掲載日 : [2019-09-26] 照会数 : 6636
韓日の歌声 千葉に響く 高校生交流、今年も 韓国から
[ ソロ6人とオーケストラと合唱 ] [ うまく歌えたと握手 ]
6人の初顔合わせは、韓国の童謡「故郷の春」の歌声でした。8月22日。成田空港ロビーの片隅で、「歓迎します」と書かれた横断幕ならぬ横断紙を手にした、3人の日本の高校生が歌い出しました。「ナイェ サルドン コヒャングン…」。出迎えられた韓国の高校生3人の所在なさげな表情。3人は仙和(ソウル市)、京畿(京畿道富川市)、桂園(京畿道城南市)芸術高校の2年生です。
戸田志香(とだ ゆきこ)=「響けよ歌声」実行委員会代表
声楽の道に進もうとする日韓高校生コンサート「響けよ 歌声」は今年、3回目を迎え、8月25日千葉市、27日習志野市で開催いたしました。
今回は千葉県立千葉女子高校オーケストラ部が共演となり、プログラムは千葉ではオーケストラと歌いたいアリアやミュージカルナンバー、韓国の童謡メドレー。習志野では韓国・日本・イタリア歌曲、合唱による「アリラン」「あの雲の流れ行くところ~浜辺の歌」など、全く異なりました。
オーケストラと一緒にひとつの曲を仕上げていく過程で、6人とオケの部員85人は、どんどん近しくなります。顔が合えばニコッとしたり、歌詞の発音を教え合ったり、歌い合ったり、肩を抱き合ったり、オケの椅子などの片づけを一緒にしたり、時間がたつにつれ、91人は音楽仲間になっていくんです。
日韓の交流行事がキャンセルされる中での音楽会でした。「何があっても日本で歌いたかった」イ・ヨンジェ君は、帰国後のメールで、「こんなにいい思い出と心を持って帰れるとは思いもしなかった」と。
また、スランプがあったというイム・ジェサン君はこうです。「演奏会にいらした方たちから、ありがとうとか、素晴らしかったと言われ、そのお陰で、舞台に立つためらいと怖さのスランプを克服できたようです」
彼らが来日するまで、在籍する芸術高校からは「日本での安全は大丈夫なのか」、という問い合わせがたびたびありました。成田空港に着いた時の緊張感漂う3人の顔は、日本に対する不安感だったのかも知れません。
音楽会の開催を心配する方は多く、「韓国の子たちは来られますか?」「予定通りに音楽会はできますか?」という電話をたびたび受けました。だからなのでしょう。聴衆はこの音楽会を両手を広げて迎え入れ、拍手は熱いものでした。
舞台袖の6人は、舞台に出るたびにハイタッチ。演奏後、戻ってくると拍手で迎え、握手したり、肩を抱き寄せたり、お互いに喜びを分かち合っているようでした。
日本の高校生は千葉市内の県立高校の生徒です。ある生徒の学校の校長先生は「舞台袖からの出入りが見えるところに座っていたんですが、子どもたちがお互いにボディタッチをしてましてね。いい音楽会にうちの生徒が参加させてもらえて嬉しかったです。ありがとうございました」。
短い期間でしたが、ひとつの曲をオーケストラとの共同作業で紡ぎ、聴衆に伝える。ここで培われたものが、彼らの音楽人生の1ページに刻まれたら、主催者として望外の喜びです。
(2019.09.25 民団新聞)