掲載日 : [2018-08-15] 照会数 : 7537
反差別と人権テーマ「部落解放文学賞'在日同胞2世が入選
[ 高校生時代の体験を小説で昇華した方政雄さん ]
小説部門 『ボクらの叛乱』
在日同胞2世、方政雄さん(67、元兵庫県立高校定時制教員)の自伝的な小説「ボクらの叛乱」が第44回「部落解放文学賞」(同実行委員会主催)に入選した。
舞台は1960年代の後半。主に阪神間で「部落」や「朝鮮」という被差別の立場に置かれた生徒たちが、「私らのこと知っているのか、差別に負けないどんな教育してくれるのか」と、教師・学校に迫った。方さん自身、高校時代にこの「一斉糾弾」に加わった一人だ。当時の「くすぶった思い」をいつか小説の世界で「昇華」させたいと温め続けてきたという。
尼崎市にある工業高校3年生の吉川昌明こと崔昌明が主人公。成績優秀で大企業の就職試験を学校推薦で受ける。学校推薦であれば、その企業が不採用にしたことは一度もなかった。結果は「採用見送り」に。
彼の担任や民族差別問題に取り組もうとする教師たちは校内の在日朝鮮人生徒に呼びかけ、集まりを持つ。崔はその場で「本名宣言」。最後は自分の都合で授業を怠けたり民族差別的発言をする教師を問いただすところで終わる。
審査にあたった一人で作家の佐伯一麦さんは、「昭和40年代を生きている高校生たちの姿が、非常にいきいきと描かれている。就職差別があったり『武井』や同じ在日の『金』とのエピソード。このあたりは、こちらの感情を揺さぶられるような光景があった。ある種青春小説といってもいい作品」と評価した。
同賞実行委員会代表の鎌田慧さんは「創設以来、反差別と人権の拡大をめざし、ひとびとに生きる希望をあたえる作品が選ばれてきたことに、ほかにはない重要な特徴がある」と書き記している。
入選作と選評は『部落解放』7月増刊号に収録されている。問い合わせは解放出版社(06・6581・8542)。
(2018.08.15 民団新聞)