掲載日 : [2005-01-19] 照会数 : 12526
<社説>同胞新成人の皆さんへ
在日の一員として自己実現に挑もう
全員の出席待つ心
ある民団地方本部の成人式は、新成人本人の参加者数が昨年を上回った。そろいのジャンパーを着て受付、司会、進行を務めた青年会員をはじめ、そうなることは間違いないと踏んでいた関係者でも、参加予定の全員が出席するまで気をもんだことであろう。
青年会会長の開会辞、団長や総領事らの祝辞、記念品贈呈のあと、成人代表がウリマルで答辞を述べた。そして懇親会。民団会館を訪れたのも、国民儀礼をしたのも、初尽くしの新成人が少なくない。主催者側は厳粛ななかにも、ぎこちなさを解きほぐすような心尽くしで応えた。
実はこの日、参加予定者の一人から、会場に向かっているが少し遅れるとの連絡があった。式典は、その最後の一人の着席を待って始められた。会場に居並んだ民団本部や傘下団体役員、支団長らの新成人を見る眼差しは、同席した父母たちに引けをとらないほど、愛おしさを宿しているように見えた。
日本の自治体が主催する成人式はここ数年荒れ気味で、式典廃止論も取沙汰されてきた。民団の場合は、少子化や民族離れなどの影響による参加者の減少傾向に頭を痛めてきた。しかし、相当数の地方本部では、戸別訪問などを通じて団員とのつながりを深め、あるいは式典のあり方に工夫を凝らすことで、減少傾向に歯止めをかけることに成功している。
青年会員の子たち
今年の新成人の対象者は、84年4月2日から85年4月1日の生まれである。民団の行政差別撤廃運動が最盛期にあり、外国人登録証の指紋押捺・常時携帯制度の廃止を求める声が頂点に達していた頃だ。運動の中心を担った青年会員たちは当時、「わが子には絶対指紋を押させない」と叫んだものである。今年の新成人のなかには、当時の活動家の子弟も少なくあるまい。一方、同胞の国際結婚が急増するなかで、日本の国籍法が「父系主義」から「父母両系主義」に改定(84年。施行は翌年1月)されたため、今後は新成人の対象者の多くが韓国籍を持たない現実がある。
民団は成人式に格別な思いを込めてきた。わが子を育て上げた団員父母を慰労し、新成人を激励したいだけではない。大学生や社会人となった同じ地域の新成人どうしが知り合い、民団と繋がりをもつことを機に、意識の上でも在日同胞社会の仲間入りを果たす門出にしてもらいたいからだ。同胞共同体に基礎を置く民団にとってこの思いは、強くなりこそすれ弱まることはないだろう。
一段と重要な意義
日本で「成人の日」が祝日になったのは1948年。各地の民団が成人式を恒例化するようになったのは、60年代に入ってからだ。民団傘下の青年団体が61年に初めて開催して以降、順次全国化していった。その青年団体が63年、「関東一円で今年成人を迎えた僑胞男女三百二十五名に祝い状をおくった」との記事が当時の民団中央の機関紙にある。
そこにはまた、日本社会は成人をあらゆる面でもてなし、また励ましたりして前途を祝うが、僑胞青年らはこのようなところでも冷遇されているため、せめては一人ひとりの前途に福多からんことを祈って祝い状を送ったとある。
このガリ版刷りの祝い状を、今でも額縁に入れて大切に保存している同胞もいるという。民団の成人式は多くの同胞にとって、在日同胞社会の一員として自己実現の出発点になり得ただけでなく、それぞれの人生で忘れ得ない記念になってきた。
青年会の中央会長は今回、そうした自分の経験に基づいた激励のメッセージ(5面に掲載)を、本紙を通じて新成人たちに贈った。18歳から30歳までの同胞で構成される青年会にとって、成人式はますます重要な事業になることをにらんでいる。
最後に、新成人となった皆さんにこの場を借り改めてお祝いの言葉を贈りたい。合わせて、青年会にはせ参じ、多くの後輩に、より素晴らしい成人式をプレゼントしてくれるよう期待したい。
(2005.1.19 民団新聞)