掲載日 : [2019-05-11] 照会数 : 10304
多様な文化を日本に伝え40年…韓国文化院の歩み
[ 韓国映画の野外巡回映写会(1979年) ] [ 朝鮮通信使特別展(1985年) ] [ 「スーパースター・フロム・ソウル」(赤坂BLITZ・1999年) ] [ 四谷新庁舎開院記念式で告祀を取り行う柳仁村文化体育観光部長官(2009年) ] [ 多数のアマチュアカメラマンを集めた「チマ・チョゴリ日韓親善撮影会」(1980年) ] [ 現在の韓国文化院の外観(東京・四谷) ]
韓国の多彩な文化を日本へ紹介してきた駐日韓国大使館 韓国文化院(黄星雲院長)が5月10日、開院40周年を迎えた。同院は東京・豊島区池袋のサンシャイン60ビル(1979~95年)、港区南麻布の韓国中央会館別館(95~2009年)、2009年5月、新宿区四谷の新庁舎に移転し現在に至る。40年にわたって各種講演会や展示会、映画上映会などの事業を主催、後援してきた同院の歩みを紹介する。
朝鮮通信使の存在に光
サンシャイン60ビルの5階に開院した同院は、サランバン、ギャラリー・ホール、セミナー室、語学ラボ教室、映写室、ラウンジ、事務室、回廊と図書室を有し、文化紹介活動を始めた。
開院記念行事として「韓国の古刺繍展」の開催を皮切りに、講演と実演「男寺党の人形劇」、韓国関連図書を紹介する「本で韓国を読む」、韓国語講座、韓国映画上映会、文化講演会、展示会などを行った。
韓国映画の上映会は現在も続く人気プログラムの一つ。
開院から16年間、同院で韓国と日本の文化交流に関わった常任専門委員の大国未津子さんは著書『韓国文化院での16年 韓日の文化交流』(サイマル出版会)で、「この間20余年、休みなく韓国映画の上映を続けた結果、多くの韓国映画ファンを生んだ」と記している。79年9月には「韓国映画の野外巡回映写会」を4日間実施し、大きな反響を得た。
広報事業の一つとして、月刊紙「韓国文化院友のニュース」を制作して配布。韓国の文化全般を紹介する「月刊韓国文化」(自由社)も創刊、監修した。
80年には、サンシャイン60スペイン広場で「チマ・チョゴリ日韓親善撮影会」を開催。「美人が集まる」という噂を聞きつけた一般人やアマチュアカメラマンの男性が大挙して押しかけた。
さらに、韓国政府樹立35周年を記念する「韓国伝統芸術団」訪日公演、「新羅千年の美~韓国古代文化展」、日本国内で大々的に行われた「朝鮮通信使特別展」など院内のイベントだけではなく、外部の文化施設でも事業を行った。
同院では朝鮮通信使について何度も文化講座を開いている。81年5月の「朝鮮通信使の足跡」について大国さんは本書で「朝鮮通信使なるものがどのようなものであったかを、知らない人があまりに多かった」と指摘。
「だが、1990年の春と秋に行った文化講座『朝鮮通信使』では、超満員の出席者。それらの人びとのほとんどが、朝鮮通信使とはなにか、について知っていたという事実が判明した」と著している。文化講座を通じて、朝鮮通信使の存在を日本に広めたことは同院の大きな功績の一つといえる。
第3代・尹鐸同院院長時代に職員になった原田美佳さんは「春・秋の文化講座は考古学や渡来人など、日本人が目を向けてこなかった空白の歴史を扱い、人気があった」と話す。
ソウル五輪機に交流拡大
韓国文化が注目を集めたのは、86年アジア競技大会、88ソウル五輪の開催が決定してからだ。同五輪開催以後も「唱劇沈清伝」公演、KBS交響楽団演奏会などを開いた。
麻布時代は、文化芸術以外にも観光イベント、スポーツ、青少年交流など多様な分野の交流事業をサポートした。創作オペラ「春香伝」、李方子遺作展示会、韓日古典芸能祭などの会場は、多くの来場者でにぎわった。 両国の文化交流は、98年の日本の大衆文化開放(第1次開放)以後、飛躍的に拡大した。99年は韓国のCLON、オム・ジョンファなど4組のトップアーティストを招聘した「スーパースター・フロム・ソウル」コンサート(赤坂BLITZ)の開催をきっかけにK‐POPが注目された。FIFA韓日共催2002年ワールドカップの開催が決定してからは、韓日でさまざまな文化芸術活動をしようという機運が高まった。
2000年に入ると、東京国際映画祭協賛企画「コリアン・シネマ・ウィーク」映画祭、「2002年韓日国民交流の年」記念行事、「話してみよう韓国語」大会、「韓国のお正月の風景」展、「K‐POPコンテスト」及びクムホ・アシアナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会、韓国語教育機関「世宗学堂」を創設するなど新しい行事を手がけ、その多くが現在も人気行事として親しまれている。
また、韓日両国の市民を一つにする最大のまつり「韓日祝祭ハンマダン」は、05年の韓日国交正常化40周年を記念した「韓日友情の年」の主要事業としてソウルで始まった。
同年1月25日、東京の国立代々木競技場で開催された「韓日友情の年」開幕式には、1万人を超える応募から当選した2500人が参加した。09年からは毎年、ソウルと東京(日韓交流おまつり)として開催している。
そして、念願だった自社ビルである四谷の新庁舎移転後も、韓国観光公社や韓国コンテンツ振興院など関連団体とともに、時代の変化や求めに応じながら両国の相互理解に努めてきた同院の役割は、今後ますます重要になっていく。
(2019.05.10 民団新聞)