掲載日 : [2018-08-08] 照会数 : 6729
発達障害の美術作家を支える…日本で初の展覧会
[ 思いを語る朱祥希さん ]
[ 「猫」キム・ソンテ作 ]
[ 「ロボット」パク・テヒョン作 ]
韓国在住の在日2世、朱祥希さん…7~19日に近江八幡で
韓国在住の在日韓国人2世、朱祥希さん(62)が代表理事を務めるNPO法人発達障害者青年作家支援奉仕団体「アトリエ・プレイトゥギャザー(APT)」(韓国京畿道龍仁市水枝区)は今月7日から19日まで日本で初めての展覧会「アトリエ・プレイトゥギャザー展‐コギリの7人」をボーダレス・アートミュージアムNO‐MA(滋賀・近江八幡市)で開いている。アトリエは、発達障害を持つ青年美術作家たちの共同作業場として2014年12月にオープンした。
「純粋な作品もっと評価を」
展覧会には、左耳に障害がある高校1年生から30代までの作家6人と朱さんの作品を含む約40点が展示されている。作品は個性的な感性が光る。
現在、APTで作業をしている作家たちは、幼い頃から絵を描いてきた人たちで個人的な活動もしている。朱さんがAPT~設立したのは、高校卒業後、芸術、美術製作に才能を持つ人たちを受け入れる教育機関がほとんどなかったからだ。
今、韓国では発達障害者に対する支援や施設建設に力を入れているが、それは「支援をしなければいけないから支援をするという感じ」。朱さんが思い描く理想の姿は、日本でよく行く東京・立川の街の風景だ。
「健常者も障害を持つ人も一緒になって生活しているというのは、街を歩いただけでも感じ取れる。でも韓国の場合はまだそういう雰囲気にはなっていない」
APTではさまざまな支援活動を行ってきた。1年に1回開く展覧会では「『うまく描いているね』という感じで一つの芸術、ひとつの美術作品として評価はあまりしてくれない」。発達障害者の美術作品を見る視点と一般の人たちの作品を見る視点との間にある大きな隔たりに歯がゆさを感じてきた。
今回、日本で展覧会をしようと思ったのは、発達障害者を対象にした支援団体や集まりなどの多様な土壌があるからだ。 「彼らの作品を日本に持って行けば分かってもらえるんじゃないかという思いが強かった」
朱さんは静岡県清水市出身。高校卒業後、梨花女子大学美術大学陶芸科、韓国外国語大学通訳大学院卒業後、韓国人男性と結婚。夫とともに約16年間、パリで暮らした経験がある。
10年ほど前、焼き物を指導するために出向いた施設で初めて発達障害の人たちと出会い、そして驚かされた。
「純粋で偽りのない作品は、彼らだけの世界の中で生まれる。それがすごく感動的で多くの人たちに作品の素晴らしさを知ってほしいと思った」 APTは、朱さんの焼き物工房のあった場所を借りて始めた。朱さん以外の立ち上げメンバーは作家の保護者たち。一般、専門家ボランティアたちとともにサポートしている。「最近、組織作りに参加する人とか技術指導を一緒にしようという方とか、一人ひとり増えている」と嬉しそうだ。
日本の開催が決まったことについて朱さんは「これが最初で最後ではなくスタートなんだって思いたいし、個人的な欲を言えば、日本の各地で展覧会ができればという願いはある」。最後に「韓国でも障害のある人たちが頑張っているというのを皆さんと分かち合いたい」と思いを語った。
展覧会「アトリエ・プレイトゥギャザー展-コギリの7人」
8月7~19日開催。10~17時開館。13日休館。無料。会場問い合わせは同ギャラリー(電話/FAX0748・36・5018)。
(2018.08.08 民団新聞)