掲載日 : [2018-07-25] 照会数 : 6889
韓国の伝統芸能、日本で普及…金福実さん9月にパンソリ公演
[ 東京学芸大学での公演 ]
[ 金福実さんの人柄と芸の魅力について語る黒川妙子さん ]
韓国の伝統芸能を日本で広める活動と後進の育成に努めてきた金福実さんの公演「韓国パンソリの風‐国楽ひとすじの人生」が9月8日、ティアラこうとう小ホール(東京・江東区)で開かれる。公演を企画したのは、韓国文化院(東京・新宿区)で開かれている韓国民謡体験講座で、金さんが指導している黒川妙子さんと佐藤結さんの2人。「金先生のパンソリをゆっくり聞いてもらいたいとの思いがあった」と話す。
「多くの人に聞いて欲しい」 教え子が準備に奔走
黒川さんが金さんと初めて会ったのは、2014年10月から始まった同院下半期の韓国民謡体験講座(6カ月全16回)だ。金さんが指導する受講生の一期生として、パンソリと韓国民謡を習った。
「パンソリをやれることに驚いた。パンソリというのはすごく遠くにあって、面白いけれども玄人がやるもので私には彼方の星だった」
金さんはソウル生まれ。幼い頃から韓国伝統芸能を学んだ。その後、人間文化財23号の姜貞烈さんに伽倻琴散調、伽倻琴併唱を師事した。
韓国全州第25回大私習大会入賞(99年)、南原春香祭国楽大会伽倻琴併唱部門最優秀賞を受賞(01年)したほか、全羅北道無形文化財第2号「パンソリ水宮歌」の履修者でもある。
80年代半ばに来日し、東京・荒川でパンソリ保存研究会関東支部、金福実国楽研究所を開設した。それまで金さんは集団で日本人に指導したことはなかったという。 「金先生は最初から気持ちよく教えてくれて、こっちに感動を与えてくれた。『日本人でも一生懸命、韓国の文化を愛して一緒に学んでくれる』と先生魂に火がついた」
金さんは、受講生が韓国語ができなくても実践で覚えさせた。「最初は本当に落ちこぼれだったのでいつ辞めようか、行くのは嫌だなとかの繰り返しだった」
受講生たちに弾みがついたのは、日ごろの成果を披露する文化院主催の発表会だ。金さんはこの日のために韓服の手配から全てをお膳立てした。
「ある程度、うまくいったんです。私たちも嬉しかったし、先生も大感激してくれたことが大きかった。そのとき、続けてもいいかなと思った」
受講生にとって金さんは大きな存在だ。「芸に注ぐ情熱とたゆまぬ努力。それと私たちにそれを教えようとする力がすごい。その情熱に押されてここまできた」
これまで金さんの公演には伽倻琴演奏も舞踊もあった。それは韓国の文化に対する関心が低かった時代に、いろいろなものを見せないとお客さんは満足しないという意識を持っていたからだ。
「パンソリは一つのドラマだから面白い。先生自身の芸の魅力は、若いパンソリ唱者とは違う」。佐藤さんは「伝統文化の塊のような金先生との出会いによって、それまでどうしても実感できなかった『恨』という言葉の意味が少しだけわかったような気がしている。エネルギーに満ちた先生の力強い歌を一人でも多くの方に聞いていただきたいと思いながら公演のお手伝いをしている」と話す。
以前、金さんから班長に任命された2人は、公演当日に向けて準備を着々と進めている。
「金福実 韓国パンソリの風」 19時30分開演。前売り4000円、当日4500円。チケット予約は金福実先生の公演を成功させる会(090・6505・1782)。
(2018.07.25 民団新聞)