掲載日 : [2021-01-16] 照会数 : 5533
「カオスな多国籍タウン」新刊
「コリアンタウン」として知られる東京・新宿の新大久保。東京メトロ・東新宿駅からJR山手線・新大久駅までの大久保通り約700㍍とその周辺は表の顔。大通りから一歩、路地裏に入ると韓国の匂いは少なくなり「カオスな多国籍タウン」の様相を見せる。
まず、神様がいっぱい。地域住民の氏神となっている小さな神社ばかりか、韓国系を中心とするキリスト教会、そしてモスク(イスラム教の礼拝堂)まで。
もう一つ、生活のインフラとして欠かせないのが「送金会社(リミッタンス)」。新大久保ではなんとコンビニの数よりも多いのだという。
本書は新大久保に興味を持って3年前引っ越してきた著者が、生活者とし見聞きした1年間を記録したルポ。著者でライターの室橋裕和さんによれば実際に暮らしたからこそ見えてきた興味深い事実も多い。
例えば人種の混在だ。
新大久保で一番にぎわう「イケメン通り」のとある韓国料理店は、新大久保で新たな一大勢力をなしつつあるベトナム人が経営する。スタッフはベトナム人と韓国人のごちゃ混ぜ。日本語でコミュニケーションをとって日本人女子を出迎える。
一方、韓国籍の朴相範さんはというとべトナム人向けのフリーペーパーを発行している。
国境を超えて地元・新大久保商店街振興組合の活性化に取り組む「インターナショナル事業者交流会(通称 4カ国会議)」は、4カ国合同の「新大久保フェスティバル」を成功させたばかり。
室橋さんは「いまは海外旅行に行けませんから、新大久保で世界旅行はどうでしょう」と呼びかけている。
税別1600円。辰巳出版(03・5360・8064)。
(2021.01.15 民団新聞)