掲載日 : [2020-12-02] 照会数 : 4059
【新刊紹介】庶民派外交官の奮闘記『総領事記 関西で深める韓日交流』
庶民派外交官、呉泰奎駐大阪総領事自ら書き綴った「日記」。「君臨せず人々に奉仕する」「駐在国の市民及び同胞に対し、真心をもって歩み寄る」という基本姿勢がその実直な人柄を映し出す。これは「外交経験を持たない記者出身」という出自によるものだろう。なんのしがらみもない。
目線は低く、そして驚くほど行動的だ。韓日の友好関係を深め、同胞と日本社会が仲良くなれるならばと、執務の合間をみては飛び出す。小田実氏の名著『何でも見てやろう』を思い出した。
管轄地域にある国立総合大学は滋賀大学を最後にすべて訪問した。主要企業もしかり。民団の主要行事にはスタッフと手分けして参加している。2府3県の民団本部に所属する各支団長とは3カ月余りですべて懇談した。呉総領事は「在日同胞社会に対する理解がさらに深まった」という。
好奇心も旺盛だ。滋賀県で渡来人が遺したオンドル遺跡を見学したときのこと。呉総領事は特産の鮒ずしの接待を受ける。食材は韓国のホンオフェ(洪魚膾)に似ていて独特の臭いが特徴。「日本人でも食べられない人が多い。外国人がこれを食べることができれば、どんな日本の食物も食べられる」とされる。苦手と思われる鮒寿司を臆することなく、いくつも堪能したという。
韓国には「反日」はあっても「嫌日」はない。日本では「反韓」よりも却って「嫌韓」がはびこることを憂う。呉総領事は「ある国が相手の国を嫌うというのは奇異なこと。『嫌』という言葉をなくすべくともに努力しよう」と呼びかける。
税別1800円。東方出版(06・6779・9571)。
(2020.12.02 民団新聞)