掲載日 : [2019-06-26] 照会数 : 7397
孫基禎さんのマラソン人生、日本人俳優が一人芝居で代弁…
[ 小金井宣夫氏 ] [ 公演は28日、足立区で ]
日本人俳優「哀しい勝利」
1936年ベルリンオリンピックのマラソン競技に出場し、金メダルを獲得した孫基禎さん。生涯最高の感激を味わいながらも、日の丸を胸にして表彰台に立つ孫さんに笑顔は見られなかった。国の亡い悲しさと悔しさにじっと頭を垂れ、涙をかみしめていた。その計り知れない苦衷を俳優の小金井宣夫さん(75)が「一人芝居」で代弁する。タイトルは「スルプン・スンニ(哀しい勝利)~もうひとつのオリンピック話」とした。
舞台には小金井さんがひとり立ち、写真や動画を交えながら約90分間、孫さんの「マラソン人生」を振り返る。「02年に亡くなった孫さんに変身します」と意欲を語った。
小金井さんは65年に劇団文化座に入座。05年には韓日合作劇「わが祖国」(角田房子作)で朝鮮軍人と日本人の母の間に生まれた世界的な育種学者・禹長春を演じた。
原作は「悲しき亡国の民」と題して孫さんの金メダル獲得に1章を設けた。小金井さんが孫さんのことを知ったのはこれが初めて。「成功したけれど、それなりに不当に扱われた」人生は禹長春とも重なった。小金井さんは「これはいつかやりたい」と思ったという。
やがて東京五輪の開催が決まると、オリンピック憲章に反する「国威発揚」と「経済効果」が話題になっていった。一方で韓日間では慰安婦や徴用工の問題など、歴史認識のズレが目立っていた。小金井さんは決意した。「いまこそ孫基禎伝をやるっきゃない」と、3月から台本を書き始めた。
冒頭、ベルリン五輪の表彰台でうなだれる孫さんを描く。エンディングはロサンゼルス五輪(84年)に歴代優勝選手の一人として招待された孫さんが、「ソン・ギジョン、コリア」と正確な発音で名前を全世界にアナウンスされるシーンにした。
東京・足立区の竹の塚センターホール(地域学習センター4階)で28日19時開演。全席自由。一般2000円(高校生以下1000円)。「スルプン・スンニ」上演実行委員会(090・2674・1174、03・3899・0650)。
(2019.06.26 民団新聞)