韓日、対立より譲り合いを…「コロナ打開」絆深め
2021年辛丑(かのと・うし)年を迎え、在日同胞の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年が皆様にとって良い年でありますよう心より祈念申し上げます。
昨年来、新型コロナウイルスの感染が世界の至る処に拡散し、人類社会に未曽有の危機をもたらしています。コロナ感染の甚大な影響で、私たちの生活、経済・社会活動が大きく制限されました。
私たちはワクチンができるまで当分の間、コロナ・リスクと共存しながら、経済・社会活動を両立させて行く道を取らざるを得ないように思われます。
私は中央団長としてこの間、団員・同胞の健康と生命を最優先する立場からコロナウイルス感染防止対策を最優先し、諸般の事業等を縮小、延期、中止等の措置を取ってまいりました。一方で、団員・同胞が不利益をこうむることのないよう、コロナ対策の活動を先頭に立って進めて参りました。
特に、1人当り10万円の特別定額給付金の支給について、一部に私たちを除外する声が出ていたことから、差別なく付与するよう要望活動を繰り返しました。最終的に私たちの要望が反映され、日本で最も大きな外国籍住民団体である民団が一定の役割を果たすことができました。
また、セーフティネット保証制度から除外されていた遊技業を融資の対象に入れるよう、遊技組合とは別途に、民団として強く要望し実現しました。
各民族金融機関に対しても、同胞事業主への資金繰り支援、相談窓口の設置をお願いし、心よく受けて頂きました。また、最も不足している時に、中央本部をはじめ全国の民団が同胞や関連団体、各自治体にマスク、消毒液を配布することができました。
日本の医療従事者への支援として、不足する医療用具(防護服1万着、フェースシールド8000枚、医療用手袋1万組)を厚生労働省を通じて寄贈し、感謝されました。全国の皆様の支援に深くお礼申し上げます。
皆さん、今年は民団が創団されて75年目にあたります。私たちは力を合わせ、三つのことに力を注いで、今年の民団活動を進めていきましょう。
◆草の根交流に注力
一つは、『韓日関係の改善に力を注ぐ』ことです。韓日友好は私たち在日が最も切実に願っていることであります。私たちにとっては韓国も故郷、日本も故郷です。表層的で政治的意図の見え隠れした反日・反韓には同調しません。何があろうとも、粘り強く友好の交流を続けること、「仲良くしよう」が民団のモットーです。
民団は1946年の創団以来、地域社会で韓日友好親善の架け橋として多くの交流事業を積み上げ、地域の自治体、町内会、市民団体と信頼関係を築いてきました。各種の「日韓まつり」や民団独自の「10月マダン」も定着しています。
今の韓日関係の悪化は、双方の政治が引き起こしたものです。過去の歴史問題で頑なにならず、民間のこと、経済のこと、両国の利益のことを、優先して考えるなら、解決できるはずです。1998年の金大中・小渕パートナーシップ宣言がそのことを証明しています。一日も早く首脳会談を開き、解決策を私たちに示して、安心させてほしいと念じています。
私たちがやることは、地域で草の根交流を地道に継続することです。おたがいに「仲良くしよう」と声をかけ、善隣友好を実践していきましょう。
◆生活と権益を守る
二つ目は、『同胞の生活と権益を守ることに力を注ぐ』ことです。私たちの生活は、韓日関係が良好であってはじめて安心できるものになります。ヘイトスピーチがあるのも韓日関係が良くないからです。良くなればなるほど、ヘイトも、差別も偏見も減っていくものと信じています。
日本では第4次韓流ブームです。『愛の不時着』が昨年の日本の流行語の上位に入っています。政治の遅れを韓流ブームが補っているのが現実です。日本には、日本国籍者も含めると100万人以上の同胞が住んでいます。韓国政府の対応は、在日同胞の死活問題に直結しています。
韓国に親近感を持つ日本の方々も少なくありません。そのことを念頭に対話を進めてほしいと願っています。
この間も、私は両国の政治家の皆さんに関係改善の要望活動を繰り返してきました。日本は経済大国です。輸出管理規制を解除することで歩み寄れば、韓国も徴用工問題の解決に歩み寄っていく道筋ができます。そう訴えてきました。対決よりも「ゆずりあい」、報復よりも「報恩」をもってすれば、まとまるものと信じています。
◆次世代育成を推進
三つ目は、『次世代の育成に力を注ぐ』ことです。
次世代の育成にも韓日関係は影響しています。近代以降の両国の関係史、在日の歴史、現在の情況など、次世代が健全な歴史観を持つことは、健全な未来観を持つことに直結します。次世代が母国韓国に夢を託し、日本に期待できる、そのような韓日関係をつくってこそ、次世代の育成に資するものです。
また、地域住民として東京五輪・パラリンピックの成功に寄与しましょう。寄与することは、次世代の育成につながるものであります。
今年の次世代交流事業、オリニ事業はコロナの影響の推移をみながら、規模を小さくし、実施しやすい地域分散型の事業を進めて行きます。コロナが沈静化すれば、韓国での各種体験セミナーも実施していきたいと思います。
◆家庭訪問を大切に
上記した三つの課業を進める上で基本になる活動は、団員・同胞の『家庭訪問』です。コロナで孤立した同胞の安否を確認し、慰労し、励まし、連帯し、私たちが願っていることを共有することです。マスクや消毒液、韓国食品、民団の情報誌などを持参し、少しの時間でも語らうことです。
私も毎年、地方・支部の役員と家庭訪問をしています。こういう時だから避けるのではなく、こういう時だからこそ家庭訪問をすることです。そうすることで喜ばれ、つながりあうことができます。民団の存在意義も高まります。
私は中央団長として、同胞社会、民団に課せられた諸問題の解決に先頭に立って対処していきます。団員・同胞の生活と権益にとって本当にプラスなのかを基軸に考え、左右にぶれることなく行動していきます。民団、同胞社会の将来を見据えた組織改革にさらに果敢に挑んでいきます。
本年が、コロナに負けず、すべての同胞の皆様にとりまして、幸多い年となりますよう祈念申し上げ、私の新年のご挨拶といたします。
(2021.01.01 民団新聞)