民団会館を心の拠り所として文化活動に励む動きが各地で定着しつつある。婦人会広島本部のチャンゴサークルは今年で結成から10年。民団埼玉本部の「書道・絵手紙教室」も10年以上の歴史を誇る。いずれも、婦人会の活性化に一役買っている。新たに、婦人会奈良本部でも民謡・舞踊教室を開講した。
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息長く今年で10年目
チャンゴサークル…婦人会広島本部
【広島】「クンタタ、クタクン、クンタタ、クタクン」。どこか郷愁を誘うチャンゴの音色が広島韓国人会館の館内いっぱいに響き渡る木曜日の午後。練習に励んでいるのは婦人会広島本部(文松子会長)のチャンゴサークルメンバーだ。
結成から今年で10年を迎えた。この間、サークルに関わった会員は述べ100人を超えるという。
当初のメンバーは10人だった。同本部会長として今春まで6年間、サークルを見守り、育ててきた宋姫子常任顧問は、「よく10年も続いたと思う」と感慨深げな表情を見せていた。現在は常時、20人余りの会員が月3回、熱心に通ってきている。
結成当初から指導にあたっている学泰さんは、「婦人会のメンバーがチャンゴを習いたいという欲求は、たとえれば、乾いたのどを潤す水を渇望しているかのようだ。それがひしと伝わってくるから、教えがいがある」という。
日ごろの練習の成果は毎年、広島フラワーフェスティバルで披露し、多数の市民から喝采を浴びてきた。民団主催の敬老会や日韓親善協会のお祝いの席でもいまや欠かせない存在となっている。
10年前、サークル開設を熱心に呼びかけた李玉子さん(婦人会広島本部文化次長)は、「小さいころからチャンゴをたたいてみたかった」という。いまは月3回の練習を楽しみにしている。幼少のころからチャンゴの音色に親しんできたという李恵子さん(同文化部長)も4年前、サークルの存在を知って一目散に飛び込んだ1人。
文会長は、「チャンゴサークルは婦人会の活性化にもつながる。これからも継続していきたい」と話していた。
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組織の活性化に一役
書道・絵手紙教室…民団埼玉本部
【埼玉】民団埼玉本部の「絵手紙教室」はわいわい、がやがやといつもにぎやかだ。習い事をしているというかしこまった雰囲気はなく、筆を動かしながら自由におしゃべりも楽しんでいる。
モチーフはピーマンやアスパラなどの野菜、果物、季節の花といった身の回りのものから選んでいる。ここではうまく描くというより、自分らしさを大事にしている。線引き用の筆に墨をたっぷりつけ、ゆっくり輪郭を描くと、顔彩を使って手早く色を置いていく。
できあがると、「ピーマンに見える?」などと隣同士で見せっこが始まった。金愛子さんは、「自分の見たものを、見たままに描く」と言う。もとより「ヘタでいい、ヘタがいい」のだ。朴英子さんは、「幸せを感じます。ただ、ただ、感謝です」と心の底から楽しんでいる様子。
絵手紙教室は婦人会埼玉本部の鄭京子常任顧問が会長当時の10年、自ら発案してスタートした。講師には油彩が専門の鄭光子さんを招聘した。鄭光子さんは受講生の作品に彩色を加え、最後の磨きをかけて仕上げる。時にはポケットマネーをはたいて、作品を飾る額縁をプレゼントすることも。
鄭常任顧問は「婦人会の輪が少しずつ広がっている」と絵手紙教室の効果を喜んでいる。
絵手紙に先だって、書道の教室も同時開講している。書道は「文化の振興」を目的に、民団の呼びかけで始まった。絵手紙より歴史が古く、すでに10年近い。講師は一心書道会師範の資格を持つ金敬淑さん(婦人会埼玉本部顧問)。金さんも「一生懸命に。でも、楽しみながら」をモットーとしている。会員の声を聞くと「ほめ上手」のようだ。
発案者でもある景民杓埼玉本部団長は、「民団と縁の遠かった新規定住者も、書道や絵手紙をきっかけに民団会館に足を運んでくれるようになったのがうれしい」と話している。
毎月2回の開催。受講料無料。登録会員25人が毎月2000円ずつ持ち寄り、講師を囲む年1回の1泊旅行と、送年会の開催費用としている。
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まずは腹式呼吸から
民謡・舞踊教室…婦人会奈良本部
【奈良】婦人会奈良本部(李鍾任会長)は14日、「民謡・舞踊教室」を同韓国人会館で開講した。講師には韓国伝統芸能研究家の申雅子さんを迎えた。
初日は受講生3人が参加した。申講師の指導はまず体をほぐして血液の流れをよくしていくことから始めた。民謡を歌うのには腹式呼吸が絶対に必要という。息を吸っては吐く腹式呼吸を何度も繰り返した。これは新羅時代から伝わるものだという。
韓国人が悲しい時に胸を平手で叩く動作をするが、これは心臓を叩いて血液の流れを良くして気持ちを癒すためであるとされる。申講師は「2世は1世と同じような手足の動きはできないが、1世の気持ちが伝わるように楽しく練習していきましょう」と呼びかけた。
李会長は、来年の婦人会研修では「セタリョン」を歌えるように1年かけて練習をしていきます。まずは今年の敬老会や韓国語弁論大会で披露できるように韓国民謡を練習していきます。受講者も増やしていきます」と話した。
梁愛子さんは、「息を吸って吐いていると、体が熱くなってきました。新陳代謝をよくして歌うのがいいことを教えていただきました。努力して韓国民謡を身につけていきます」と話した。このほか、歌いたい民謡としては「恨5百年」「珍島アリラン」などが候補に上がっている。
1カ月2回の練習、基本は水・木だが、その時によって練習日が変わることもある。受講料は無料。
(2012.6.27 民団新聞)