのようです。日本ではまた、在日同胞をテーマにした映画やテレビ番組が相次いで製作・放映され、「在日ウェーブ」と呼んでも過言ではない現象が見られました。差別や偏見に苦しんだ1世の時代からすれば、まさに隔世の感があります。
しかし、韓流や在日ウェーブは突然のものでも、降ってわいたものでもありません。韓日関係は善隣友好に向かう力と反発し合う力が絡み合い、交流が増えれば増えるほど摩擦も広がる状況が続いてきました。
民団は韓日関係が極めて険悪な時代から、日本全国で日韓親善協会や日韓議員連盟を設立し、地方自治体や各民間団体の姉妹提携を主導するなど、さまざまな交流を牽引してきました。民団が粘り強く耕した善隣友好の土壌は、両国関係が決定的に悪化することを抑止するだけでなく、今日の韓国や在日同胞への社会的な関心の高まりにつながりました。
恩讐越えて
親愛なる在日同胞の皆さん!
今年は、日本の植民地支配が実質化した乙巳条約から100年、植民地支配の解放から60年、そして日本と国交を結んでから40年という、韓日関係にとって重要な歴史的節目の年に当たります。
私たちは日本で、100年に及ぶ歴史を歩んできました。草創期の1世から代を受け継いだ2世の時代は、生存権をかけた権益擁護闘争に全力を尽くし、法的地位を確固とするとともに指紋押捺制度に代表される数々の行政差別を撤廃してきました。3・4世が同胞社会の主人公になる21世紀は、韓日間の懸案である過去に向き合いつつも恩讐を越え、「在日新世紀」を構築していく時代だと言えます。
今年は「韓日友情年」でもあります。すそ野が広がった韓日相互理解の流れをさらに拡大していくためにも、その基軸である在日同胞の存在感をさらに高めなければなりません。
韓国の亜流でもなく、韓流に便乗するのでもなく、在日のオリジナリティーあふれる文化創造に取り組むと同時に、政治・経済・社会など各分野にもよりいっそう進出していきましょう。在日100年、光復60年の重みを真摯に受けとめ、在日同胞としての自意識を再構築し、同胞の誰もが自己実現の道を切り開く新たな出発点にしたいものです。
在日同胞が日本社会で、名実ともに共生のパートナーとしての足場を確かなものにするためには、民団が長年訴えてきた地方参政権の立法化や、不幸な歴史を二度と繰り返さないための歴史認識の共有が急がれます。
韓国では昨年7月、日本に先駆けて定住外国人に住民投票権の門戸を開きました。韓日両国に定住外国人の地方参政権同時付与を求める韓国・日本・在日同胞のネットワークも結成されました。こうした動きは強まることはあっても弱まることはありません。地域社会の一角を構成し、発展に尽くす定住外国人の選挙権付与を早期に立法化することで、日本が国連常任理事国入りを目指すにふさわしい国になることを願うものです。
資料館急ぐ
歴史認識問題についてはまず、事実を無視も歪曲もせず、近隣諸国条項にのっとった歴史教科書が採択されるよう働きかけます。しかし同時に、私たち自身の歴史を整理し、広く認知を促す努力も並行させなければなりません。年内に「在日同胞歴史資料館」(仮称)を開設し、「在日コリアンの歴史教科書」(仮称)を発行します。
親愛なる在日同胞の皆さん!
北韓が引き起こした日本人拉致問題は解決の展望が見えず、すべての在日同胞に冷水が浴びせられ続けています。さらに核問題は、韓半島や東北アジアの平和に脅威をもたらし、日本為政者の一部によって、真の国際化を阻む口実に利用されるなど、憂慮に堪えない事態を招いています。
私たちは、核問題の解決は対話と交流を通じて可能であるとの立場から、盧武鉉大統領をはじめとする各国指導者の英断と手腕に期待し、引き続き6カ国協議の推移を注視したいと思います。拉致問題については、北韓の為政者と一般の民衆、在日同胞を同一視してはならないことを日本世論に訴え、日本の冷静かつ粘り強い対応を望むものです。
一方、在日同胞社会においては、光復60周年を機に朝鮮総連との和合・交流事業をよりいっそう進展させたいと思います。その積み重ねが両団体間の積年のわだかまりを溶かし、ひいては在日同胞社会を豊かに発展させていくものと確信するからです。在日同胞社会は歴史的、文化的背景を共有する共同体であることを今一度思い起こしましょう。
生活重視で
親愛なる在日同胞の皆さん!そして組織幹部の皆さん!
民団は同胞共同体に基礎を置く機能体です。民団は紆余曲折を経ながらも、生活者団体としての地歩を固め、求心体としての信頼を集めてきました。昨年各地を襲った台風や新潟中越地震の被災同胞に対して、全国の同胞から支援の手が差し伸べられたのも、同胞愛と組織力量に支えられた民団精神の賜物です。
ですが、世代交代や価値観の多様化にともない、同胞社会で組織離れを憂慮する声があるのも事実です。それは逆に、民団は同胞のニーズを常に気にかけてきたのか、むしろ組織が団員離れをしているのではないのか、肝に銘じて検証することを求めています。
民団は昨年秋、組織活性化のための集中活動を3カ月間にわたって全国展開しました。また、支部活動を活性化させるウリ支部ウリチャラン運動を推し進め、11月にソウルで開催した全国支団長交流会でその成果を報告しました。
この二つの運動は本来の目的に向かって、相乗的な波及効果を発揮したと言えましょう。集中活動では中央本部と地方本部、そして支部が一体となって共同活動を展開し、問題意識と実践要領を共有することができました。支団長交流会では悩みを分かち合い、成功事例に触発されました。戸別訪問を通じて同胞の身近な要求に応えていく地道な活動こそ、組織の原点であるとの認識が深まり、各本部・支部でさっそく実践に移されています。
二つの運動は、民団が各級組織の有機的な結合体であることを改めて覚醒させ、多様な事業に立ち向かう幹部皆さんの士気を高めたものと確信します。
民団は今年、基本活動と福祉・教育・文化事業などの継続事業のほかに、歴史的な節目にともなう数々の事業を展開します。また、将来の同胞社会に対応するための規約改正にも着手します。そして、昨年始動した団員ネットを拡充することで、同胞の生活・要求に適宜に対応するシステムを整えます。
親愛なる在日同胞の皆さん!
民団はあくまでチャレンジする姿勢を貫き、完成度の高い組織づくりを目指します。私は全体組織の先頭に立ち、大胆に取り組んでいく決意です。本年が同胞の皆さん一人ひとりにとって、実りある年になることをお祈りしながら、新春のごあいさつといたします。
(2005.1.1 民団新聞)