掲載日 : [2022-07-06] 照会数 : 3503
川崎・桜本で撮影22年、ハルモニ「ふたつの物語」今秋公開へ
金聖雄監督
日常のゆたかさ「たんぽぽとマヌル~記憶のかけら」
平和への願い「ヘイトとの闘い~絶望から希望を」
【神奈川】川崎市南部の同胞集住地、川崎区桜本を舞台に在日同胞のおばあさんたちのほのぼのとしたゆたかな日常を描いた映画「たんぽぽとマヌル~記憶のかけら」(物語1、仮題)と、ハルモニたちの平和への願いを託した「ヘイトとの闘い~絶望から希望を」(物語2、仮題)の制作が進んでいる。在日2世の映像制作者、金聖雄さん(59)が1999年から22年間、現地でカメラを回してきた。映画は今秋の公開をめざしている。
「花はんめ」続編
「ふたつの物語」は04年公開のヒューマンドキュメンタリー「花はんめ」の続編。同作品は80歳を過ぎてようやく手にした温和な日常をエンジョイする在日のおばあさんたちの姿を捉えた。50年ぶりのプールではしゃいだり、パワフルなロックのリズムに乗せて「アリラン」を歌い踊る姿はチャーミングそのもの。第78回キネマ旬報映画ベストテンに選ばれるなど大きな反響を呼んだ。
映画に登場したおばあさんたちはその多くが鬼籍に。世代交代したおばあさんたちは15年9月、安保法案成立をなんとか阻止しようと、地元桜本で800㍍をデモ。「戦争反対」「平和が一番、平和守れ」とささやかながら声をあげた。
いざ、その2週間後に法案が成立すると意趣返しなのか、ヘイトスピーチが激しくなっていった。これに対して敢然と立ち向かう川崎市ふれあい館職員、崔江以子さんの姿を見て新たな映画作りを志すようになったという。
金監督は「はんめたちは戦争の記憶をたどりながら語り、ヘイトに怒りの作文を書き、故郷を思い絵を描き、生きた足跡を必死に残そうとしている。一方、川崎で指紋押捺制度、国籍差別などの民族差別と闘ってきた若者たちが最前線でヘイトと闘っている。ふたつの物語は絶望のなかから希望を求め、見出す人たちの物語。在日がなぜ『日本に在る』のか歴史を含めて描きたい」と話している。
金監督は大阪市鶴橋生まれ。学生時代はロックとサーフィンに明け暮れたが、卒業後はテレビを含む映像の仕事に就いた。
記録映画「戦後在日50年史『在日』」(97年製作)では呉徳洙監督の下で助監督を務めた。
(2022.07.06 民団新聞)