掲載日 : [2020-08-26] 照会数 : 10640
関東大震災 朝鮮人・中国人虐殺 軍隊、警察の関与隠す
育鵬社版来年度中学歴史教科書
2021年度から全国の中学校で使用される中学校歴史教科書のなかで1923年の関東大震災・虐殺事件がどう記述されているのか。元横浜市立中学校教員の後藤周さんが調査してまとめた。
後藤さんの調べによれば、関東大震災の「流言、虐殺」については7社すべての教科書が記述している。ただし、その記述量には大きな差があったという。最も少ないのが育鵬社版。「虐殺事件」の記述はわずか58字と、学び舎の記述の6分の1以下だった。
しかも「中国人殺害」といった重要な歴史的事実が欠落していたばかりか、虐殺の主体を「自警団など」とあいまいにして、虐殺への軍隊、警察の関与を隠していることもわかった。7社中6社は殺されたのが「朝鮮人、中国人、社会主義者(労働運動家)」と記述していた。
ただし、後藤さんが前回の教師用指導書を見ると、朝鮮人暴動などのデマがあったこと、中国人が殺されたこと、治安当局が当初は朝鮮人暴動を警戒したこともあって殺害事件が各地で起こったことなどかなり正確な歴史事実を解説していた。新しい指導書はまだ出ていないが、教科書記述が変わっていないことからおそらく指導書の内容も前回と同様だろうと後藤さんは推測している。
後藤さんは「指導書ではかなり正確に歴史事実を解説しながら教科書ではそれを書かない、誤った記述のままにする。つまり、知っているのに教科書には書かない(子どもには伝えない)という『意図的な隠ぺい』をおこなっている」と批判した。
追悼文の送付求める
市民団体 小池都知事に抗議文
小池百合子都知事が今年も関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文送付を見送った。小池知事が7日の会見で表明したもの。都立横網町公園で毎年9月1日、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典を執り行っている式典実行委員会(宮川泰彦実行委員長)は17日、都議会内で知事秘書担当課長に抗議を申し入れ、あらためて「追悼の辞」の送付を求めた。
小池知事が追悼の辞を拒否するに至ったのは2017年3月2日、都議会で「虐殺6千人の碑文は根拠がない。日本人を辱しめるもので撤去すべき。追悼の辞送付はやめるべき」旨の質問がなされたため。当時、小池知事は「私自身がよく目を通したうえ、適切に判断いたします」と答弁していた。この年から「犠牲者すべてを対象とする法要で哀悼の意を示しており、個別の形は控える」として、歴代都知事が踏襲してきた追悼の辞送付を拒否するに至った。
(2020.08.26 民団新聞)