外国人の新たな在留管理制度がスタートしてから3カ月余り。法務省の担当部署は事前の想定をはるかに上回る外国人登録原票に係わる開示請求を受けて、悲鳴を上げている。昼間は請求を急ぐ問い合わせの電話に追われ、ほとんど仕事にならない。1日でも早く開示請求に応えようと、常勤者は夜を徹して作業しているという。
相続、車の買い換え、登記…
1日150件 法務省が悲鳴
法務省によれば現在、外国人登録原票に係わる開示請求は1日平均150件、多いときは200〜300件にのぼる。1週間平均では700〜800件ほど。職員18人が作業にあたっているが、「対応が追いついていない。われわれ法務省側の対応が遅いからと昼間は督促やクレームの電話をもらい、その対処でさらに作業が遅れるという悪循環。結局、夜になってから9人の常勤者だけで作業している状態」という。
当事者が外国人登録原票のコピーが必要になるのは相続や車の買い換え、登記のときなど。「住基法」による住民票が交付されるが、外国籍住民となった日は、「平成24年7月9日」。7月9日より以前の居住履歴は一切記載されない。仮に過去の居住履歴などが必要なときは直接法務省への請求となるのだ。
東京・墨田区に住む在日同胞の元教員、Sさん(74)は親戚筋の在日同胞1世に頼まれると学校の夏休みを利用し、韓国国内の不動産売買や相続の手続きなどを手伝ってきた。ボランティア歴はもう20年近い。依頼者の外国人登録済証明書を取るのはいつも出発直前になるのが習わしだった。
外国人登録原票に係わる開示請求のため今月、法務省を訪れたSさんは、窓口で1カ月近くを要すると初めて知り、思わず逆上していた。予約していた飛行機便をキャンセルしなければならなかったばかりか、苦労してあらかじめ確保しておいた書類が発給から3カ月を過ぎて一部無効になる可能性も出てきたからだ。
外国人登録原票に記載されている個人情報の開示は法律上、請求を受けてから30日以内と定められている。しかし、法務省の担当者は、「法律に縛られず1日も早く出したいのはやまやま。だが、請求数はわれわれの想定をはるかに超えた。どうしても1カ月過ぎるときもある」と、お手上げの表情。
現在は18人で対応しているが、当初はもっと少なかったという。昼間の電話に応対するコールセンターを設けるため、さらに人材の補充が必要になったと法務省の担当者は話している。
(2012.10.24 民団新聞)